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要らねえチート物語  作者: 汐乃タツヤ
第二章
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第22話 正直なのも時と場合による

「三浦、落ち着けって!!」

 

 三浦をセレスから引きはがしたいところだが、下手に三浦をつかめば身体が砕けてしまう。そのため、言葉で必死に呼び止めるも治まる気配が無い。

 

 その時、されるがままだったセレスの手から光を発せられる。

 すると興奮状態の三浦が急速に落ち着きを取り戻していった。

 

「セレス、三浦に何か魔法を掛けた?」

「精神を落ち着ける魔法を掛けさせて頂きました。ただ精神に影響を与える根本の原因が解消されない限り、一時しのぎにしかならないのですが……」


 一時しのぎ?

 セレスの言葉に嫌な予感がして三浦の様子を改めて見る。


「凄い……これが……女神の魔法……」


 落ち着いたと思った三浦が、魔法を直に体験した喜びに打ち震えて早速興奮状態に戻ろうとしている。


「母さん、騒がしくなりそうだから俺の部屋に行って3人で話してくる。三浦、部屋に案内するから少し落ち着いて」

 

 もはや三浦を抑えるのは無理だと判断して、これ以上暴走する前にセレスと一緒に部屋に連れていくことにした。


× × ×


「セレスさんの着ている服って凄くサラサラした感触ですけど、どんな生地を使っているんですか?」

 

 部屋に入るなり、三浦が興奮した顔つきでセレスが着ている服を何度も()でながら尋ねてくる。


「わ、私達の世界にある花から採れる、魔力が良くなじむ綿を使っています。服に加工する時に魔力を込める事で物理攻撃や魔法攻撃に強い耐性を付与させているのです」

 

 セレスが三浦の行動に若干引きつつも、丁寧に質問に答えた。


「やっぱり凄い機能を備えているんですね。……神の魔力で作りあげた服ならアーティファクトと言っていいかも。いいなあ……」


 セレスの説明を聞いた三浦がうっとりとした表情になり、服を手で()でながら、顔を頬ずりできそうな距離まで服に近づける。

 

 端から見たら完全に変態の所業だ。

 まさか三浦がここまで欲望に突っ走るとは思わなかった。

 内心で頭を抱えているとセレスの手が再度光る。すると三浦の表情が普通に戻り服を()でるのを止めた。

 

 ……また精神を落ち着ける魔法を掛けられたのか。


「三浦、話が進まないからそろそろ欲望を抑えて欲しいんだけど」

「あ……そうだよね。ゴメン」


 三浦の理性が戻っている内に俺が間に割って入ったことで、ようやく三浦がセレスと距離を空けた。


「マサヤ、こちらのレイナさんという方は?」

「俺のクラスメイト。セレスが俺を生き返らせて能力を渡したのも、その影響で俺にメチャクチャな力が付いたのも知っている。もっと言えば、セレスに会えばこの能力を何とかしてもらえるんじゃないかって提案したのも三浦だし、呼び出すための手段として召喚儀式の用意をしてくれたりとか、色々手助けしてもらったんだよ。召喚は上手くいかなかったけどな……」


 というか召喚するまでもなくセレスはこっちの世界に来てたから、召喚自体に意味がなかったわけだけど、目の前に三浦がいるので黙っておく。


「そういえばセレスさんは吉村君の能力が暴走しないようにするためにこっちの世界へ来たって聞いたんですけれど、能力を上手く操れるようになったんですか?」


 三浦の問いにセレスが表情を曇らせる。


「申し訳ありません。私の力ではマサヤに能力を制御できるようにはできないのです……」

「そう……なんですか、やっぱりこっちの世界に来て力が弱まってしまったから……」

「それとはかんけ……いえ、何でもありません」


 今、それとは関係無くできないって言いかけたな。

 しかし能力を外せないって聞いた時点で嫌な予感はしていたが、俺が能力を制御できるようにもできないのか。


「じゃあ聞くけど、もしセレスが弱体化してなかったら、どんな風に能力の被害を抑えるつもりだった?」

「その場合は、もしマサヤが誰かに触れた時に誤って怪我させてしまっても、自動的に相手の傷を癒す能力を付与させるつもりでした。流石に死者を即座に生き返らせるのは無理ですが……」

