98申請に行こう!
「ハルト、朝だよ」
「………」
「ハルト、今日はスタジアムに行く日でしょう?」
「………」
「おはようフレッド、ハルトちゃん。あら? やっぱり起きてないのね」
「何回か起こしたよ」
「ハルトちゃん、朝よ。今日は朝からスタジアムに行って、競技の申請するのでしょう?」
誰かが僕のこと揺らしてる。誰? 僕眠たいんだけど。もう少し寝かせてよ。
「オニキスやブレイブちゃんとアーサーちゃんと一緒に出るのでしょう。ちゃんと申請しに行かないと」
オニキス、ブレイブとアーサー? 出る? !!? そうだ!
ガバッ!! 思い切り毛布を剥いで、ベッドの上に立ちます。そうだよ、今日は申請しに行くんだ!
お母さんが洋服着替えて、朝ごはんよって。今日は僕の格好は、お父さんと一緒の騎士さんの格好です。僕がそれが良いって言ったの。だってうさぎやネコやハチの格好だと、他の競技に出る人達になめられちゃうかも。こういうのは格好からだよね。
お母さんは残念そうな顔してるけど、これは譲れないよ。
「あの可愛さに絶対やられちゃうのに。お母さん絶対可愛い方が良いと思うわ」
「フウ、自慢大会は可愛いお洋服が良いと思うよ」
「オレも」
「ぼくも!」
フウ達まで。まぁ、自慢大会はその方が良いのかな。お揃いで可愛いその方が目立つか…。まぁそれは後で考えよう。オニキスが帰ってきてからね。オニキスも一緒に出るんだから、ちゃんとみんなで話し合わないと。
着替えが終わって食堂に。みんなもう食堂に集まってて、僕達が1番最後。ごめんなさい遅くて。みんなに、おはようございますして自分の席に。
いや、一瞬目が覚めたんだけどね。着替えてる途中からまた眠くなってきちゃって。ダラダラしてたら遅くなっちゃったの。
いつもみたいに、食べながらこっくりこっくりはしないけど、食べるのはちょっと遅いです。
レイモンドおじさん一家、ペインおじさん一家、僕の家、全員食堂に集まって食べてるから、広い食堂が狭く感じます。これだけ人が集まればね。広い食堂だから余裕はあるんだよ。でも人が多いせいでそう感じちゃうの。
ご飯食べ終わった人から準備に。僕待ってると遅くなっちゃうから。そして玄関前に集合です。
「ロガー、おはよ!」
僕が玄関に出たら、ロガーも準備万端。みんなで歩いてスタジアムに向かいます。
ここで嬉しい事が。ロガーが僕を手に乗せて歩いてくれたんだ。フウ達も一緒だよ。ありがとうロガー。
シーライトの朝はそんなに人が外に出てないんだけど、ルリトリアの朝はそこそこ人が出てます。でも昼や夜に比べたらね。やっぱり朝早く出てきて正解だね。
ロガーが歩いてるの見て、時々人が寄ってきます。若い人もおじいさんおばあさんも、それから朝早くから遊んでた小さい子達も、ロガーはみんなに大人気。うん。これも朝早く出てきて正解。これ以上人が増えたら大変だもん。
スタジアムの前に着いたら、もう何人か申請に並んでました。僕達もその列に並びます。10人くらいかな。これなら順番すぐだね。
僕達の前に白いキツネさんみたいな魔獣が並んでました。真っ白いキツネさん。大きさはオニキスと同じくらいかな。
チラチラお父さんの後ろから見てたら、キツネさんが振り向いて、それからスタスタ僕の方に歩いてきました。それで、僕の前で止まってコンって鳴いた後、お顔スリスリしてくれます。
「えと、ぼくハルト。よろちくね」
「コン!」
「名前はパールだそうだ」
ディアンが帰ってきてくれたから、通訳はスノーからディアンに交代。
「待ってる間遊んでくれると言っているぞ。ちなみにメスだ」
メスって、確かにそうかもしれないけど、女の子って言いなよ。並んで待つ間、パールが遊んでくれるって。
パールは炎と雷の魔法が使えます。炎と雷の玉をそれぞれ出して、もふもふのしっぽでヒョイひょいお手玉みたいにそれを回します。それが2つから3つ、3つから4つ。だんだんと増えて最後には15個に。大きな玉の輪っかがクルクル。しかも前に進むのも玉を回したまんま。僕達みんなで拍手です。
