102激辛の脅威と、そして…
申請した日から数日が経ちました。そしてあの激辛鍋事件以来、フウ達の遊びに、レイモンドおじさん専用激辛料理にどれだけ近づけるか、が加わりました。おじさんが激辛料理を買ってきたり、料理人さんにわざわざ作らせたり、毎日じゃないけど時々食事に出てきます。
僕はおじさんから1番離れた席に座って、被害がないようにしてるけど、フウ達はこの前みたいに、1番近くまで寄れた人が勝ちって遊んでるんだ。
そしてその遊びの過程でもう1つ事件が。ブレイブがあの激辛鍋のスープを味見しちゃったの。
ちょっと舐めた途端に大騒ぎ。食堂の中をはしりまわって、コップやお皿を割っちゃって、それからカーテンにしがみついたり、壁を走ったり。壁を走る…僕思わず拍手しちゃったよ。
お母さんがブレイブに、黄色いジュースを慌てて用意してくれました。木の実のジュースで、辛い物を食べた時にこれを飲むと、すぐに口の中の辛いのが落ち着くんだって。
すぐにお母さんの所に走ってきたブレイブ。ごくごくジュースを飲み干します。でもそれでも床の上を仰向けになって、グルグルのたうちまわって。
「嫌だわ。これじゃあ足りないのね。すぐにもう1杯持ってきて!」
あまりの事にジュース1杯じゃ足りなかったみたい。メイドさんがすぐにもう1杯ジュースを持って来てくれました。
それも一気に飲み干すブレイブ。2杯飲んでやっと落ち着いたのか、ふぃ〜って大きな溜め息をついて、そんなブレイブをアーサーがしっぽであおぎます。
「もう、食べちゃったブレイブちゃんも悪いけれど、お兄様、あまり子供達がいる前で激辛料理はやめてください!」
「そう言うな。俺の大好物なんだ。それに食べなければ、その妖精達は遊びに使って楽しんでいるんだから良いだろう」
僕はブレイブの所に行って注意です。もう近く勝負以外で、あの激辛料理に関わっちゃダメだよ。今度食べたら死んじゃうかもしれないよ。
僕がそう注意してたらレイモンドおじさんが、そんな危ない物じゃないって。はぁ。
それから僕はルールを決めました。おじさんの激辛料理で遊ぶ時は、絶対にお母さん達がいる所で。だって今みたいに何かあったら大変でしょう。
それから絶対に舐めたり、食べたりしない事。これは命に関わるからね。もしそんな事したら、もう僕家族辞めちゃうよ。そんな危険な事する家族は知りません!
あと、遊ぶのは1回だけ。何回も勝負しない事。あの強烈な刺激がこれ以上クセになったら困るもん。
激辛鍋を味見したブレイブの口は赤く腫れちゃって、痛い痛いって。レイモンドおじさんが回復魔法使えるお医者さんを呼んでくれて、ブレイブの赤く腫れた口を治してくれました。
もう、本当に食べちゃったらダメだからね。
それから僕は午前中は剣や、魔獣自慢大会の練習しました。それからたまにお父さん達の訓練見に行ったり、お兄ちゃんと一緒に練習したり。
午後はお外で遊んだり、お店を見に行ったり。ロガーも一緒だよ。最初は沢山人が集まってきたけどこの頃はみんな慣れてきて、今は午後でもゆっくりお店を見て回れます。
今日はロガーはペインおじさんと用事があるみたいで、隣の街まで出かけてるからいません。明日には帰ってくるみたい。だから今日は僕達の家族だけでお店を見に来てます。
「今日は晴れると良いね」
「うん! はやくやりちゃい!」
この前お兄ちゃんが花火買ってくれたでしょう? 実は夜になるとルリトリア、毎日のように雨が降ってるんだ。花火を買う前はずっと天気が良かったのに、買ってからはぜんぜんダメ。早く花火やりたいのに。でも…オニキス待ってるからちょうど良い、っていう感じもするし。だってオニキスも一緒に花火やりたいよ。なんか複雑。
それにしてもオニキスぜんぜん帰ってこないなぁ。本当にまだディアンと待ち合わせしてる森まで来てないの? もしかして別の道から帰ってきてるとか?
