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のじゃ神さまとおしゃべり  作者: 半信半疑
1/4

1 神さま、お読みになって

「はぁ…」


 僕は思わず、パソコンの前で溜め息をついた。よく、『溜め息をつくと幸せが逃げる』なんて言うけれど、逃げるほどの幸せが今の僕にあるとは到底思えないので、僕は躊躇いもなく溜め息をつくことができる。それだけは利点だ。…あまり嬉しくない利点だ。


「はぁ…」


 もう一度溜め息をつく。

 それから、明後日の方向を向いた後、僕は視線を再びパソコンへと戻す。


「駄目かぁ…」


 僕はとある小説投稿サイトのマイページを開いていた。自分の作品のアクセス数を眺めていたのだ。勿論、ポイントも。

 画面には、空しいゼロが居座っている。日間のアクセス結果の欄には、幸せの青いバーなど見当たらない。評価欄も同様の結果であった。カロリー軽減し過ぎである。


「まぁ、そんなことだろうとは思っていたけど」


 同じような結果を何度見てきたと思っているのだ。もはや僕は、その道のプロなのである。こんなことで泣いたりなんか、しない。


「もうこんな時間か…」


 ささくれだった心から目を逸らし、机上の時計を見る。時刻は既に十二時を回っていた。シンデレラも家に帰らなければならない時間である。


「明日も早いし、もう寝よう…」


 サイトからログアウトし、『作業お疲れ様でした。』というサイトからの労いの言葉を摂取した後、僕はパソコンの電源を落とした。

 そして、のそのそとベッドに移動し、柔らかな海に身を沈めた。


「ふぅ、おやすみなさい」


 誰に言うでもなく就寝の挨拶をした後、僕は夢の世界へと旅立った。



◇◆◇



 目が覚めた瞬間、僕は奇妙なことに気づいた。


「あれ? これって夢の中?」


 驚いた。起きている時と同じように、自由な思考ができるぞ。


「ここはどこなんだろう」


 それと、僕がこれが夢の中だと判断したもう一つの理由なんだけれど、周囲が真っ白なのだ。本当に何もない。何もない真っ白な空間に、僕は立っていた。

 そのまま途方に暮れていると、遠くの方で音が鳴った。

 例えるなら、そう、大きな鐘が鳴った時のような音だ。


 りんごーん、りんごーん、りんごーん。


 そんな音が三度鳴った後、強い光が僕を襲った。


「うわっまぶしっ!」


 僕は目を瞑り、突然の太陽拳を回避した。

 光がおさまった後に目を開くと、そこには和室があった。こじんまりとした和室だった。畳の上にはちゃぶ台と箪笥、それとテレビが一つずつある。

 驚くべきことはそれだけではない。いや、驚くべきことはそれではない。


 なんとその和室では、小さな女の子が、座ってお茶を飲んでいたのである。

 小さな女の子が、座ってお茶を飲んでいたのである! 大事なことなので(以下略)。

 なお、女の子はパツキンで、お腹あたりにポケットが付いた可愛らしいワンピースを着ていらっしゃる。

 …ドラさんをリスペクトしてるのかな?


「おぉ、よう来たのぅ。さぁ、こっちへ来るがよい」


 幼女が話しかけてきた。

 僕は愕然とした。

 夢の中に老人口調の幼女を出現させるほど、僕は女性に飢えていたのか? も、もしかして、僕は、ロリコン、なのだろうか…?


「お主は女性に飢えておらんし、ロリコンでもないのじゃ。だから安心してこっちへ来るがよい」


 心を読まれた?


「なんじゃ、不思議そうな顔をしおって。さっきのは、お主の顔に書かれていたのを読んだだけじゃ」


 うっそだ―。


「嘘ではないぞ」


 などというやり取りを何度か繰り返し、「まぁ、そういうこともあるかもな」と自分を納得させた。

 驚きはあったけれど、僕は金髪幼女に言われるがまま、和室へと近づいていった。



◇◆◇



 僕は今、「畳の上に正座して金髪幼女と向かい合う」という奇妙な状況に遭遇している。

 波紋が使えなくても人生に奇妙なことは起きるらしい。オラァ初めて知った。


「さて、まずは自己紹介からかのぅ。実を言うと、ワシは神さまなのじゃ」

「神さま?」


 神さまって、あの神さま?


「そうじゃ」

「暇を持て余した?」

「神々の」

「戯れ」

「「いっいぇーい!」」


 思わずハイタッチをした。自称神さまの金髪幼女の手は、とても柔らかかった。

 僕は普段、人見知りをする方なのだけれど、この金髪幼女神とは仲良くできそうだ。


「それで、神さまが何故、僕の夢に?」

「いやのぅ? あまりに暇を持て余しておったから、手元にあったダーツを投げて、刺さった人間の夢にでも出てやろうと思ってな」


 それで僕の夢の中に出てきたのですか…。

 というか、そのダーツって刺さっても平気なタイプなんですか? そうですか…。


「ところで、神さまは何を司る神さまなのですか?」

「ワシか? ワシは『純潔』を司っておる」

「これ以上ないほどに適していますね」

「じゃろう? しかし、いつも暇していてなぁ」

「普段は何をなさっているのですか?」

「ゲームをしたり、本を読んでばかりしているのじゃ。前はRTAに凝っていたのじゃが、最近はネット小説を読み漁っておる」


 ほほぅ、ネット小説とな?


「もしかして、僕の書いた小説を読んでもらえてたりなんかしちゃったり…しますか?」

「いんや? 知らん」


 ですよねー。知ってました。


「不躾なお願いなんですが、僕の書いた小説を読んでいただけないでしょうか?」

「うーむ、まぁ、暇じゃから読んでも構わんよ?」


 やった。読者をつかまえたぞ。

 僕の脳内に、ゲット時のファンファーレが鳴り響いた。

 てーてーてー、てれれれってれー、じゃん。


 のじゃ神さまはTAS神だった…?


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