120スタジアム見学ツアー2
「ここが1番高い客席になります。確かに試合をしている人達の表情をよく見ることはできませんが、試合全体の流れを見たい方に、こちらの席は人気があります。ハルト君。君たちが座る席は3階の、ちょうど反対側だよ」
テイリーさんの指さす方を見ます。そこにはみんなが座るお椅子じゃなくて、箱みたいな塊が見えました。
僕達みたいな家の人達は、テイリーさんが今言った、人の表情が見えて、試合の流れが見える、ちょうどいい場所に、家族で楽しめるように、ボックス席になってるみたい。家族でゆっくり試合を観戦できるから、騒いでも邪魔になりません。
説明が終わって、またテイリーさんの後ろをついて行きます。僕のオニキス着ぐるみの帽子をお父さんが掴みながら。
思いっきり転んだ僕。手とおでこを擦りむいて、テイリーさんが薬を持ってきてくれて、怪我はすぐに治ったんだけど…。
お父さんは僕がまた走って転ぶといけないからって、僕の帽子掴んで走れないようにしちゃいました。お父さんはずっとブツブツ。
それからブルーベルにも、テイリーさんに気づかれないように、とっても怒られちゃったよ。そうだよね。僕がブルーベルのオニキスカバン持ってるんだもんね。ごめんねブルーベル。
グレンがそっとカバンを見て壊れてないか確認してくれて、どこも壊れてないって聞いてホッと一息。後でブルーベルに僕のお菓子あげて、もう1回ごめんなさいしよう。
テイリーさんが次に向かったのは、2階にある、このスタジアムの歴史が描かれてる絵が飾ってある所です。
「このスタジアムができたのはもう何百年も昔で、代々修復しながら、1度も大きな損傷無く、ずっと使われてきました。ハルト君分かるかな? お父さんやお爺ちゃん、みんなが生まれるずっと前から、このスタジアムはあるんだよ」
飾られてる絵には、古くなって、色が薄くなって見えなくなっちゃってるところもあるけど、そういう絵は、飾られてる絵の中で1番古いからしょうがないんだって。絵は修復するのが難しいから、なるべく手を付けずに、ケースの中にしまって飾られてます。
絵にはどんな人達が、どんな風に、どんな道具や魔法を使って、スタジアムを作ったか描いてありました。それでその所々に丸い模様が。僕がそれをじっと見てたら、テイリーさんが丸い模様を良く覚えておいてくださいねって。何だろう?
スタジアムの歴史の説明が終わって、僕達はもう1回観客席の方に。これからお昼の鐘がなるまで、自由に見て良いって。午後からはまた別の所を回るみたいです。
僕はそこでお父さんに、絶対に走るなよって、何回も注意されて、やっと放してもらえました。自由だあぁぁぁ!!
走らないように気を付けて、僕は観客席を見たり、1番前の席まで行って、グラウンドを見てみたり、あっちに行ったりそっちに行ったり大忙し。そんな僕の後ろをフウ達もぞろぞろついてきます。
お兄ちゃんはテイリーさんにいっぱい質問してました。質問し過ぎてお母さんに注意されてたよ。お兄ちゃん質問すること、一昨日位からたくさんメモ帳に書いてたからね。僕それ見て、そっとお兄ちゃんから離れたもん。
もっといろんな所見ようと思ったら、もうお昼の鐘が。もう自由行動終わり? 僕がしょんぼりテイリーさんの所に戻ったら、午後も自由時間あるから大丈夫って。
みんなご飯を食べる場所に向います。今度は4階ね。4階にはご飯を売る売店が何個かあって、お客さんはご飯を持ち込んでも良いし、売店で買っても良いし。
今日は1番人気のメニューをみんなで食べます。売店の周りには食べる机と椅子が置いてあって、でも試合当日は混んでて座れない方がほとんどだから、客席で食べる人が多いんだって。今日はそんなことないから、ここで食べます。
椅子に座って待つ僕達。テイリーさんやグレン達がご飯を取りに行ってくれます。少しして匂いがしてきたんだけど、僕ドキドキです。まさか、まさかアレなの? 気づかないうちに僕は足をバタバタ。だってアレの匂いがしてきたんだよ。
「お待たせいたしました」
お父さん、お母さん、みんなの所にお皿が置かれていきます。そして僕達の前にも。それから飲み物とスプーンとフォークが置かれて、みんな一緒にいただきます。
僕はすぐにスプーンを持って、それをすくってひと口。そして叫びました。
「うみゃあぁぁぁぁぁぁ!!」
やっぱりそうだよ! この色、匂い、味。今僕達の前に置かれた料理、それはカレーでした。
「おいちっ!!」
パクパク、どんどん口に運んじゃいます。まさかカレーが食べられるなんて!!
「何だ、ハルトはこの料理が気に入ったのか。お前は変わった料理が好きだよな」
「良いじゃない。好き嫌いがない事は良い事よ。」
パクパク食べる僕の周りで、一緒に食べるフウ達。ブルーベルにはこっそりグレンがあげてくれてます。魔獣とか妖精って、何でも食べられるんだね。玉ねぎがダメとかないのかな? 確かイヌとかって、玉ねぎとかダメだったよね。でも今まで出してもらった料理はぜんぶ食べてるし…今度聞いてみよう。
嬉しくてどんどん食べてたらもう半分に。
「あら、ふふふっ」
「ハハハっ、相変わらずだな」
お母さんとお父さんが笑い始めました。それからディアン達も。