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アイデア・ノート  作者: 大原英一
バベル
3/16

3

 ひととおり部屋をしらべ終えると、オレと須藤さんはふたたびソファに腰を下ろした。

 正直、途方に暮れていた。オレたちが監禁されているのは間違いない。そのまえに誘拐されている。薬物によって眠らされた挙句、ここへ移送されたのだ。

 やはりあのピザ・バーがあやしい。店ぐるみの犯行と思われる。じゃなければ白昼堂々おっさんふたりを拉致れるわけがない。

 とりあえず、この部屋にはきれいなユニットバスがある。囚人より扱いは増しなようだ。空調もばっちりでオレのアパートより快適なくらいだ。

 食料や水の類いは残念ながら見当たらない。オレたちを生かしておくつもりなら、やさしい誘拐犯がそれらも提供してくれるだろう。

 それにしても、おっさんふたりを監禁して犯人はどんな交渉をするつもりだろう。オレはとなりのおっさ……もとい須藤さんを見た。


 寝てるよ。この状況で、よく居眠りができるな……。

「大原くん」

 目を逸らしたと同時に声をかけられたので、オレはビクッとした。起きとったんかい!

 オレが向き直ると彼は突拍子もないことを言い出した。

「バベルの塔って、しってるかい」

「……バビル2世が住んでいる?」

「じゃなくて。創世記のほうの」

「あー、はいはい。あまりにも高い建物を造った人間に対して神がキレたってゆう、あれですね」

「そう、それ」

 先輩は満足そうに頷いた。なんかピザ・バーでも、こんなやり取りがあったぞ?

「いくら高いって言ってもさあ、むかしの人が建てたものだからタカがしれていると思うんだよね。ぶっちゃけサンシャインやスカイツリーのほうが全然高いって」


「そりゃ、まあまあまあ」

「神はなぜキレたんだと思う?」

 須藤さんの意図がまったく読めない。なにか教訓めいた話だろうか。

「やっぱり、文明に酔い痴れる人間への警告とか……」

「教訓的な話じゃない気がする、オレ的には」

「どういうことですか」

 少しの間をおいて先輩はドヤ顔で言った。

「やっぱ高いところでヤると気持ちいいんじゃないかな」

 下ネタかいっ……この状況で? やめろ、これR15付けてないんだから。

「下ネタっすか」

「そうじゃなくてさあ」先輩はなぜかめっちゃ嬉しそうだ。「どんな話にも裏の意味があるんじゃないかなって。高い建物がダメだよってのは、つまり気持ちいいことが隠されているってことに、ならないかな?」

 ならねーよ……いや、どうなんだろう。正直その発想はなかったわ。

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