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アイデア・ノート  作者: 大原英一
ホラーな彼女
5/16

前編

 オレの彼女はちょっと変わっている。

 冴えないアラフォーで漫画家志望のオレのような男と、お付き合いをしてくれている時点ですでにだいぶ変わっているのだが。アラフォーはしようがないとしても漫画家志望はイタすぎるだろ。

 そんな美人の彼女だが、ちょっと変わったところがある。極度の怖がりなのだ。

 怖がりといってもビビりとはちがう。ジェットコースターなどは嫌がるオレの手を引っ張ってでも乗ろうとする。

 そんな美人の彼女は怪談が苦手だ。ほとんど嫌悪しているといっていい。

 彼女が元彼と別れた理由が、彼がホラー映画を借りてきたからだったらしい。

 ハードル高すぎだろ……まあ、ホラーにもいろいろあるが。『13日の金曜日』シリーズに代表されるような、いわゆるスプラッタものなら彼女は大丈夫らしい。というか、むしろ好きらしい。

 彼女が苦手とするのは和モノのホラー。心霊、怪奇現象、呪い、日本人形などが特にアウトらしい。

 日本人形はあの黒の御髪(おぐし)がダメだそうで、おなじ理由から有名な貞子さんも、果てはパフュームのかしゆかまでもが怖いのだとか。


 そんなわけで、彼女に怖い話は厳禁である。さいわい日本では怖い話イコール心霊話と相場が決まっているので、殺人鬼やサイコパス、核の脅威、政治家の汚職といった話題はオッケーだ。

 だがしかし。お別れは突然やってきた。

 きっかけは仕事の依頼だった。原稿(マンガ)の依頼である。

 オレは連載まで至らないが、ごくたまーに単発の掲載依頼をもらっている。もちろんこれで食べていくことはできないし、だからこそ漫画家志望なのだ。漫画家死亡かもしれない。

 だがオレにとって原稿依頼は唯一のチャンスだ。未来をつかむためのオンリーロードだ。ゆえにこの依頼がきたときは最優先することにしている。

 アタシよりも? って、並みの彼女なら言うだろう。オレの彼女は並みじゃない。彼女はオレの……クサい言葉だが夢を理解してくれている。


 マンガを描くのは並大抵のことじゃない。それこそ一日中、アホかっていうほど机に向かっていなくてはならない。

 でもオレは独りじゃない。だって彼女がいるから。精神的な面だけじゃなくアシスタントとして、物理的にもオレのマンガを支援してくれている。

 ゆうたら、これがオレらのデートだ。もしオレが彼女にも会わず原稿に没頭していたら、破局はもっと早くに訪れていただろう。

 さて、悲しいがその破局の話をしなくちゃいけない。

 彼女はオレの描くマンガを愛してくれた。彼女自身マンガの手伝いを苦にしなかったし、むしろ喜んでやってくれていた。オレにとってこれ以上ない、最高の女性だった。

 運命とは、なんて残酷なのだろう。依頼された原稿がよりによってホラー漫画だったなんて……。

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