第16話 全てを打ち明けて
「今日、親は出かけてるから、騒いでも問題ないぜ」
「お、そうなのか。じゃあお邪魔します」
学校が終わった後、俺はそのまま一樹の家に遊びに来ていた。
能力のせいでゲームがまともにできないから、当分来れないと思っていたけど、こんなに早く来ることになるとはな。
「で、話ってのは何だよ」
「結構ややこしい話になるんだけど……実際に見てもらった方が早いよな」
制服のポケットから、ここに来る前に拾った小石を取り出して一樹に見せる。そして、小石を力を入れて握りしめ、粉々に砕いてみせた。
「えっ! どうやったんだ!? 今の!!」
砕け散った小石を見て一樹が驚愕する。
「これが話したかった内容につながるんだけど……俺、とんでもない能力を渡されて、もの凄い力が出たり、威力が凶悪な技を撃てたりと、常識外れの存在になっちまったんだ」
「いやいや能力って、ゲームじゃあるまいし……さっきのも何かの手品じゃないのか?」
一樹が信じられないといった表情で俺と砕けた小石を見比べる。
……やっぱりそう簡単には信じられないよな。
「じゃあこの前、俺に薦めてきた格ゲーがあったろ? ちょっと対戦をやってみようぜ。……さっきのが手品なんかじゃないってすぐに分かるから」
「まあ、いいけどよ、今度は何が起こるっていうんだ?」
一樹が首をひねりながらもゲームの準備を始めた。
× × ×
「ちょっと待て、何だよコレ!?」
実際に対戦をやってみて、不条理な現象を目の当たりにした一樹が戸惑った声を出す。
なにしろ俺の方はどれだけ攻撃が当たってもノーダメージ、逆に俺が弱パンチを一発でも当てれば、例えガードをしていても問答無用でKOしてしまう。
「これもさっき言った能力の1つだよ。俺がゲームをやると、勝手にチート状態になって、普通のプレイができなくなっちまうんだ。こんなの手品じゃ説明つかないだろ?」
「確かにその通りだな……。お前の言ってた話は冗談じゃなかったわけか」
「そうだよ。突拍子もない話だから、疑うのも無理はないけど」
「なあ、さっき能力を渡されたって言ってたけど、誰がお前にこんな力を渡したんだ?」
一樹が少し身を乗り出してきて、能力について聞く姿勢になった。
だけど問題なのはここからだ。
緊張を少しでも和らげるために、一度深呼吸をする。
「能力をもらうきっかけになった話なんだけど……1週間ほど前に、俺が車にはねられて死んだって話が広まっただろ」
「ああ。その話を聞いた時は流石にショックだったけど……実際は、車にはねられたわけじゃなかったんだよな?」
「あの時はそう言ったけど……本当は車にはねられて1回死んだんだ」
「はあ!? 1回死んだ!?」
一樹が今日何度目かの驚いた声を出した。
「信じられないだろうけどそのまま聞いてくれ。俺が死んだ後、セレスっていう女神に会って生き返らせてもらったんだけど、その時に間違ってこの能力を渡されたんだ」
「いやいや、さっきのメチャクチャな力だけでも相当な話だっていうのに、女神に生き返らせてもらったって……それに女神が間違って能力を渡したって言ったけど、そんなものを間違えるか?」
一樹が訝しげな顔をして疑問を口にする。
「確かに、生き返ったって言われて信じられないのも分かるし、間違いでこんな能力を渡すかって俺も思うけど、現にこうなってるからな……。それと能力の証拠は他にもあるんだ」
俺はスマホを操作して三浦とRAINのやりとりをした画面を開く。
能力だけじゃなく、今までやらかしてきたことも伝えるため、三浦に頼んで送ってもらった動画を一樹に見せた。
能力の制御が上手くいかないせいで、俺が石を握っては砕きまくり、地面にクレーターを空け、最後に超必殺技をぶっ放して大爆発を引き起こした場面が流れていくごとに一樹の表情が強張っていく。
「石をポンポン砕いたり、地面に穴を空けたのも驚きだけど、最後の大爆発はもしかして、世界中のニュースになったやつじゃないのか!?」
「そうだよ。だから大騒ぎを起こした原因は……俺だったんだ」
「お前が!?」
覚悟はしてたけど、とうとう言ってしまった。
どう反応されるか不安になりながら一樹を見るが、何も言葉を発しない。
そのまま沈黙が続く。
「なあ、聖也」
どれ程の時間が経っただろうか。一樹が静かに口を開いた。
「最近、塀が壊されたり、土砂崩れが起きたり、でかい光の柱が現れたりと色んな騒ぎがあったけど……それもお前がやったのか?」
「そうだよ。光の柱は仕方ない事情があったから俺の意思でやったけど、他はまともに能力を扱えないせいでやらかした」
「能力を扱えない? そういやさっきの動画でも加減が効かないって言ってたよな」
「ある程度力を入れたら、能力が発動して怪力になるし、全力を込めたら必殺技みたいになるんだけど、1度発動したら加減が全然効かないんだ。おまけに発動条件を満たすと、俺の意思に関係なく勝手に発動して抑えることもできない。だから力を入れないで能力を発動させないようにするしかないんだ」
