表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイデア・ノート  作者: 大原英一
バベル
2/16

2

 目が覚めるとそこは見知らぬ部屋で、オレはソファにもたれかかっていた。

 頭を高速回転で状況を整理する。記憶をたぐり寄せる。……そうだ、ピザ・バーだ! オレは先輩の須藤さんとランチ中に意識を失ったのだ。

 見るとおなじソファですぐとなりに須藤さんの姿があった。オレとおなじようにソファにもたれ、まだ眠っているらしい。

 まさか死んでいるんじゃないよね? そう思ったと同時にオレは彼の肩を揺さぶっていた。

「……ん、」

 須藤さんはいつもみたいに目を覚ました。この先輩は職場でもよく居眠りをする。いつもどおりの光景だった、この異常な状況を除けば。

「あれ……ここ、どこ?」

「わかりません。オレたち眠ってしまったみたいです。眠らされたのかも、しれません」

「マジか」言って須藤さんはふらふらと立ち上がった。「とりあえず帰るか……」


 まあまあまあ、それがふつうの選択でしょうよ。でも現在地がわからないと帰りようがないからね?

 それでも動かないことには、はじまらない。オレも先輩にならって腰を上げた。

 ここから出るにはまず部屋のなかをしらべる必要がある。それには部屋をもっと明るくしないとだ。

 照明は最小限に抑えられていて、とにかく暗い。窓から光が差しているということもない。夜だからか、あるいは雨戸がされているのか。おそらく後者だろう、いや両方かもしれない。

 さきに壁際に照明のスイッチを見つけたのは須藤さんだった。彼の調整により部屋は全体が見渡せるほどには明るくなった。だがその光は絶望のはじまりでもあった。

 窓が、この部屋には窓がなかった。ひとつだけ、ソファから見て右手に、たぶんこれ窓なんだろうなーという跡がある。だがそこは頑丈そうな板材によって封鎖されていた。


 つぎはドアだ。ここには計三つのドアがある。

 ソファ正面のそれはあきらかに玄関ぽい。だがそれは鉄扉でドアノブすら付いていない。監禁する気、満々だろ!

 ソファ左手にあるのはふつうのドアで、ちゃんと開いた。そこはユニットバスだった。バス内に窓はなく換気口しかない。

 ソファ後方にあるドアもふつうのタイプだったが、施錠されているらしく開かなかった。構造的に考えるとこの向こうにもうひとつ部屋があるっぽい。推測に過ぎないが。

「閉じ込められたみたいですね……」

 オレは須藤さんに言いながら胸ポケットを確認した。財布もスマホも無事だった。

 スマホは電波が入らずほとんど役に立たなかった。財布も、はたして意味があるだろうか?

 すべては生還しないことにははじまらない。そう思った42歳の夜でした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