108イライラした時の監視
すぐに話が終わったオニキス達が僕の所に来て、ヒューイがこれからちょっと出かけてくるって言いました。
「少し遅くなるかもしれんが、オレのクッキーは残しておいてくれ」
「どこいくの? ぼくもおてちゅだい?」
「いや、オレ1人で大丈夫だ。だがありがとうな」
ヒューイがサッと飛んで屋根に上がって、走って行っちゃいました。お父さんがオニキスにどうしたんだって。オニキスがもう少し人のいない所で話すって言ったから、僕達は急いで食堂に向かいました。
お父さんが選んだ食堂には、この世界の一般の食堂には珍しく、個室がある食堂で、ちょうど空いてた奥の個室をレイモンドおじさんが頼んで、その個室に入りました。
レイモンドおじさんが連れが来てから注文するって伝えて、周りに人が居ないのを確認してから話始めます。でも僕だけ先にって、お父さんがジュースを頼んでくれました。
「それで何かあったのか? ドルサッチ達に変化が?」
お父さんの質問に答えるオニキス。
「ちょうど良いと考えてな。いろいろな状況で確認しなければ」
今までオニキスもお父さん達も、ドルサッチを監視してて、今もそれは変わらないけど、でも今日は今までと状況が違うんだって。
今までのドルサッチ達は、お酒を昼間っから飲んで、気分の良いまま調子に乗って、他の人達に迷惑をかけて喜んでました。その間、穢れが溢れてくる様子はなくて。
でも今は? ドルサッチ達はゴードンさんに注意され、列の最後尾に並ばせられたあげく、ゴードンさんの監視がついたまんま。ドルサッチ達はかなりイライラしてるんじゃないかって。
僕達が初めて街に来た時、そう妖精達が穢れに襲われた時、あの時はドルサッチはレイモンドおじさんに注意されて、文句を言ってイライラしながら、街に入る人達の列の最後尾に並ばせられたでしょう?
だからもしかしたら、イライラしてたり機嫌が悪い時に、穢れが溢れるんじゃないか、それか操っているんじゃないか。
ヒューイとそういう話になって、ヒューイはその確認をしに、ドルサッチ達を監視しに行ったんだって。
イライラ状態を1回監視したからって、確実に証拠が掴める訳じゃないけど、もしかしたらっていう事があるから。
オニキスの話を聞いてお父さん達が納得してます。話を聞いたレイモンドおじさんがちょっと外に出てくるって、席を立ちました。
僕はオニキスに文句です。
「あぶないこと、ダメ」
「大丈夫だ心配しなくて。いつも通りの事をするだけだからな」
そうだけど、そうじゃないんだよ。僕達に何も言わずに勝手に決めるんだから。オニキスは今僕がここで怒るけど、ヒューイも後で帰ってきたら怒らなくちゃ。
「ないしょのおはなちだめ! ちゃんとおとうしゃんにおはなち!」
僕はこの前みたいに、オニキスのほっぺた引っ張ります。フウ達もみんなで攻撃。
「しゅ、しゅまない、はりゅと」
みんなに攻撃されてかなり痛かったし煩かったみたい。前足でほっぺをすりすりしたり、耳押さえたり。
そんな事してたらレイモンドおじさんが帰ってきました。森から来たヒューイがこれだけ手を貸してくれてるのに、街を守るおじさんが何もしないなんてって、おじさんの部下にも監視してこいって言ってきたみたいです。
おじさんが僕達を見てニッて笑います。それで凄腕の部下にドルサッチ達の所に行ってもらったって。凄腕? どんな人かな?