そのうちすぅって玉が自然に消えて終わり。終わったときにもう1度拍手しました。
パールがね僕達も何かできる? って聞いてきたから、オニキスサーカス、ちびっ子団をやる事にしました。
スノーの上にブレイブとアーサーが。その上にフウとライ。最後に僕が後ろで格好いいポーズ! ………何もやってない? 良いの僕はこれで。いつもは乗り物に乗って、僕も参加できるけど、今日はないからね。ポーズだけでもしなくちゃ。
パールが地面を叩きます。拍手してくれてんるんだって。
パールが拍手してくれてたら、前に並んでたパールの契約してる男の人が、こっち見てクスクス笑いました。
「ふふ、可愛いね。それにパールがそんなに他人に懐くなんて珍しい。こんにちは。俺の名前はアマイ。よろしくね」
男の人の名前はアマイさん。25歳。冒険者さんです。アマイさんはもちろん魔獣の競技に参加です。
アマイさんの話を聞いたら、パールはアマイさん以外の人には、あんまり近づかないんだって。あんまりっていうかほとんど? しかもちょっと近づく事はあっても、さっきみたいに、魔法は絶対見せないんだって。だからラッキーだって言われました。
アマイさんがその話をしてる最中、パールは僕の横まできて隣にお座り。なでなでして欲しいって。だから僕はたくさんなでなでしてあげました。
これにもアマイさんはビックリ。パールに触ってる人を初めて見たって。何度かパールのこと触ろうとした人達がいたんだけど、みんな威嚇されたり、噛み付かれそうになったり、今まで1度も触らせた事がないらしいです。
そんなパールがなでなでさせてくれるなんて。ありがとうパール。
「ココンっ、こん、コココン!」
パールがディアンに何か話してます。それを通訳してくれるディアン。
何でパールが他人に触らせなかったか、毛皮として触ろうとした人や、魔獣マニアで、目つきがやばくて悪戯しそうな人だったり。あとはちょっとお金持ちの女の人が、綺麗な真っ白のパールを、自分の隣に置いて無理やり絵を描かせようとしたり。ろくな奴が寄ってこないって。
あー、まぁ、それはね。僕もそんな人達がオニキス達に寄ってきたら阻止するよ。
その後もパールとみんなと遊びながら順番を待ちます。パールの番がきて、アマイさんの所に戻るパール。一緒に遊んでくれてありがとう。
アマイさんの申請はすぐに終わりました。
「俺は大会の最中は、トロイの宿に泊まってるんだ。良かったら遊びに来てくれ。パールと友達になってくれたハルト君なら大歓迎だよ」
2人に手を振ります。パールはしっぽでバイバイしてくれました。
そしていよいよ僕達の番です。最初にレイモンドおじさんから申請を始めます。
レイモンドおじさんもアマイさんと一緒で、すぐに申請おわりました。次はイーサンさんね。イーサンさんもすぐに終わっちゃったよ。2人とも1試合しか出ないからね。
次はペインおじさん。おじさんが申請する時になったら、係の人達が握手してくださいってペインさんに。ペインおじさん大人気です。もちろんロガーもね。いつの間にか周りには人だかりが。ちょっとドキドキだけど、頑張らなくちゃ。でも少しだけ…。僕はお母さんのスカートを握って、くっつきます。隠れないだけ成長したでしょ?
「ペイン様、今回はどの試合に」
「今回は魔獣の方と、個人の方2つだ。久しぶりだからな」
「ではこちらに記入を。先に書いていただいてきた書類は回収いたします」
うん。やっぱり先に少し書いてきて正解。これ全部ここで書いてたら時間かかっちゃう。ペインおじさんの申請も簡単に終わって、クイールお兄さんとバーバラお姉さんの申請も完璧です。
そしてついに僕達の番に。お父さんが最初に申請します。僕はワクワク、ドキドキ、ソワソワ。フウ達も僕の周りをあっちに行ったりそっちに行ったり。そのうち僕はジャンプ始めちゃったよ。
「おとうしゃん! はやく!」
「待て待て、そう慌てるな」
お父さんが書類を書き終わって、今度はフレッドお兄ちゃんの番。でもここで事件が起こりました。




