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My Nightmare  作者: 燕尾あんす
beginning of Nightmare
6/98

旅立ち

# misery side



周りは静まりかえっていた

だが人が居なくなった訳ではない


村の人たちは未だに瞳から恐れが消えなかった

その恐れの対象とは…私だ


今まで村の人たちは

私に優しい言葉を、柔らかい微笑みをくれていた


のどかな村の暖かさは、村の人たちが作っているんだと感じさせていた


でも今は


距離をとり、私に声をかけるものなどいなかった


そんな中、誰かの呟きが耳に入ってきた


【化け物】


だと


視界の端でベイカーが憤り始めたのを捉えたが

私は自分の家へと歩き始めた


進行方向にいた人たちは慌てて後ずさり距離をとった


まただ


三年前と同じ


守れたと思った私はなにかを失っていた

私の後ろ姿を見送る人達の視線が痛かった


村の家々の集落を抜け

真っ暗な道を歩く


前々から頭にあった考え


この村を出る


(もう…村を出ていこう)


このまま村に住み続けることは村に恐れを感じさせ続けるということだ


私自身、村に居続けることは精神的にもできそうになかった



数分後 家に辿り着くと


破れた衣服を脱ぎ捨て

水を溜めてあった桶に手拭いを突っ込み、絞る


土や泥に汚れた顔や身体を拭きあげ、自室の箪笥から衣服を取り出す


赤いトップスに紺のボトムス

村に来た露天商から買ったそのボトムスは軍用に使われていたものらしく、材質は固めになっているが動きやすさも考慮されている



服を着替え、いくつか衣服を傍にあった革の鞄に押し込んでいく


お金も目に付くだけ小さな皮袋に入れて

それも鞄に押し込んだ


そして紺の上着

裾が短めなその上着も軍用だとかなんとかで露天商から買ったものだった


広間に戻ると鞄をソファに投げ

自分もソファに座る


と、髪の結びが解れていることに気づき

一度結びをとき濡れた手拭いで髪も拭きあげた


髪を結直していると

家の外から砂利を踏む音が聞こえてくる


(ビー…丁度いい…)



別れの挨拶もベイカーぐらいにはしておかなければと思っていた



〈コンコン〉


やはりノックしながら扉を開けて

ベイカーが入ってきたらしかった


私は髪を結直しながらベイカーに告げようと口を開いた



『ビー、私この村を出る…』


振り向きながらの言葉が途切れたのは


ベイカーの持つ大荷物に呆気に取られたからだった



『なに?その荷物』


訝しげにベイカーを見つめながら問うと

何食わぬ顔でベイカーが言った


「え?ミザ村を出るんだろ?僕もついてくよ」


彼の傍らには私の鞄の倍以上の大きさの鞄が、隙間なく中身が詰まっているようにパンパンに膨らみ座していた。


私は片手で頭を抑えた


『あんたまで出ていくことないでしょ…』


少し言い方に棘があったかもしれないが

それもやはり意に介さずベイカーは言った


「ミザの身体は医者じゃ見れないんだ、なにかあったら必要なのは気心知れた技術者じゃん。この村に残っても…家族がいる訳じゃないし、ミザの手伝いをするよ」


だめだ

ベイカーは案外頑固で決めたことを変えはしない

そういうタイミングが多々ある


今もそういうタイミングだと感じた


ふと一拍置いて浮かんだ疑問を問いかける


『手伝うって何をよ?』


何の迷いも見えない

真っ直ぐな視線でベイカーは言った


「そりゃぁ…ミザが生きる理由を探す旅の手伝いさ」


驚いて言葉が出なかった


生きる理由が見いだせない

この命に意味を感じられない

この魂が生命だと思えば思うほど、与えられたこの魂が作り物だと疑ってしまう


そんな私の心を見抜いているのだろうか…


「幼馴染みだからね」


なにも口に出していない私の問いに答えるように言葉を続けた



『…どうなっても知らないから』


「どうにかしてみせるよ」


会話になってるのか、なってないのか


呆れながらも


おもむろに立ち上がり自分の鞄を手に取る


ベイカーも自分の鞄を重たそうに背負い直した


家の中を眺める

いつか、帰って来るだろうか

帰ってこられるだろうか


その時私の心境はどうなっているのだろうか


今の私に答えは出せない


ゆっくり歩き始め、扉を開けた



これから生きるという意味を、探す

そんな旅が始まる


ぼんやり薄暗かった空に、間もなく夜明けが訪れる


そんな気配も感じた



「んで?どこに向かうの?」


『とりあえず、西ね…』



もう一度家を振り返るとグッと唇に力が入る


『…行くわよ』


村の出口に向かい、二人は揃って歩き出した


誰の見送りもない旅路の始まりを

ほんの僅かな追い風だけがその背中を押していた


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