129スタジアム見学ツアー2日目
「わあぁぁぁぁぁぁ!!」
「凄い!!」
「広い!!」
「しゅごいねぇ!」
『『キュキュイ!!』』
廊下を出たとたん、そこには広い広いグラウンドが。そしてそのグラウンドから客席もスタジアムもすべてが見えて、天井の付近の飾りとかも全部が見えて、それがとってもカッコいいんだ。
僕もみんなも思わず走り出しそうになります。そんな僕をお父さんが洋服を掴んで止めて、お母さんとグレン達がみんなを捕まえて止めます。
「だから走るなって言ってるだろう!」
「おとうしゃん!! はやく、はやくなか!!」
「待ちなさい! ちゃんとテイリーの話を聞いてからだ!」
前に前に行こうとする僕達。そんな僕達を見てテイリーさんが笑います。
「早く終わらせるからね。少し僕の話を聞いてくれるかな」
テイリーさんのお話が始まります。グラウンドの広さとか、地面に使われてる砂や砂利の話とか。砂や砂利は、みんなが戦いやすいように、滑らず、かといってあんまり滑らないのダメ。ちょうどいい具合に配合されたものを敷き詰めてるんだって。
それから一応最初に出てくる時や、終わった時の挨拶の向きとかも決まってて、廊下を出てそのまままっすぐ見えたところが正面。それでその1番いい感じな席の所に、この国の国王様とか、偉い人達が座るんだって。見たら豪華な席が。あそこが王様が座る席かな。
「それから防御面もしっかりと対策がとってあります」
そう剣や魔法、そのどちらも合わせたもの、客席の方に剣や魔法が飛んで来て怪我したら大変でしょう。誰かにイタズラされちゃうとダメだから、僕達には見えないようになってるんだけど、グラウンドの周りには特別な魔力石が設置されていて、その魔力石が集まると、グラウンドに結界が張られるようになってるんだって。
試しにやってみましょうって、僕達から離れるテイリーさん。手には魔力石が。テイリーさんが魔力石に魔力を流すと、テイリーさんの体を火が包んで。それからすぐに物凄い勢いでボワアァァァッ!! 客席に向かって火が飛んでいきます。火炎放射みたの。
飛んで行った火が、グラウンドから出ようとしたとき、バシィィィって急に火が止まります。そこにはとっても薄い膜みたいなのが現れてて、テイリーさんが攻撃を止めて火が消えると、その膜もすぅって消えて行きました。
「今のが結界です。あの結界があるおかげで、観客は安全に安心して試合を見ることができるんですよ」
僕達が拍手するとニッコリ笑うテイリーさん。他の国にもこういうスタジアムはあって、結界も張られるけど、ここのスタジアムの結界が1番丈夫なんだって自慢げに言うテイリーさん。きっとテイリーさん、僕達が結界に拍手してると思ったんだろうなぁ。
テイリーさん違うよ。僕達は結界のこと拍手したんじゃなくて、テイリーさんのこと拍手したんだよ。だって結界はディアンやオニキスで慣れてるんだもん。それよりもテイリーさんの凄い威力の火魔法に拍手したんだよ。
テイリーさん、あんなに凄い魔法が使えるんだね。あれだけ凄い攻撃ができるなら、テイリーさんも試合に出られるんじゃないかな? だって前に見たお母さんの魔法と同じくらいの威力だったよ。お母さんはとっても強いんだもん。そんなお母さんと一緒くらい強い魔法が使えるなら、出られると思うんだけどなぁ。
「そろそろ中へ進んでみましょう」
いったんお話が終わって、いよいよグラウンドの真ん中に。お父さんに洋服を掴まれたまま、前のめりになりながら、テイリーさんの後ろをついて行きます。
あっ、何か砂と砂利が良い感じ。こう踏ん張れるっていうか。うん、テイリーさんの説明通り、これが完璧地面なんだね。
「さぁ、ここがこのスタジアムの中心ですよ」
「ふわわ、まんなか!」
真ん中に立って改めてスタジアムの大きさにビックリ。確かに中に入った時も、初めてスタジアムを見た時も、その大きさにビックリしたけど、真ん中から見た大きな大きなスタジアムにまたまたビックリです。
そんな感動してる僕達の横で、テイリーさんとお父さん達が何かしてるなんて、全然気が付きませんでした。
フウがあっち見てとか、ライが今度はそっちとか、あっちこっち見てたから余計にね。
「さぁ、フレッド、ハルトちゃん、また後でグラウンドの見学はさせてあげるから、今はあっちの客席へ移動しましょう」
そう言って、急にお母さんが僕のこと抱っこして歩き始めました。お兄ちゃんやフウ達が慌てて僕達の後を追ってきます。何でお母さん。何で向こうに行くの? せっかくやっとグラウンドに来れたのに。早くテイリーさんに続きのお話聞いて、僕自由行動したいのに。
僕はお母さんに抱っこされながら、さっきまで居た場所を見ます。あれ? どうしてお父さん達はこっちにこないのかな? 何してるの?
テイリーさんがお父さん達に何か言ってから、僕達の方に走ってきます。それからグレンが剣をお父さんとグレンに渡して、グレンもこっちに走ってきました。あの剣、お父さん達の剣じゃないよね。てか、何時も持ってる剣はお父さん達持ったままだけど。何してるの?
「こちらから中へ」
僕達に追いついたテイリーさんに言われて、お母さんがグラウンドから出て、1番前の席に僕を座らせました。