そんな事考えてまた不安になっちゃって。それだとダメだから、いつも他の事考えるようにしてるんだよ。
「さて、今日はここでおやつにするか。ハルトおいで椅子に座らせてやるから」
今日のおやつはレストランで食べます。屋台で買って食べるご飯やおやつも美味しいけど、僕達が今日入ったレストランのケーキは、この街で1番美味しいケーキです。
ミルフィーユの上に果物がいっぱい乗っかってて、乗りきらないでお皿の上も果物だらけ。それから糸みたいな、飾りの飴細工がのってるの。この飴がまた、とっても美味しんだよ。
お父さんの方に駆け寄って、椅子に座らせてもらいます。僕の隣はお母さんとお父さん。それからお兄ちゃんとディアンが座って、隣の席にはグレンやロイが座ります。
どうせみんなで食べるからって、お父さんがそのまま運んでくれってお願いしたら、大きなお皿にケーキが切られてない状態で運ばれてきて、料理人さんが目の前でケーキを切ってくれました。
「おにいちゃ、おいちいね!」
「うん! 僕はこのジュースも好きだよ」
ジュースは木の実の、フローズンみたいに冷たくて美味しいジュースです。その場で魔法で木の実を凍らせて、それを削る道具があって、他の木の実のジュースに混ぜて出来上がりです。砂糖も何も加えてない、それでもとっても甘くて美味しいジュースなんだよ。
美味しいケーキに美味しいジュースで、お腹は満足! これからお父さんの武器を見に行きます。この前買った剣がもう壊れちゃったの。それからナイフも。僕がお父さん達の訓練見てた時はそこまで激しいって程動いてなかったんだけど、僕がお昼寝してる時とか、夜寝ちゃってから、レイモンドおじさんやペインおじさんと、かなり激しい訓練してるみたい。周りに被害が出るといけないからって、僕達が見てない時に激しい訓練してたんだって。
そしてそれに混ざるグレン。ロイが見学しに行ったって聞いたから、どんなにカッコ良かったか聞きました。そしたら最初ぼそっと僕に聞こえるか聞こえないかくらいの声で、
「あの方々は人間ではない」
って言ったんだよ。しかもなんか顔色が悪いの。僕がロイの洋服引っ張ったら、
「え、あっ、とってもカッコ良かったかですよ。さすがキアル様方です。ハルト様もきっと大会で見ることができますから、楽しみにしていて下さい」
それで終わっちゃいました。ちょっとロイが顔色悪くなるって、どんな訓練したの? しかも周りに怪我人が出るかもしれないって。
お母さん達はいつも通りで良かったとか、まだまだよとか言ってるし。
でも…カッコいいお父さん、僕ちょっと楽しみです。お父さんが出る試合は全力で応援しなくちゃ。それには僕も試合の練習も大切だけど、応援の練習もしなくちゃね。明日は応援の練習しようかな。
武器屋について、僕は危ないからお店の中には入れません。お兄ちゃんとロイとお店の外で待ちます。
どのくらい時間かかるかな? お父さんは結構早くいつも出てくるけど、お母さんがなかなか出てこないんだ。お母さんは大会に出ないのに、お父さん達の訓練に付き合ってるから武器が必要なんだけど、でも、あ~でもないこう~でもないって、時間がかかります。
お兄ちゃんと外に置いてあった盾を見てる時でした。ディアンがバッて顔を上げて、遠くの方を見ました。
「ディアン、どちたの?」
「…ハルト良かったな。オニキスが帰ってきたようだ。我はこれから奴を迎えに行ってくる」
「オニキス!! ディアンほんちょ!?」
「ああ(他に客がいるようだが)、明日の夜には戻ってくるようにする。ハルトもう少しの我慢だぞ」
急いでお父さん達を呼びます。
「オニキスが帰って来たって?」
「ああ。これから迎えに行ってくる。良いか、我がいない間、穢れに気をつけろよ」
そう言うとディアンは僕達に見えないくらい素早くジャンプして、オニキスを迎えに行きました。
オニキスが帰ってくる。僕早くお屋敷に戻って用意しなくちゃ! あのね、みんなで決めたの。オニキスは遠い僕達が昔住んでた森まで、穢れの事について調べに行ってくれたでしょう? だからきっと疲れて帰ってくると思うんだ。
だからお疲れ様のお菓子のプレゼントしようって、ちゃんと箱に入れてリボンつけて。
ディアンは明日の夜には帰ってくるって言ってたから、それまでに用意しなくちゃ!お父さんとお母さんの武器選び早く終わらせてもらって、箱とリボン探しに行こう!
「おとうしゃん、おかあしゃん、ぷれじぇんと! はやく!」
「待て待て、今買ってくるから」
武器を買ったお父さんの手を引っ張って、雑貨屋さんに向かいます。
ふふ、オニキスが帰って来る、嬉しいなぁ。