4.戻す日常風景
夢での出来事から戻って現実へ。
どんなことが起こるのか? と言われると、これまた面倒なことがありまして……。
一方の現実の世界。
ムク達の中学校ではいよいよ、黒田が退院してくることとなり、取り巻きたちが浮足立っていた。
『やっとこれで名守を大人しくさせることができる!』
『いない間に散々俺たちを馬鹿にしやがって……!』
『さぁさぁ、思い知るがいいさ!!』
話す話がキナ臭いのは、言うまでもない。
始業の合図があり、担任が教室に入ってくる。その後ろには病院で見た時よりも明らかに顔色が良くなった黒田が、ふらふらとした足取りながら着いてきていた。
「え~、ということで、今日から黒田くんが復活しました。まだ、少し調子が悪いようなので、助けてあげてください」
クラス全体がそれぞれ適当に挨拶をし、黒田がゆっくりと自分の席に歩いていく。
そしてそのままホームルームが終わり、黒田はゆっくりと立ち上がろうとしたその瞬間。
「ねぇねぇ、黒田くん! 入院生活どうだった!?」
「何があったの!? 先生も何も言ってくれなかったから心配したんだよ!」
「黒田! ナースのお姉ちゃんは可愛かったか?」
クラス全体から好奇心の目を向けられる。
「おいっ、ちょっと待てって! そんないっぺんに質問されても困るぞ!」
皆の勢いにたじろぎながら、それでも黒田は答えられるだけのことを答えた。
(お人好しめ……)
そんな感想を心の中で呟くムクであった。
お昼休みになって、ムクはいつも通り教室を出ようとする。と――
「おいおい、どこへ行くんだい、な~も~り~く~ん!」
もう少しで扉を越えられそうだという瞬間に、黒田の取り巻きの一人から足で行き先を防がれた。
「まさか、俺らを無視して行こう……って訳ないよなぁ?」
「ちょいと、邪魔なんだけど?」
「はあああああああああああああああ? 何言っちゃってんの?? 残念ながら、ここは通行止めなんだよなああああああああああああ!」
絶対に通そうとしない意思を感じる、悪意たっぷりの言葉であった。
「お前の行く場所は~、トイレって相場で決まってんだよね~! だ・か・ら、一緒に来いよ!!」
(鬱陶しい連中だ……。黒田が帰って来たから、調子に乗りやがって……!)
とはいったもののムクは反撃する気もないため、とりあえず睨みつけるだけにする。
「何やってんだ、お前らは……?」
すると、ムクの後ろから聞きなれた声が聞こえた。
「! 黒田!!」
「黒田くん!! やっと来てくれた!!!」
取り巻きたちが一斉にその名を口に出す。
ゆっくりとムクが振り返ると、そこにあきれた様子でやり取りを見ている黒田がいた。
「黒田……」
息を吐くかのように名前をムクはその名を口にする。
「黒田くん! こいつの鼻を折ってよ! 黒田くんがいない間に、調子に乗っていたんだから!!」
「そうだそうだ! こんな雑魚は黒田がいれば怖くねぇ!!!」
取り巻きたちは口々に黒田をはやし立てる。
少し沈黙を作り、黒田はようやく重くしていた口を開いた。
「お前らは下がってろ。こいつは俺一人で何とかするから」
その一言に周りは騒がしく歓喜する。
「さっすが黒田くん!」
「いやぁ、やっぱり黒田くんは最強だな!!」
「俺らのヒーロー、く・ろ・だ!!!」
騒ぎは廊下全体に響き渡るほどのものとなる。他のクラスの生徒も何だ何だと気にして、ムクのクラスを見やる。
ムクは少し分が悪くなったと思い、少し身構える。
一方の黒田は落ち着きを払い、取り巻きたちを見渡してさらに答える。
「言っとくけど、お前らは着いてくるなよ。流石に今回ばかりは鬱陶しいからな」
その一言を耳にし、周りのボルテージは最高潮になった。
「おぉっ!! 遂に黒田が名守をめっためたにするのか!?」
「くそ~、俺も見てぇなぁ!!」
「何でついて行っちゃダメなんだよ黒田!!!」
二人を差し置き、色々と推測する取り巻きたちを横目にしつつ。
「夢久。とりあえず、屋上に来い」
「あ、あぁ……」
黒田を先頭に二人は厚くなった人垣をかき分け、屋上へと上がって行った。