「……それ、人を傷つけても片っぱしから治していけばいいって理論? そもそも回復魔法が必要な事態にしたくないんだけど」

「マサヤの周辺全てに対して、自動で防御魔法を掛けて保護する能力を付与させるのは、私では無理でして……一番現実的な手段がマサヤの接触を媒体として回復魔法が掛かるようにすることでした」


 その原理だと、もし俺が何かを投げて相手を怪我させた場合、直に接触してないから回復魔法が掛からないまま終わるんじゃないか?


「ですが、今の私にはそれをできる力がありません。ですので、マサヤが怪我をさせてしまったなら直接私が魔法で治療します。今の力では死者を蘇らせることはできませんが、身体の一部分が砕けたり切断されたぐらいでしたら治してみせますので」


 身体が欠けてしまっても治せるのは十分凄いとは思うが、間違い1つで人を死なせかねないこの状態ではそれでも不安だ。

 かといって、俺が必殺技を使って回復や蘇生をさせることができたとしても、今までの事例を考えると、欠けた身体の部分がいびつな形で再生したりとか、ゾンビみたいな状態になって生き返るとか、取り返しのつかない結果になる気がしてならない。

 

 ……やっぱり、能力を使って誰かに直接影響を与えるような真似はやめよう。どんな結果になるのか怖すぎる。


「もしも吉村君が誰か身体を誤って砕いてしまったとして、セレスさんが魔法で治した後に怪我をした人の記憶を消すことはできるんですか? 傷が治っても身体が砕けた時の痛みが記憶に残っていたら、精神的なショックはもの凄いでしょうし、それに怪我をさせた吉村君に対して抱く感情の問題もありますよ」


 三浦の指摘に俺はハッとした。

 そうだ、怪我を治したからそれで済む話じゃない。

 当のセレスはと言うと、あぜんとした表情をしている。


「人の記憶を消すのは、その人が持っていた思い出までも消すことであり、倫理(りんり)に反する行為だと考えていました。ですので、記憶を消す魔法を取得するなど考えてもいませんでした……」


 いやいやいや、そりゃ人の記憶を消すのは確かに倫理的には問題だろうけど、忘れさせた方がいいことだって世の中にはあるじゃないか。

 精神に干渉したら人格を歪めるからって、精神攻撃の耐性すら付けなかったりと、どうしてこの女神は善意でやる行動が裏目に出るんだ。


「じゃあ物を壊した場合は? 今のところ物は壊しても、人は傷つけたりはしてないから、そっちだけでも何とかならない?」

「物に防御魔法を掛ければ保護できるのですが、既に壊れてしまった物の修復はできません。ですので申し訳ありませんが、なるべく物を壊さないように頑張って頂けないでしょうか」


 じゃあ、前に俺が壊した塀は直してもらうことはできないのか……。

 ん? そういや、回復魔法にしろ防御魔法にしろ、俺が起こしたトラブルに対処するなら、常にセレスが俺の近くにいなきゃならないんじゃないのか?


「今の話じゃ、セレスがずっと俺を見張ってなきゃいけないと思うんだけど、例えば俺が学校に行ってる時はどうすんの? 関係者以外は学校に立ち入り禁止だし」

「はい、その際には立ち入りの許可をもらってマサヤの近くにいようと思うのですが」


 ちょっと待て。真正面から学校に入る気なのか。


「……ちなみに何て言って許可をもらうつもり?」

「それはもちろん、マサヤが強大な力を誤って使用して被害を及ばさないよう、私がフォローしますのでどうか立ち入らせて下さい。と」

「そんな話じゃ通用しないだろ!! っていうか、信じられたらそれはそれで、俺の危険人物認定待ったなしじゃねえか!!」


 ダメだ、全然頼りにならねえ。

 三浦もセレスを不安そうな眼差しで見ているし。

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