出会い
世の中には冗談や嘘のような人生を送っている奴らがいる。
異世界へ行って世界を救う奴、大勢の美少女に囲まれて学園生活を送っている鈍感な奴、
妹と甘酸っぱい恋をしてる奴・・・
そんな数多くの「主人公」と呼ばれる奴らの陰には、必ず光を浴びることのない奴らがいる。
これは、そんな光を浴びることのない俺たちの物語。
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蝉の声が幾重にも重なりあい、まるで自然界のオーケストラを聴かされているような坂道を登りながら、
平凡な男子高校生である俺、神谷一は今日も頭を抱えていた。
隣では同じクラスの高橋仁、通称タカジンが今まさに俺が思っていたことを口に出してくれた。
「なぁ一。暑すぎて俺はとても学校にたどり着くことができる気がしないんだが。」
そう、最近暑すぎるのだ。たまたま今年の夏が猛暑だとかそういうレベルではなく、
ここ数年毎年平均気温を更新し続けている。
テレビでは専門家が地球温暖化が~とかなんとか力説しているが、
俺たち一般人としては原因を追究するよりさっさとこの現状を打開してくれと願うばかりである。
「こんなに毎日毎日暑いと地球の前に俺たちが死んじまうよ・・・」
二人でそんな愚痴を垂れながら歩いていると、前方から聞きなれた声が聞こえてきた。
「ほらほら、そんなにだらだら歩いてると遅刻しますよ?」
そう言ってこちらへ歩を進めてくるのは、同じクラスで委員長を務めている霧崎京香、通称京香サマである。
どうして様付けなのか?それは・・
「おはよーございますキョーカサマ。珍しいですね、今日はいつもの盛大なご送迎じゃないなんて。」
「えぇ、まぁあんな大げさなもの必要ないといつも言っているのだけれど・・・」
そう、この京香サマ、父親が某携帯会社の社長様という折り紙付きのご令嬢なのだ。
そのうえ才色兼備でなおかつ性格も他人思い、欠点の一つもない、男なら100人中99人が惚れてしまうような、いかにも物語のメインヒロインのような女性である。
俺がラノベ主人公なら、きっと現実ではありえないようなラッキーイベントの連続で
この人といい感じになっているのかもしれない。
だが残念なことにここは現実だし、もし仮にラノベだったとしても俺は主人公ではない。なぜかって?
それは・・・
「うぉーい、みんなおはよーう!!今日も元気にいってみよう!!」
突然俺たちの後ろから蝉の声をかき消すほどでかい声が聞こえてくる。
そう、この男こそが、俺が主人公ではないといつも思わされる原因。
ザ・主人公みたいな男、桐生哲也である。
「おーす哲也。お前は今日も相変わらず元気だなぁ。」
「当り前じゃねぇかタカジン。俺たちは一度しかない人生を生きてるんぜ?
毎日を全力で過ごすのはもはや義務ってやつだ!」
そう、桐生哲也という男は、地でこの熱いキャラをいっているのだ。
そしてそのキャラに見合った運動神経、リーダー性、頭の悪さ、さらに・・
「哲也さん。そんなに元気なのは良いことですが、キチンと宿題はやってきましたか?」
「グッ・・・や、やれるだけのことはやった・・・」
「はぁ、今日も居残りですね・・・仕方ないですから私もお手伝いします。」
「いつも悪いな、京香。わざわざ俺なんかのために。」
「い、いえ、そんなお気を使わなくて結構です。私が好きでやっているだけですから・・//」
「ん?何か言ったか」
「何でもありません!は、早くしないと遅刻しますよ!」
主人公に必ず備わっている「ヒロインに好かれ、かつ鈍感で気付かない」という性質も持っている。
こんなザ・主人公が近くにいると、嫌でも自分が脇役だと思わされる。
まぁ、かといって別に哲也のことを嫌いだとかそんなことは思わない。
こいつは本当にいい奴だし、主人公に相応しい。
「ちくしょう、哲也の奴キョーカサマといい感じになりやがって・・・
欠点とって留年しろ!」
まぁ、そう思ってないやつも中に入るみたいだが・・・(笑)
そんなやり取りをしながら、今日も俺たちはいつもと同じ通学路を歩いて行った。
「えー、今日は皆さんに転校生を紹介します。」
HRは教師のそんな言葉から始まった。
「転校生?まじ?」「初耳だし!」
「かわいいかな?」「イケメンこい!」
様々な声が教室を飛び交う中、俺も隣のタカジンと言葉を交わす。
「転校生か。そんな話あったっけ?」
「いや、聞いたことないしよっぽど急なんじゃないかぁ?」
そんなざわつく教室の中に入ってきた転校生は・・・
「はじめまして。隣町から越してきた西野恵です。気軽にめぐみんって呼んでね。
このクラスにいる神谷一君のお嫁さんです!」
陰に隠れたモブキャラである俺の人生を、滅茶苦茶に荒らしていく嵐のような女だった。
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世の中には冗談や嘘のような人生を送っている奴らがいる。
突然超能力に目覚めてヒロインを救い出す奴、空からヒロインが降ってくる奴、
隣の家に美少女が引っ越してくる奴・・・
そんな数多くの「主人公」と呼ばれる奴らの陰には、必ず光を浴びることのない奴らがいる。
これは、そんな光を浴びることのない俺たちの物語・・・いや、
光を浴びるはずのなかった俺が、光を浴びさせられる物語。
はじめまして。
今回初投稿です。
温かく見守ってください。