そう言うと、一樹が「ええ……」と声を出す。
「それじゃあ、ゲームみたいにモンスターがいるわけじゃないんだし、そんな強大な力が出ても困るだけじゃないのか?」
「そう! そうなんだよ!! 能力のせいでむしろ普段の生活で足を引っ張られてるんだ!! うかつに力を入れられないし、走れもしないし、ニュースになるような事件をやらかして周りに迷惑を掛けるばっかりだ!!」
能力の問題点を分かってくれた嬉しさから、今まで言えずにため込んでいた憤りが噴き出てきて、俺はつい大きな声を出した。
「そういや、今日のバレーの授業は、お前がいつも以上に動いてないし、力も入れてないって思ったけど、それも……」
「ああ、能力を発動させないためにそうしてた。この力がバレたくなかったし、誰かを怪我させたくもなかったからな。」
俺がそう言い終えると一樹が再び黙り込む。
次の言葉を待っていると、突然一樹が俺の肩に腕を回してきた。
「まあ色々やらかしたとはいえ、お前の行動に悪意が無いのは分かったよ。色々苦労してることもな」
そう言いつつ一樹がポンポンと俺の肩を軽く叩く。
言葉にはしていないが、その一連の行動が俺を化け物扱いしないと物語っていた。
「一樹……ありがとう」
嬉しさと安堵感から声が震える。
ヤバい。本気で泣きそうだ。
「おいおい、そこまで神妙になって言う程でもないって。オーバーだな」
そう言いながら一樹が俺の肩を揺さぶる。
「にしても、話をしたいっていうから何かと思えば、まさかとんでもない能力を手に入れたって話だったなんてな。てっきりお前が三浦に惚れたって話だと思ったぜ」
「え!? 何でそうなる!?」
「そりゃいきなり三浦の味方をしたかと思えば、三浦と色々あったって言った後に改めての話だろ。普通はそう思うって」
言われてみれば確かにそうだ。俺の言い方がまぎらわしかったかな。
何にせよ、三浦の存在は凄くありがたいし、なし崩しだけど一樹に真相を打ち明けるきっかけにもなった。
それがなければ一樹に話す決意がついたかどうか正直分からない。
「そういや、そもそも三浦と何があったんだよ? その辺の話をまだ聞いてねえぞ」
「え? ああ、最初三浦に俺が大爆発を起こした所を見られたんだけれど、それでも敬遠しないで普通に接してくるし、周りにも黙っていてくれてるんだ。まあ三浦が厨二病だし、オカルトにもハマってるから特殊な能力持ちに抵抗が無いっていうのもあるだろうけど」
「なるほどそういうことか……ん? ちょっと待て。さっきの動画だとお前はどこかの森にいたよな。通学路でもないのに、どうして三浦が大爆発の現場を見てたんだ?」
そう言いつつ、一樹が首をひねる。
確かにあんな所で見られてるとは思わないよな、普通。
「俺が車にはねられて死んだって騒ぎになってたのに普通に登校してきたりとか、俺がバレーボールをスパイクして破裂させた騒動から、俺が闇の力に目覚めたと思ったんだと」
「は? 闇の力?」
「そう。で、俺が何かをしようとしてると思って、こっそり後をつけてきてたんだよ。さっきの動画は俺の知らないうちに三浦が撮ってたやつだな」
「お、おい。尾行した上に隠し撮りまでしてたって……?」
一樹が大爆発を起こした犯人が俺だと知った時よりも明らかに引き始めた。
「いや、俺も尾行までするかとは思ったけどさ、結果的には能力について話せる相手ができたからありがたかったんだぜ? それまで誰にも言えなくて辛かったし」
「まあ……言ってることは分かるけどよ……お前が闇の力に目覚めたって考える時点で十分ヤバいってのに、尾行して隠し撮りするなんてヤバい要素しかないだろ……」
「そうでもないって。上手くはいかなかったけど、俺が能力に振り回されるのを何とかするのを手助けしてくれたりもしたし」
「手助けってどんな風にだ?」
「能力を渡したセレスに会って何とかしようとしたけど、多分セレスは俺達とは違う世界にいるからこっちから行くことはできない。それなら三浦の趣味も混じってたけど、セレスを召喚しようと、儀式の準備をしたり……とか」
「儀式……? 一体何をやったんだよ……」
三浦をフォローするどころか、一樹への単なる追い打ちにしかなってない気がしてきた。
あっ、一樹がさらに引いている。
その後、召喚儀式の内容として、魔術の心得という本に書かれていた魔法陣とルーン文字で『セレス』と地面に描き込み、三浦自作の黒マントを羽織った上で、本人オリジナルの呪文を唱えた。と大まかな流れを説明すると、一樹が思いっきりドン引きして、そんな奇行に付き合わされて大丈夫だったのかと俺のことを心配しだした。
あれ? 危険性で言ったら、バカでかい力を制御できない俺の方が圧倒的に高いはずなのに、何で三浦の方が危険人物みたいな感じになってるんだ?




