表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイデア・ノート  作者: 大原英一
ホラーな彼女
7/16

後編

 エクボちゃんというのはオレの代表作で、その主人公であり、一連の作品群のメインキャラクターでもある。アマチュア漫画家にも代表作はあるのだ。

 オレはこれまで彼女(エクボ)を中心に作品をこさえてきた。彼女はその辺の萌えキャラなんかじゃなく、丸っこくて、お母さんのようなドラえもんのような愛すべき存在だ。

 現実の彼女とともにオレはエクボちゃんを描いてきた。ややこしいので現実の彼女はかず子(仮)と仮名で呼ぶことにする。なんかホラーっぽいでしょう?

 オレのアシスタントをしてくれたかず子(仮)は、このエクボちゃんというキャラをいたく気に入っていた。

 そのことをオレは嬉しく思っていたし、マンガ描きとして誇らしかった。ひとつ残念なのは、オレの力不足でまだこの魅力的なキャラを世に出せていないことだ。

 エクボちゃんを愛していたが、それはオレにとって限界(挫折)の象徴でもあった。


 このキャラに拘っているかぎり永遠にプロになることはできない。それはちょっと言いすぎかもしれないが、たぶん本当のことだろう。

 さてさて、別れ話を持ち出してきたかず子(仮)だが、あろうことかエクボちゃんを土産にほしいと言い出した。漫画家としてのオレの暖簾(のれん)を分けてくれというのだ。

 あの……オレまだプロじゃないんですけど。ってゆうか、たとえアマチュアでも自分のメインキャラをほいほい差し出すとか、あり得ないんですけど。

 どうしたものか。断るのは容易いが彼女があっさり退くとも思えない。もし本気でパクるつもりなら隠れてだってやるだろう。

 アマチュア作品の著作権なんて、あってないようなものだ。先に投稿サイトなどにアップするという手もあるが、どれだけの証拠能力がそれにあるかは疑わしい。

 そもそも、かず子(仮)がオレのエクボちゃんを使ってメジャーデビューするなんてこと自体、荒唐無稽なのだ。

 当たり前だがオレの描くエクボちゃんと彼女の描くそれはちがう。だったら……むしろオレより彼女のほうが(メジャーの)望みアリかもしれない。

 ここまで頭の中でごちゃごちゃ考えること約4秒。オレは彼女に返事をした。いいよ、と。


 かくして彼女は風のようにオレから去って行った。カルメンマキか。つい最近までカルメンマキとカルーセル麻紀を混同していたオレです。

 悲しくはなかったが、やはり少し寂しかった。だがいずれこうなることは覚悟していた。アラフォーの漫画家志望が恋愛とか結婚とか、おこがましいのだ。

 逆を言えばオレには漫画(これ)しかないし、これを選んだのだ。

 さあ涙を拭いて原稿用紙に向かおう。泣いてたんかい……それにしても失恋明けの作品がホラーて、ないわ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