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要らねえチート物語  作者: 汐乃タツヤ
第二章
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第24話 真摯な気持ちがなお痛い

 セレスに対して完全に舞い上がった一樹(かずき)が混ざったことで、俺の能力をどう対処するかを話す空気ではなくなってしまった。

 そのため、一樹(かずき)から余っていたカードを譲り受けた後は、セレスの話題へと移っていく。

 

 セレスが元の世界に帰る方法や連絡手段が無いだけでなく、他の方法を見つける手がかりも全く無いらしい。

 三浦が召喚用の魔法陣を描くのに参考にした『魔術の心得』を取り出し、この本に書かれている内容が参考にならないですかとセレスに聞いていたが、セレスの知っている術式と全く違うために無理とのこと。

 そもそも神々は元々備わっている魔力を源として感覚的に魔法を使うのが主で、魔法陣のような媒体を使って魔力を増幅させるケースはめったに無いらしい。セレスも自前の魔力を使ってこっちの世界にやって来たので、元の世界に帰るための魔法陣とかの作り方は知らないそうだ。

 

 なので、この世界にいつまで滞在するのかは完全に未定だと判明。ついでに、こっちの世界の人間は魔力が非常に乏しいため、少なくともセレスと同じ方法で魔法を使うのは無理だと知った三浦がショックを受けていた。

 そうしているうちに7時を過ぎたため、今日の話し合いは終わりにして一樹(かずき)と三浦も家に帰ることになる。

 

 ……下手したらセレスは数十年単位で家に住むのだろうか。

 三浦を駅まで送っていった帰り道、最悪の事態を想定して気が重くなるのと同時に、その原因の一端は自分にもあるのを思い出して、後ろめたさを感じる。


「どうしたらいいんだろうなあ……」


 自分の能力を何とかするアテが無くなった上に、セレスの問題まで抱え込んでしまった。

 考えろ。

 この状況を打開する何かいい方法はないのか?


 セレス単独では無理、三浦の持っている本をセレスが役に立てることはできない。かといって俺が能力を使えば結果がランダム過ぎて危険……。


 …………。


一樹(かずき)からもらったカードでどんなデッキが作れるかな……」


 解決策を考えようとしても全く思いつかず、いつしかカードゲームの事に思考を逃避させていた。

 

× × ×


 帰宅した後、父さんの帰りが遅くなるために、俺とセレスと母さんの3人で先に晩御飯を食べていた。

 俺の隣に座っているセレスが普通に(はし)を扱って食事をしているのを感心して見ていると、母さんが俺に話しかけてくる。

 

「そういえば聖也(まさや)、あんたが連れてきた三浦さんって、変わった所があるけど奇麗な娘だったわね」


 親からそんなことを言われても反応に困るからやめて欲しい。


「いやー、変わった所があるというか、大分変わってるというか……」

「それで、どうしてあの娘と仲良くなったの? 聞かせなさいよ」


 母さんの目が完全に笑っている。これは話さないとずっと絡んでくるやつだ。

 

「……俺が車にはねられた次の日の話になるんだけど、学校に行った時には、俺が死んだってクラスに伝わってたんだ。まさか生き返ったとは言えないから、車にはねられたって情報が間違いだったことにしたけど、警察から来た話なのに間違いなんておかしいって、三浦の方から俺に絡みだしたのがきっかけ」

「ふーん、それから? 他にもまだあるんでしょ?」

「他にもって言われてもなあ……」

 

 そりゃ、大爆発を起こした現場を見られてから色々と話すようになったし、セレスを呼びだすために一緒に怪しい召喚儀式をするのにRAINを交換したとかあるけど、俺の能力を母さんに知られたくないから、話すわけにはいかない。


 次に何を話すべきか迷いながら味噌汁を口に含む。


「レイナさんはマサヤの能力を知っていましたから、最初のきっかけの後にレイナさんと色々な話をされたのですか?」


 セレスの言葉に飲みかけていた味噌汁を吹き出す。

 この女神、俺が黙ろうとした能力をあっさりバラしやがった!!

 

「能力って何のこと?」

「あ、それは、えーと……」

 

 母さんが尋ねてくるが、能力についてまさか洗いざらい話すわけにもいかない。


「はい、マサヤの能力ですが」

「能力は実際に見せるから!! セレスは悪いけど黙っててくれ!!」

 

 セレスがこれ以上余計なことを話さないように慌てて止め、能力を見せるためにゴミ袋から空き缶を1つ取ってくる。


「これを俺が力を入れて握り潰すと……こうなるんだ」

 

 力を入れて空き缶を握り潰し、握った部分が針金くらいの細さまで圧縮された空き缶を母さんに見せた。


「えっ!! これ、あんたがやったの!? ……ちょっと貸してみせて」


 母さんが俺から缶を受け取ると、潰れた部分を指でつついて実際に圧縮されているのを確認している。

 

「これがセレスの言っていた能力。力を入れると、こんな感じでとんでもない強さになる上に、全然加減ができない。三浦が能力を知っていたのは、俺がこの力を使ったのを見てたからなんだよ」

「こんなとんでもない力を使ったって……まさか誰かを怪我させた!?」

「違う、違う!! 何とかこの力を抑えようと、石を握って練習してたけど、上手くいかずに石を砕きまくったことがあったんだ。三浦が見たのはその場面。誓って言うけど、この力で人を怪我させたりはしていない」

「本当に怪我はさせてないのね?」

「ああ、本当だよ」


 確かに人は怪我させてないが、塀を壊したり山を崩したりと、様々な物を壊してる事実は黙っておく。

 

 ……それにしてもセレスが余計なことをしゃべったから、仕方なくこの加減の利かない馬鹿力を明かしたけど、それでさえ母さんが明らかに不安そうにしている。やっぱりこれ以上のことは話せないな。


「あ、でもこの力を元に戻すためにセレスがこっちの世界にやってきたんだ。そう一筋縄じゃいかないみたいだけど」


 少しでも母さんの不安を軽くするために、元に戻れる可能性について話しておく。現時点ではその可能性が限りなくゼロに近いものだとしても。


「そう……なの? セレスちゃん」

「あ、はい。その通り……です」

「セレスちゃん。ウチの聖也(まさや)を生き返らせてもらった上に、変な力のことまで頼りにして本当に申し訳ないけど……聖也(まさや)をよろしくお願いね」

「は、はい……分かりました」


 母さんの申し出を受けるセレスの表情が明らかに引きつっている。

 能力を外すアテは全くないし、そもそもこの能力を渡したのはセレスなんだからな。

 なんというマッチポンプ。

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