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のじゃ神さまとおしゃべり  作者: 半信半疑
2/4

2 ところがどっこい、それが現実

 ところでここは夢の中なのだけど、神さまはどうやって僕の小説を読んでくれるのだろうか。

 なんて思っていると、神さまはお腹あたりに付いているポケットに手をつっこみ、ごそごそと中を漁った。

 まさか、金髪幼女神のポケットは青狸さんと同じタイプなのだろうか。


「てれれってれー、パぁーソぉーコぉーン―」


 そのまさかであった。

 神さまは独特のだみ声と共に、ポケットからパソコンを取り出した。

 それは、明らかにポケットの大きさ以上のパソコンであった。


「あっ、小説のタイトルは『異世界チーレム生活』です」

「なんとも直球な名前じゃのう」

「分かりやすい方が良いかと思って」

「ワシ、ハーレム系はあんまり好かんのじゃが…」

「そう言わずに、お願いしますよ」

「うーむ、たまには良いかのぅ」


 渋い顔をしながらも、神さまはパソコンを操作して僕の小説のページを開いてくれた。


「では読むぞ。お主はテレビでも見ておれ」


 言いつつ、神さまはテレビの電源を点けてくれた。優しい。

 しかも、僕の分のお茶まで用意してくれた。とても優しい。

 それからしばらく、神さまと僕は別々の画面とにらめっこをすることとなった。



◇◆◇



「…読み終わったぞ」

「早いですね。四十万文字くらいあったはずですけど」

「ワシは速読ができるのじゃ」


 無い胸を張る神さまは、とても微笑ましかった。小さい頃の上の妹を思い出した。


「今見ているのがもうすぐ終わるので、ちょっと待ってください」

「いいぞ、ワシもこれ好きじゃから」


 やがて、主人公は自分の息子が魔法学校へ行くのを見送った。そして、良い笑顔と共に映画が終わった。


「やはり『ハリーノ・ポルタ―』シリーズは面白いのぅ」

「えぇ、本当に」


 少しだけ雑談を交わしてから、神さまと僕は本題に入った。


「それで感想じゃがのぅ…」

「はい」


 思わずごくりと咽喉が鳴る。面と向かって感想をもらえるのは初めてだ。


「話のテンポは少しもたつきがあったが、中々良かったぞ。じゃが…」


 じゃが、何ですか? 早く言ってください。心臓がもちません。


「感情の書き方に現実感が感じられなかった」

「現実感、ですか…」


 僕は噛み締めるように言葉にした。


「うむ、リアリティとも言う」

「でも、お話はお話だから良いんですよ? あまり深刻に書きすぎても駄目じゃないですか?」

「そこは好みの問題かもしれぬのぅ。ワシはほら、普段ハーレム系とか読まぬし。主人公好き好きのヒロインばかりじゃと拒否反応を起こすのじゃ」


 まるでアレルギー反応みたいに言う神さま。


「お主の小説には、そういう好き好き系ヒロインはおらなんだが、なんというか…葛藤が薄いのよな」

「葛藤ですか…」

「そうじゃ。人間、生きていて葛藤を覚えない者はおらぬ。小説の登場人物にしても、その話の中で各々の人生を生きておるのじゃから、葛藤するのが普通じゃと思わぬか?」

「そうですね」

「結婚制度じゃったり恋愛の駆け引きじゃったり、色々書き込むべき部分があるじゃろう? そこをもっとつぶさに書くと良いのではないか?」


 なんて説得力のあるお言葉。これが金髪幼女神の力か。

 思わず手を合わせて拝んでしまった。ありがたや、ありがたや。


せ止せ、ワシができるのは助言くらいじゃて」


 照れる神さまは可愛らしかった。小さい頃の下の妹みたいだった。


「神さま、もう一つお願いをしても良いですか?」

「なんじゃ、言うてみよ」

「より良い作品作りに関しては分かったのですが、それよりもさらに深刻な問題があるのです」

「深刻な問題とな?」

「はい。それは、僕の作品を読んでくれる人がいないということです」

「あちゃー」


 額に手を当てる神さま。参った表現だろうか?


「この問題、いったいぜんたい、どうすれば良いのでしょうか?」

「うーむ」


 腕を組んで唸る金髪幼女。可愛い。

 しばらくの間、僕は唸る神さまを愛でた。

 と、ようやく考えがまとまったのか、神さまが組んだ腕をほどいて言った。


「目立つのじゃ」

「目立つ」


 僕はオウム返しに繰り返した。『のじゃ』は、属性を獲得してなかったので付けることができなかった。これは世界の絶対法則だ。

 …ボケはその辺に置いておき、僕は詳しいところを神さまに尋ねる。


「具体的にはどうすればいいのでしょう。作品のタイトルを変えたり、ですか?」

「それも良いかもしれぬな。あとは、投稿の時間帯を工夫するのは言うに及ばず、他のユーザーと積極的に関わり合いを持つことじゃな」

「関わり合いを持つのが重要なのですか?」


 ネット越しで顔を見なくて済むといっても、いささか恥ずかしいのですけど。


「何を言っておるか、まずは自分の存在を知ってもらうことが必要なのじゃ。見知らぬ人間を評価することはできぬじゃろう? お主の小説にも同じことが言えるとは思わぬか?」


 確かに。確かにそうだ。読んだことのない小説を批判することはできない。

 これほど的確な助言をくれるなんて、この金髪幼女は神さまなのだろうか?

 …あぁ、神さまだったわ。


「それでは、他のユーザーと関わり合いを持つことで、僕の小説にばんばんポイントが付くのですね」

「それは分からん」

「えぇ…」


 嘘だどんどこどーん。


いちじょうさん「夢じゃありません!」

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