109異変そしてクフス発見
ヒューイから離された僕達は、まぁ、ドルサッチの話は大事だから、とりあえずソファーに座りました。お話が終わったらもう1回お仕置きしよう。これも大切な事だもんね。
「それでドルサッチ達の様子は」
お父さんがヒューイに聞きます。ちなみにヒューイが帰って来てすぐ、今度はディアンがドルサッチ達を監視しに行きました。ディアンは僕達にちゃんとお話して行ったよ。それから、絶対に無茶しないってそれも約束。
ディアンのことだから、この前の目をつけられた時みたいに、目立つ事を自分からしなければ、ドルサッチ達に見つかる事はないはずだけど。
「オレが監視してた時は、穢れが溢れてくることはなかった。酒場でぐちぐちと、あ奴らを怒った冒険者の文句を延々と話していたぞ」
怒った冒険者。ゴードンさんのことだね。
ドルサッチ達はゴードンさんの文句を言い、店員にはいちゃもんをつけ、店にかなり迷惑をかけてたみたい。それで周りのお客さんは全員、お店から出て行っちゃって、残ったドルサッチ達はさらに自分勝手に居座っちゃいました。
そんなこんなで、ずっと同じ時間が流れて、ヒューイは戻ってきて、今度はディアンの番なの。
「だが、1つ気になる事があった。今までの話から、穢れが溢れてくるようなら、すぐにでもオレが奴を消してやろうかと思ったんだが…」
消すってやっぱりアレだよね。この世界にきて、いろいろそういうのに慣れたつもりだったんだけど…。そりゃあ魔獣とかは何ともなくなったよ。ディアン達がいろいろするから。まぁ、キマイラとかは別として。
かなりワイルドに成長できてると思ってるんだけど、流石にちょっと人は…うん…。
ヒューイによるとドルサッチじゃなくて、ドルサッチにくっついてるグイダエスが気になったって。
ドルサッチ達がお酒を飲んでる時、グイダエスはドルサッチの話に、「はいそうですね」ばっかりで答えたり、無茶な要求にも必ず応じたり。
でもね、たまにドルサッチを見つめた後、ドルサッチに気づかれないようにため息をついたんだって。他の人にも気づかれないように。
「何だ? どういう事だ? 俺達が知っているグイダエスは、やつに媚を売るただの良いように使われる部下だったはずだ。まぁ、オニキス達の話で、この頃考えは変わってきているが」
グエダエス、上司が馬鹿すぎて呆れてたりして。でも今まで散々ドルサッチと居たんだもんね。それはないか。
「とりあえず、ヒューイがいた時には何もなかったって事だな」
「あとはディアンが帰ってくるのを待ってまた話し合いだ」
ディアンいつ帰って来るかな?
夜のご飯食べ終わってもディアン帰って来ませんでした。いつ帰って来るかヒューイに言っておいてくれれば良かったのに。
*********
ドルサッチを監視してだいぶ経った。昨日と今日、ドルサッチはずっと機嫌が悪かった。昨日はあの冒険者に怒られた事でイライラしていたが、今日は何に対してイラついているのか、理由もなくイライラしている感じで、出かけて行く場所々で、必ず揉め事を起こしていた。
そういえばヒューイが監視していた時から、私が監視している最中、1度も宿に戻っていないな? 他の店にいちゃもんを付けていない時は、必ず酒場に入り浸っている。時々部下がいなくなり、戻って来ると荷物をドルサッチに渡しているところをみると、部下が必要な物を宿に取りに行っているんだろう。
そういえば奴が泊まっている宿。外からは監視したことがあるが、中をちゃんと調べたことはなかったな。1度オニキスかヒューイを連れてきて奴らを見張らせ、その間に部屋の中を調べてみても良いかもしれない。
もう夜中か。ハルトはもう寝ている時間だな。そろそろ帰るか。明日は朝からハルトに怒られそうだ。帰って来るのが遅い、いつ帰って来るかヒューイに何で言わないんだと、そしてチビ達の攻撃を受けそうだな。
よし奴らが酔い潰れてたら、何かハルト達にお土産でも探して戻ろう。ちょっと街から出れば、何か見つかるはずだ。
そう考えながら、奴らが酔い潰れるのを待った。
しかし今日に限ってドルサッチとグエダエスが酔い潰れない。他の部下はとうに机に突っ伏しているというのに。
「まったく馬鹿な奴らばかりで頭にくる」
「そうですねドルサッチ様」
「もっと皆私に敬意を払うべきだろう!」
「皆ドルサッチ様の凄さが分かっていないのです」
「くそっ! 店主! 酒を持ってこい!」
まだ酒を飲むのか。これで酔い潰れてくれたら良いが。
「で、あっちの方はどうなっている?」
「いろいろやってはいるのですかが。やはり難しいですね。ですが、アレではありませんが、新しい珍しい物が手に入るかもしれません」
「ふん、奴らも私のコレクションの仲間入りできるんだ。喜んで自ら私の所へ来れば良いものを」
「ドルサッチ様、クフスはいかがいたしますか?」
「アレもそろそろ剥製にするか。毎夜毎夜ピィピィ鳴いて煩いからな」
何の話だ? クフス? 剥製?
