3.心を映す鏡を覗いて
ヒバリ対ムクの壮絶な争いから3週間が過ぎた。
その間でまずムクは、1週間をかけて迷惑をかけた相手に頭を下げて回っていた。
特に鱗やフォックス、神代、仲間として戦ってくれた現生人(特に菱川)には丁寧に対応。
神代とフォックスはあっさりと許したようだ。
鱗は少し疑いの目を向けていたが、フォックスとヒバリの強い説得によって、溜息混じりに納得した。
現生人たちは少し反発したが、菱川がそれを制し「また何かあったら声をかけてください。その時には応えますので!」と力強い返事をしてくれた。
それから、新夢残として迎え入れられた二人は、すぐに仕事を任されることとなる。
ただし、2人で組ませるのではなく、それぞれに教育係をつける形で進め、ムクにはヒバリが、神代には鱗がついた。
とはいったものの、基本的に二組は一緒に行動するため、どっちがどっちの教育係を務めていても問題はない。というよりも、二人で両方を見ているようである。
また、ムクも神代も風貌が少し変わった。
神代は耳と目と鼻に尻尾を取り入れた狼っぽい風貌を選んだ。
ムクはそれほど風貌を変えなかったが、髪を長くして目元を隠し、首元にマフラーを巻いて口元を覆い、どうにか顔を分からなくしている。
その姿を見て全員の一致は……。
(暗殺者みたいだ)
であった。
ただ、二人の風貌に慣れるのには、そうそう時間がかからない。
元々クリム界では珍しくもない格好だからだ。
最初の内は慣れなかったムクと神代も、3日も経てば自分の格好と戦い方に慣れてきた。
「しっかし改めて考えると、俺らの格好ってすげぇのな……」
話は事件解決後に戻る。
一通り手続きをして、仕事の続きを行う4人。とは言っても事件は大方片付けたので、パトロールに切り替え、街を注意深く見渡す。
そんな中、神代は考えていたことを話し始めた。
自分の姿に慣れてはきたものの、どうやら神代は第三者目線で自分を見て話しているようだ。
「まぁでも、色々と便利でしょその姿。選んだ姿の力が宿ることも多いし、何より、現実でばれることも少ないしね」
鱗が姿を変えることのメリットをドヤ顔で語る。
「確かにそうですね。ただ、普段の自分と違うから、やはりクリム界に来ると少し違和感が……」
「もうしばらくは戸惑うかもしれないけど、その内、気にもならなくなるよ」
鱗のあっけらかんとした解答に、ですかねぇ? と口にする神代。
そんな中、ふと疑問に思うことがあった。
「そういえば、ムクもバードも姿は現実と変わらないよな?」
ムクもヒバリも現実とは少し違うものの、元は大きく変えていない。
「それって、大丈夫なのか……?」
それどころか、一瞬でも顔が分かれば現実世界で容易に特定されてしまう。その心配は否めない。
「大丈夫か大丈夫じゃないかって言われると……、危険性はあるんだけど……」
と、ヒバリが前置きして答える。
「それでも、自分の姿を変えたくなかったよね」
「何で?」
「だって、見つけてほしいと思った人がいたし、今も私の姿を見てほしいって人がいるからね……」
「な、なるほどな……」
さらっと惚気を言ってのけたヒバリに、神代はその言葉を出すのに精いっぱいだった。
「じ、じゃあムクは?」
「えっ? 俺?」
唐突に振られたムク、しばし青い空を見上げて考える。
「まぁ、別に変えたくなかったからかな? 自分は自分って思いたかったし」
「お前はお前でなかなかに重たい答えを持ってんのな……」
「そう? 普通だと思っているけどね」
ムクもさらっと普通と言ってのける。
(この二人、揃いも揃ってとんでもないことを平然と……)
片や自らの恋路のために。
片や今までの自分を否定しないために。
それぞれの考え方を聞いた神代は、今後を憂いつつ、それもこの二人の良さだと思い、また周囲を注意深く見渡すことにした。
「だったら逆に、神代は何でそんな格好にしているんだ?」
その疑問がムクから出るのも当然である。自分だけ聞かれても不公平と思い、逆に尋ねた。
「あぁ、俺は俺でこの姿が戒めで、今後も大事にしたいからと思ったからだよ」
「お前も中々に凄いことを考えていると思うけどなぁ……」
ムクも神代の発言に感嘆した。




