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夢から紡ぐ未来への系譜  作者: 馬波良 匠狼
終章 夢の未来図
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5.夢写し

 宇宙から見下ろせば、地上がはっきりと分かるのでは、と思うくらいに晴れた空。

 その空の下にある学校の屋上に二つの影が現れた。

 そしてその影の片方が、胸いっぱいに大きく息を吸い込み、晴れた空に向かって声を轟かせた。


「あいつらうるせぇ!!」


 屋上に響く大きな声を出したのは他でもない。

 黒田である。


「俺こんなに面倒なことしていたとは思わなかった……。本当にごめんなムク……」


 その顔は少し苦悩に歪んでいる。


「俺の方こそすまん。ちょっとここ1ヶ月煽りすぎたかもしれん……」


 逆にムクは少し恥ずかしそうにここ1ヶ月の自身の行いを黒田に謝る。


「逆にお前は一体何をやったんだよ……」

「いや、ただただ普通に過ごしていたら色々と喧嘩を売って来るから、無視し続けて逃げ続けた。それか、『そんなことして楽しい? ねぇ、楽しい??』って言ってただけかな?」

「あぁあ……。そりゃ躍起になるわな……」


 何となく分かっていたが、まさかここまでややこしいことになっているとは黒田も思っていなかったようだ。


「まぁいいか……。とりあえず、あいつらは追っかけてきてないようだな」


 ドア側を振り向き、取り巻きたちが着いてきていないことを確かめる。


「着いてきてもいいんじゃないか?」


 そんな呑気なことを平然と言うのは、当いじめの被害者である。


「あのな、俺が面倒なことになるんだよ……。お前をシメると思っている連中に、俺らが仲良くしていたら、それこそ大反発を食らうんだぞ……?」

「じゃあ、返り討ちだな」

「夢久なぁ……」

「冗談だって。そこまでするほど馬鹿じゃないよ」

「ハースさんに突っかかった時のお前の行動を思うと、心配してしまうけど……。まぁ大丈夫っていうなら、大丈夫か」


 本当に冗談なのか疑わしいが、一先ずすぐに動くことはないようなので、黒田は胸を撫で下ろした。 


「しっかし……」


 改めてムクに向き直る。


「お前とまさかもう一度、こうやって話せる日が来るとはな」


 黒田の声からは嬉しさが滲み出ていた。少し照れてはいるが、しっかりとムクの顔は見ている。


「俺もないと思ってた」


 嘆息をつきながら口を開く。


「まだ、心が追い付いてないけど、これが本当だとしたら……」


 一瞬間を置いて、少しはにかみながら言う。


「本当に夢を見ているようだな」

「何だその矛盾のような言い回し?」

「だってさ、つい1カ月前は考えもしなかったことが起こったんだ」


 思いきり背伸びをし、天に両腕を突き上げる。



「夢としか思えないよ」



 街が一面見渡せるこの屋上の景色を、二人は忘れることはないだろう。

 自分たちが掴み取ったからこそ、素直に見ることができる景色。

 それは未来を予見しているかのようだ。


「んっ?」

「ありゃっ?」


 そんな折、どちらからもぐぅっと知らせる音が聞こえてきたため、ムクは黒田を振り向き、それから二人は静かに笑い合った。


「さてとそれじゃ、飯でも食おうぜ。流石に腹減ったわ。姉貴の弁当も久々だしな」

「そっか、文野さんの手料理だっけ? 愛されてるねぇ……」


 そう言って黒田に近づき、脇腹を小突く。


「うっせ、にやにやすんじゃねぇよ。あ、姉貴がどうしもって言うからさ、し、仕方なく、だ!」

「文野さんも嬉しかったんだろうね、よっぽど」

「い、いつものことだから良いんだよ……」


 黒田は言葉を濁そうと頑張ってはいるが濁らせ切れていないようだ。

 益々照れてしまい、隠すかのように黒田は入口方向へと歩き出した。

 そんな黒田の背中を見つめ、改めてムクは考える。


(人生は捨てたもんじゃないな……)


 深い絶望を知った。


 深く傷つきもした。


 深みにもはまった。


 それでも、人生は何が起こるか分からない。


 自分の数奇な運命に、ムクは少しだけ瞳を閉じて感謝をした。


「夢久、早く食うぞ! もう少しで昼休みも終わっちまうんだから!」


 目を開くと、既に黒田が弁当箱を広げ、食べる準備をしていた。


「マジか!? 次は国語だから、遅刻したらめんどくさいぞ」


 ムクも急いで黒田のそばに駆け寄って座り、自分の分も広げた。


 何気ない日常風景に見えるその場所には、二人にしか分からない、柔らかく、暖かな、そして、特別な空気が大事そうに包んでいた。


                                           第1話 完

 とりあえず、ここで1話が終わりとなりますので、一旦完結させていただきます(加筆修正は行っていきますが……)。

 次はもう少し構想を練ってから書きますね。それまで別の作品をえがきたいと思います。

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