「ハルト、グレンみたいな人間だぞ」
考えてた僕にお父さんが教えてくれます。ああ、グレンみたいな人。じゃあ凄腕だね。僕が今まであった人の中で、お父さんやお母さん達は別として、1番凄い人はグレンだもん。それから次がビアンカね。
グレンみたいな人がレイモンドおじさんの家にも居るんだ。会ってみたいなぁ。ちなみにグレンはヒューイがさっき行っちゃった時、すぐにお父さんに何かお話して、グレンもどこかに行っちゃいました。あの時オニキス達の話は聞いてなかったけど、何かに気がついてヒューイを追いかけて行ったのか、ほかに何かしに行ってるのか。
「グレンも?」
「ああ、あいつはヒューイを追いかけて行ったぞ」
やっぱり。ヒューイを追いかけるとか、どれだけ凄いの? 相手はヒューイなんだよ。
少し経って、やっとペインおじさんがクッキー買ってきてくれました。ちゃんとありがとうして、今日のおやつに食べます。ヒューイの分はちゃんと取っておくよ。怒った後にあげるけど。
あっ、ロガーは? ここ個室だから一緒にご飯食べられない。僕が慌ててたら、レイモンドおじさんが壁を触ります。そしたら壁の真ん中が光って、ガコンガコンって壁がずれて壁に四角の穴が開きました。窓の出来上がりです。凄い! こんな事できるんだ。そしてそこからロガーが顔を覗かせます。
「ロガー!!」
『グガガガガ!』
「遅れてごめんと言っているぞ」
そんな事気にしなくて良いのに。だって僕達のクッキー買って来てくれたんだから。僕は窓から体出してロガーの頭をなでなで。
う~ん、後でロガーに何かあげよう。何がいいかフウ達と話し合いしなくちゃ。
とりあえずご飯を食べて、それからお父さん達はお仕事だって。ドルサッチの事報告が入るかもしれないし。
今日の僕のお昼ご飯は…ラーメン! お母さんがメニューを見ながら、どういう料理か教えてくれたんだけど良く分かんなくて、レイモンドおじさんが美味しいって勧めてくれた、メーンっていう料理を頼んでもらいました。
そして運ばれてきたのは、チャーシューメン。うん間違いなくチャーシューメンです。メーンってラーメンのメンを言い方変えたって感じだね。
それにしてもこの世界の料理って、時々地球と同じ料理が出てくるよね。名前は違うけど。でも僕的にはちょっと嬉しい。食べ慣れた味が味わえるのって何か安心します。
おにぎりも鍋もね。レイモンドおじさんの激辛鍋は別。あれは食べ物じゃない。
出てきたチャーシューメンにテンションが上がる僕。ハッと気づくとお父さん達がニコニコ顔で僕のこと見てました。しゅんと大人しくする僕、はしゃぎ過ぎちゃった…。
さぁ、チャーシューメンを食べよう。フォークですくってスルスルスル。フォークですくってスルスルスル。…すくえない。全部フォークから逃げて行っちゃいます。そんな僕を見てまた笑うお父さん達。僕の顔はブスッとした顔に。
「あなた、笑っていないでお椀にとってあげて。もう小さい子が食べるんだからこうなるに決まってるでしょう」
「すまんすまん。つい可愛くてな」
お父さんが小さいお椀に麺とスープを取り分けてくれて、僕はお椀にそっとフォークを入れます。そっとそっと、よし今だ! 麺が逃げる前に急いで口に入れます。
!!!
やっぱりラーメンだ!! 美味しい!! どんどん口に入れてお肉も食べて、すぐにおかわりします。
「そんなに気に入ったのか?」
「おとうしゃん! はやく!」
早く食べないと麺が伸びて美味しくなくなっちゃう! 僕はお父さんの腕をバシバシ叩きます。ちなみにフウ達の分はお母さんが取り分けてくれてるよ。
「まてまて、揺らすな」
パクパク。どんどん食べちゃいます。うう、美味しい!
子供サイズのメーン。すぐに食べ終わっちゃいました。あーあなくなっちゃった。でもこれ以上は食べられないし。子供の体ってこういう時も不便だよ。小さくて得な時もあるけど、ご飯の時は不利!
食堂から出て、ロガーに乗せてもらって屋敷に戻ります。戻ってから僕達はそのままロガーの小屋の所でおままごと。お父さん達はさっき言ってた通り仕事に。お母さんは…何処かに。
そしてヒューイが帰ってきたのは、次の日の昼でした。
僕達が遊びの部屋で遊んでたら窓から帰ってきて、僕達はすぐにヒューイのこと攻撃します。お仕置きの攻撃ね。ヒューイはいきなり僕達に攻撃されてビックリして、部屋の中を逃げたけど僕のおもちゃに躓いて、その瞬間を見逃さず、僕達はヒューイに襲いかかります。
「な、何故怒っているんだ!?」
「なにも話さないで勝手に決めたでしょう。フウ達心配したんだよ!」
「そうだぞ! みんなで話し合いしないといけないんだぞ!」
「あぶないことダメ!」
『キュキュキュイ!』
「みんなしんぱいちたの! ちゃんとみんなにおはなしちて!」
「わ、悪かった、やめてくれ! オニキス止めろ!」
「俺もやられたんだ。お前も同罪だ。が、今は報告が先だな」
オニキスが僕達を引き離します。もう、後でお仕置きも続きだからね。
みんなでお父さん達の所に移動しました。