本当はこのまま監視を続けたかったが嫌な予感がする。我はすぐにハルトの所へ戻ることにした。
戻るとやはりハルト達はすでに寝ていて、オニキスとヒューイだけが我が帰ってきた事に気づき起きてきた。
「オニキス、ヒューイ、どちらでもかまわん、ついて来い」
「なんだ? どうしたんだ?」
「俺が行く。ヒューイは帰って来たばかりだからな」
オニキスがついて来ると言い、すぐに我らはドルサッチの所へ戻った。戻りながら今聞いた話を伝え、我が奴の宿を調べている間、オニキスにドルサッチ達の監視を頼んだ。
酒場に戻るとまだドルサッチ達が酒を飲んでいる。オニキスが屋根裏に隠れたのを確認してすぐに宿に向かう。
気配を消せば、すぐに部屋に侵入できた。奴の部下らしき男が2人ドアの前にいたが、入る時に気絶させておいた。
さて部屋の中に何があるか。奴ら金だけはあるようで、なかなかの部屋に泊まっている。中は綺麗とはいえなかったが。
最初の部屋と右の部屋には、ただ書類と武器などが散らばっているだけで、これといった物は何もなかったな。
「あとは左の部屋だけか」
ドアを開ける。そこにはたくさんの魔獣の剥製が置かれていた。しかもどれもこれも、皆変異種の魔獣ばかりだ。皆絶望の表情のままは剥製にさせられている。
「人間とはどの時代も、救いようのない者達ばかりだ。ハルトやハルトの家族は違うが、ドルサッチ達のような者が多すぎる」
ハルトの優しい心が、このような人間達の悪意に晒され、もしハルトがそういう人間になってしまったら? そうなる前に必要な人間以外滅ぼしてしまうか。
我がそんな事を考えている時だった。ピィピィと寂しそうに鳴く声が聞こえた。声の方を見ると何かに布が被されていた。
これは隠蔽魔法か。だからすぐに気づくことができなかったか?
布をバッと取ると、中からカゴに入れられた綺麗な青いクフスが。クフスの変異種だ。
「どうした? 何故ここに」
『捕まっちゃって、連れてこられたの。もうすぐ剥製にされちゃうんだ。おじさん、僕とお話ができるんだね』
「おじさん…お兄さんだ。我は人間ではない」
クフスに私の本当の姿を見せてやると、クフスはとても驚いていたが、ドラゴンに会えて嬉しいととても喜んでいた。まるでハルトだな。
「我がそのカゴを壊してやろう。魔力でカゴから逃げられないようにされているのだろう? そんな物、我にはまったく問題ない。それから…」
我はハルトの事を説明した。森に帰るにしろ、体力が回復するまでハルトのそばにいる方が良いだろう。ハルトならクフスを癒やしてくれるはずだ。
クフスはそんな人間がいるのかと最初疑っていたが、我が契約していると伝えるとまた驚き、ならハルトの所へ行くと了承した。
バキバキバキ、ガシャンッ!!
すぐにカゴを破壊する。我の洋服の中にクフスを隠しオニキスの所へ戻ると、ドルサッチ達はついに酔い潰れいびきをかいて寝ていた。
オニキスにクフスを紹介してハルトの所へ戻る。明日起きたハルトは我を怒りながらも、クフスのことをたくさんなでなでするのだろうな。