121スタジアム見学ツアー3
「顔中にマレーが付いてるわよ」
お母さんが僕のお顔拭いてくれます。このカレーの名前はマレーっていうみたい。名前似てるね。
それからもどんどんマレーを食べる僕。すぐに全部なくなっちゃいました。それでお父さんのお皿を見ます。
「おとうしゃん、もっちょ、たべちゃい」
「まだ食べられるのか? テイリー、確かこの後おやつの時間があるんだよな?」
「ええ、この後見学した後に」
「ハルト、食べるのは良いが、おやつが食べられなくなっても知らないぞ」
お父さんがそう言いながら、僕のお皿に自分のマレーを少しだけ盛ってくれます。僕はそれもペロッて食べちゃいました。
もう少し…そう考えたけど、さっきお父さん達おやつの時間があるって。残念だけど今日はお終いにしなくちゃ。おやつ食べられなくなっちゃう。
大会の日はお父さんにマレーを買ってもらおう!
みんなもご飯を食べ終わって、さぁ、次の見学場所に移動する前に、プレゼントの時間です。何とプレゼントはマレーセットでした。具とか調味料とか全部入ってるセット。僕は雄叫びあげちゃいます。
「やっちゃあぁぁぁ!!」
オニキスは僕のマレーセットを持ってくれて、グレンやロイがみんなのを持ってくれました。人数分だからけっこうな量。重さもかなりあると思うんだけど、グレンもロイも軽~く持ってます。
「さぁ、次の場所に移動しましょう。今日はそこが見学の最後となります。その後はおやつと自由行動となります」
テイリーさんの後ろについて歩き始めます。スタジアムに設置されてる、ステンドグラス風の窓があって、1階から5階まで何枚かあるんだけど、全部絵が違うんだって。
午前中に見た絵はスタジアムの歴史みたいな感じだったけど、このステンドグラスには、今までに歴史的に凄い戦いをした人達の戦い風景が、細かく再現されてるんだって。
木達が見たステンドグラスには、光りの魔法かな? それを使って戦ってる人の絵、剣を高々と上げて勝ちのポーズをしてる人の絵、後はヒューイみたいな魔獣と並んで立ってる人達の絵。いろいろな絵を見ました。
そしてそのステンドグラスにも、歴史の絵を見たときに見た、丸い模様が所々に。ちょつとずつみんな模様が違うの。テイリーさんが僕が模様見てるのに気づいて、これも覚えて置いてって。僕そんなにたくさん覚えられないよ。
ステンドグラスを見終わったら、今日最後の見学場所、展望台へ。5階のさっきとは違う場所にお外に出られる場所があって、そこから見る景色が最高なんだって。
僕はさっきみたいにオニキスに運んでもらいます。後から慌ててくるお父さん達。大丈夫だよ。朝みたいに走らないから。
ドアの前についてテイリーさんがカギを開けてくれます。大きなカギで、とっても重そうなの。それが5個も付いてるんだよ。
「ここはツアーに参加した人と、大会で優勝した人しか外にはでれないのですよ。キアル様方は何度か出られたことがおありですよね」
「ああ、何回かな」
おお~、さすがお父さん。それからグレンも頷いてます。そりゃあグレンだってあれだけ強いんだから、外に出た事くらいあるよね。
ギギギギギィィィ!! 大きな音を立てながら、見ただけでも重いって分かる大きなドアを、テイリーさんがさっさと開けます。お兄ちゃんはすぐにお外に出て行ったけど、僕は何となくドアを押してみました。うん、1ミリも動きません。全体重を乗せても僕のお顔がつぶれただけでした。それ見てみんな笑うんだもん。だってあんなに軽く開けてたから、実は軽いのかなって思ったの。
笑われてちょっとブスッとしながらお兄ちゃんの所まで行きます。お兄ちゃんが手すりから外を見て、わあぁぁぁって声を出しました。手すりは結構高くて、お兄ちゃんでも見えなくてグレンに抱っこしてもらってお外見てます。僕はお父さんに早くって言って、抱っこしてもらいました。
「ふわわわわわ!!」
僕はオニキスカバンからちゃんとブルーベルもお外が見えるように、カバンを持ち上げます。カバンの中から、小さな声でブルーベルが僕に。
『ハルト、綺麗だね、凄いねぇ~』
街の壁の外まで見えるんだよ。ううん、それどころじゃなくて、向こうの森とか山とか、何でも見えちゃいます。
「優勝すると、夜ここで食事ができるんだ。ここからの夜景はとても綺麗なんだぞ。静かにしていられるなら、家族も一緒に連れてこられるんだが。フレッドもまだ小さかったからな。ハルト、静かにすると約束できるなら、お父さんが優勝したら、ここに連れてきてやるぞ」
「ほんちょ!? ぼく、ちじゅかにちゅる!!」
「本当か? ハルトの場合は周りも危ないからな」
大丈夫、大丈夫だよ! 絶対静かにするよ! お父さんの優勝は絶対だもん。僕綺麗な街も見たいし、夜景見ながらマレー食べたい!!
僕がマレーマレー騒いでたら、お父さんがどっちが目的なんだって。もちろん両方だよ。ちょっとマレーの方が楽しみだけど、でも景色と一緒だったら、もっと美味しく感じるはず。
僕はその後、景色を眺めてる間、勝手に足がブラブラ。それからニコニコ。お父さんは苦笑いしてました。
少しの間景色を堪能して、これからおやつの時間です。さっきマレーを食べた所に戻ります。おやつは何かなぁ。