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10.繋ぎ通じ紡ぐ未来

 この章はこれで終わりとなります。

 とりあえず、色々とめちゃくちゃになりそうでしたが、まとめきったとは思います……(それでも無理くりは否めません)。

 ヒバリは一瞬、その存在を認めたくはなくて思考回路を停止させたが、関係ないと言わんばかりに脳が再び驚きを隠せなくなってしまう。


「な、なななな、何でムクが……、ムクがここにい、いるの……!?」


 それがあまりにも唐突過ぎたため、あたふたと焦り始めるヒバリ。

 そんなことはお構いなくムクは、ヒバリに近づいていく。


「ここまでの案内は大丈夫だったかい?」


 フォックスが思いついたように確認を取る。


「はい、大丈夫です。ありがとうございました」


 それにムクは振り向きしっかり対応する。ヒバリに出会えたことに対する喜びなのか、それともフォックスのやさしさに触れたことへ対する感謝の顔なのか判断はつかないが、晴れ晴れとした良い笑顔だ。


「じゃあ、私はこれで。後は任せたよ」


「分かりました」


 そう言って、フォックスは川辺を後にした。去って行った方向に一礼をし、少ししてからヒバリに向き直る。


「ごめんバード、遅くなっちゃった。フォックスさん足早かったから……」


 一応、どうして遅れて来ることになったのか説明はしているものの、会いたかった女の子は顔が引きつり、笑顔どころか恐怖に陥っているのを見て、ムクは少し悩んだ。

 ただし、枕詞には顔を真っ赤にさせてとくるが……。


「えっと……。とりあえず、大丈夫?」


「な、何が!? わたぁしは、だぁいじょおぶぅだから!!!!」


 絶対大丈夫じゃない声が返ってきた。どう接していいか、ムクは分からなくなってくる。


「もう敵同士じゃないんだから、そんなに緊張しなくて……」


「全然緊張していないんだからね!!!」


 明らかに声が不自然に張っており、説得力は皆無である。


「そ、そんなことより、私になんかよう? どうせ、お父さんから連れ戻してって頼まれたんでしょ?」


「うん、それもそうなんだけどさ……」


 少し恥ずかしそうに頬をかきながら、ムクはヒバリへの言葉を考えた。


「あの……。ご、ごめんね。色々とひどい事しちゃって……」


 ぎりぎり絞り出したが、謝る言葉しか思いつかなかったようだ。


「何で今さら謝るの? 別にあのくらい、日常茶飯事で起こっているなかの一つの事件だったってだけだからね」


 そんなことを言ってきたムクに対し少しそっぽを向いたが、本当はあそこまで熱を帯びて事件に没頭したのは初めての事だった。

 ただ、そのようなことを言えるはずもないので、何てことないように言うしかないのである。


「それより、帰るんでしょ? 行こう行こう」


 そうして元来た道へとくるりとヒバリは体を返し、歩こうとした。


「待って!」


 そんなヒバリの右手を、ムクは勢いよく両手で掴む。


「きゃあっ!!」


 急に捕まれ思わず甲高い声を上げてしまう。


「きゅ、急にどうしたの!?」


 ビックリはしたものの、その手が嫌がり振り払うことはない。


「もう一つ、バードに謝らなきゃいけないことがあるんだ」


「な、何?」


 不機嫌そうにムクを見つめるヒバリ。ムクはその顔をしっかりと目に焼き付け、ヒバリの瞳の奥まで見つめ、しっかりとした言葉でこう紡いだ。



「ヒバリ、待たせてごめんね」



 一瞬、風が強く吹く。

 その瞬間に、二人の間にあった重たい空気は全て、空の彼方へと吹き飛ばされていった。



「また、会えて嬉しいよ」



 それが本心であることはムクは当然のことではあるが、ヒバリにも伝わった。


「……ぅん」


 言葉が重く胸に響いた瞬間、ヒバリの目から大粒の涙がこぼれ落ちた。拭っても拭っても、その粒が止まることはない。


「うん、遅いよ……、馬鹿ムク……」


 ここまでの道のりは本当に遠かった。


 ムクと会えるまでの道のりもそうだが、心通わせるまでの道のりも海の向こうの国ほど遠かったように思える。


 ムクも目元がじんわりと温かくなる。


「本当に色々と心配を掛けてしまったね。でも、待っていてくれて嬉しかった……」


「私も……またムクに会えて……嬉しいよ……」


 お互いにやっと気持ちが通じた。

 思いが止まらなくなり、ヒバリはいつかの時と同じようにムクの胸に顔を埋め腕を回す。


「お帰りなさい……、馬鹿ムク……」


 戸惑いかけたがムクはしっかりと抱きしめる。


 その温もりは夢の中とは思えないほどに温かい。


 この温もりを二度と離したくはないと、ムクはここに決意を固めた。


「ただいま、ヒバリ……」


 この時間だけで、それだけで、二人は満足だった。


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