116初めてのお出かけ、ヒューイの買い物
「良いですか。これだけは気を付けてください」
みんなが静かになってグレンのお話を聞きます。
「ブルーベルはとても綺麗な声で鳴きます。それは普通のクフスと比べても、まったくのべつもの」
ブルーベルは普通のクフスと色が違うだけじゃなかったんだ。僕達知らなかったけど、ブルーベルの歌うお声は、他のクフスと違って、とっても綺麗な歌声何だって。歌うだけじゃなくてちょっと鳴くだけでも違いが分かるほど。
「普通に話すぶんには構いませんが、歌ったり鳴くのはダメです。ドルサッチはブルーベルの鳴き声を聞いていますからね。もし近くで鳴き声を聞かれることがあればバレる可能性が」
だからカバンに入ってるときは、お話だけにしてくださいって。僕達みんなで頷きます。バレるのはダメ。せっかく僕達の家族になったブルーベル。またドルサッチの所に戻されるなんて、そんなこと絶対だめだもん。ドルサッチ達をお父さん達が捕まえてくれるまで、ちゃんとブルーベル守らなくちゃ。
ブルーベルも分かったって。
「僕最後の方は、あいつの前で歌わないようにしてたんだ。あんな嫌な奴の前で歌いたくなくて。だから静かにしてるの慣れてるよ」
僕達はもう1回頷きました。
グレンのお話と注意が終わったら、お庭に出て練習だって。それから周りから本当に見えてないか確認するの。ブルーベルにカバンに入ってもらってお庭に移動です。
カバンを首に掛けて階段までいって、オニキスに乗らないで自分で階段を下りてみます。揺れたりカバンの中でブルーベルが転がらないか確認。僕がもって歩くからね。お父さん達がもてばそんなに揺れないんだろうけど、なにせお子様の僕。ちょっとしたことでカバンが大きく動いちゃいます。
下までおりて、ブルーベルに聞いてみます。
「ブルーベルだいじょぶ?」
「うん。カゴの中のクッションに座ってるから大丈夫。ふかふかだからゆれても平気だよ」
大丈夫みたい。後でオニキスに乗ったバージョンも確認してみよう。
お庭に移動したら、僕はお父さん達の前をいろいろな方向から歩きます。前から歩いてみたり、横を通りすぎてみたり。歩くだけじゃなくて、さっきグレンに注意されたお話も確認してみます。
『今は普通のおしゃべり。これなら大丈夫でしょう』
僕はお父さん達を見ます。
「確かに今のは話しているだけに聞こえるな」
「こっちは、う~ん…一瞬だけ」
ピュイってブルーベルが鳴きます。今度やお父さんがグレンの言った通り、鳴くのはダメって。お話できるからいいよね? お家に戻ったら、ブルーベルの好きなだけ鳴いてもらおう。
ひとしきり確認、練習が終わって僕はお父さん達の方を見ます。
「これなら大丈夫だろう。ハルト、良いカバンを作ってもらったな。良し、これから少しだけ、そうだな、いきなりたくさんは止めておこう。スタジアムまで遊びに行ってみるか」
ほんとう!? まさかこんなすぐに遊びに行けると思わなくて、僕達頭の上で拍手です。急いでお泊りしてるお部屋に戻って、お出かけの用意。それで玄関の所に集合です。
僕達はすぐに用意が終わって玄関ホールで待ってたんだけど、お父さん達の用意がなかなか終わらないで、僕もみんなもあっちに行ったりそっちに行ったり。ブルーベルも外に出るまではお外に出てるから、カゴの中に入ったり出たり。
あっ、お父さん達やっと来た! もちろんロガーも一緒にお出かけです。
僕スタジアムに行っても少しの間ドキドキでした。だってせっかくのブルーベルの初めてのお出かけ、お外から見えなくても、ドルサッチなんかと会いたくないでしょう。僕がキョロキョロしてるのに気づいて、オニキスとヒューイが見張っててやるから、安心して遊べって言ってくれました。
『ハルト、アレなぁに?』
「アレは…いろいろなもの、うっちぇるおみしぇ」
『じゃあアレは?』
「アレはおもちゃのおみしぇ」
『あっちは?』
「あのおみしぇのおかち、おいちの」
ブルーベルの質問が止まりません。当たり前だよね。だってほとんどが初めての物ばかり。あの美味しいクッキーはイーサンさんが並んでくれたから、僕達はおもちゃ屋さんに行きました。お母さんがブルーベルのおもちゃ買ってくれるって。
ブルーベルにカバンの中から見てもらって、欲しい物をどんどん買い物のカゴに入れて。
ブルーベルが選んだおもちゃは、たくさん穴の開いてるボール。これはブルーベルが口ばしとか足で掴んで遊べるでしょう。それからキラキラ光ってる花弁がいっぱい入ってる袋。お店の人がやらせてくれたんだけど、フワッて上にあげると、綺麗な花吹雪が。しかも良く分かんないけど、普通花吹雪のあとお片付け大変だけど、この花弁はササさって片付けられるんだ。ブルーベル、この花弁セットとっても気に入ってました。
他にもいろいろ選んだんだけど、最後に選んだのはブルーベル専用のおままごとの道具。これはすぐに決まりました。
『僕コレ!!』
たまたまだけど、ブルーベルそっくりな絵の描いてあるお椀が売られてたの。ブールーベルも僕達も、みんな納得のお椀です。
そしてそのお椀を買うとき、まさかの人物が。お母さんがカゴを店員さんの所に持って行ったら、ブルーベルが選んでない、濃い青色と狼の絵の描いてあるお皿が。
「あら、ハルトちゃん、新しいお皿?」
「ぼくちらない」
「ハルトちゃんじゃないの? オニキス?」
「俺ではない。おい、ちゃんと言わないか」
「ああ、それはオレのだ。ハルト達はそういう物で遊ぶのだろう。ならオレにも必要だろう」
まさかのヒューイでした。あらそうなのってお母さんがヒューイのお皿も買ってくれます。ありがとうお母さん。
ヒューイ買ってもらうのは良いけど、いつか森に帰るんでしょう? ちゃんと持って帰らないとダメだよ。せっかく買ってもらったんだからね。
みんなニコニコ。初めてのお出かけは大成功です。お屋敷に戻ってブルーベル、ずっと歌ってました。
それから何回か少しずつ長い間街で遊ぶ練習して、そして数日後、ついに明日はスタジアム見学の日になりました。