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初恋探偵  作者: 秋月 忍
4/7

浩平視点です

 朝、浩平が教室に入って行くと、席に座っている真奈美と視線がぶつかった。

 いつもなら、真奈美はさっと視線をそらしていたのだが、今日はビクリと身体を震わせてから、ぎこちなく微笑み、それから視線を外した。

──どういうことだろう?

 今までと違う反応に驚きながら、席に座る。

 真奈美は、ひょいと視線を泳がせて、立ち上がると坂上の方へと歩いて行った。

 何を話しているかわからないが、親し気に話をしている。

 昨日も二人で話をしていたなあと、浩平はぼんやりと思い、胸の奥がもやりとした。

 真奈美は、ほぼ男子に自分から話に行くことはない。自分に向けていた探偵のような視線ではなく、優しい目つきだ。

──なんなんだ、いったい。

 意味もなくイライラする感情を払いのけ、浩平はカバンから教科書を出す。

 それから。

 始業のベルが鳴り響くまで、真奈美の視線が浩平に向けられることはなかった。



 真奈美が剣道の見学に来なくなった。

 教室にいるときは、時折、視線を感じることがあるが、前のように頻繁にではない。

 というか。

 会話したあの日から、どうも浩平を真奈美が避け始めたように思える。避けるといっても、もともと接点もなかった相手であるから、何もなかった二週間前に戻っただけ、ともいえるのだが。

 弁当を食べる真奈美の横顔を盗み見るが、浩平の方に視線を向ける気配はない。

──調査が終わったのか?

 理由はよくわからないが、浩平を探る必要がなくなったのかもしれない。

 それにしても、浩平の『何を』『何のために』探っていたのだろう。

 

「山本君はすごく親切なのに、笑うの苦手だよね」


 不意に、真奈美に言われた言葉を思い出す。

 浩平は昔から、愛想笑いというのができない。口角をほんの少し上げるだけでよいと、言われたことはあるのだが、目力がありすぎるというか、ストレートに言えば目つきが悪いために、多少、笑ったところで、相手の警戒心は解けない。

 加えて、身長こそないものの、体格も悪くないから、見た目で女子に避けられがちなのは自覚がある。 誰の依頼なのか、何の目的なのかは知らないが、真奈美がしっかりと浩平を観察していたのは間違いないだろう。

 それにしても、真奈美の様子がちょっとおかしい。

 視線はうつ向きがちだし、大きくため息をついたりしている。

 時々、友人との話も上の空のようだ。

──何かトラブルでもあったのだろうか。

 ひょっとしたら、浩平の調査を依頼した人物が、期待外れの結果に契約を打ち切ったという可能性はないだろうか?

 新たに、ターゲットを決めた様子はない。

 ひょっとしたら、スパイを首になったのかもしれない……と、そこまで考えて、浩平はさすがに自分の考えがおかしい、と気が付いた。

 だいたい、浩平をスパイが探る理由がない。

 浩平の父は平凡なサラリーマンだし、母は専業主婦。兄は、この学校の三年で、山本家の人間が国家機密とかにかかわっている可能性は、まったくない。

 また、真奈美は、お世辞にも器用とはいいがたい女性に見えるから、そんなスパイ活動なんかに向いているとはとても思えない。そもそも、女子高生がスパイって、何処の漫画だ。

「どうした? 食欲ねえの?」

 箸を止めていたせいだろう。保が不審そうに浩平を見る。

「いや、別に」

 浩平は、首を振った。

「浩平、最近、なんか気になることでもあるのかよ? 相談のるぜ?」

 保が眉を寄せる。

 本気で心配しているのだろう。目が真剣だ。

「……話しても、たぶん、信じねえよ」

 浩平は呟いて、弁当を食べ始めた。





 


ひたすら浩平がアホの子です。

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