6.引き寄せた風
ヒバリ対ムクの互いの想いを乗せた戦いの決着は……。
ヒバリはフッと苦々しく微笑み、ムクへ向けて睨みを利かせる。
「風の加護よ!! あの愚か者へ、私達の本気の戦いを見せよう!! 私の周囲を風の渦で覆いなさい!!!」
ヒバリは自分の周囲に竜巻を発生させ、フェイントを入れるようにジグザグにムクへと迫っていく。
「ようやくお出ましかい? 随分と待たせてくれた!」
ムクは待っていたかのように、それを迎え撃つ。
「火の加護よ! 我が体を再び炎で覆い尽くせ!!」
ムクは一直線に風の渦巻くところへと飛び込み、ヒバリはそれを真正面から受け止めた。
拳が互いにぶつかる。
「はあっ!!」
「おらっ!!」
今度は互いの力が相殺され、両者ともに吹っ飛んでしまう。ヒバリは慣れているため、片膝を着いて体勢を立て直したが、ムクは地面を転がっていた。
「隙だらけ!」
そう言ってヒバリは身をよじる。
「風の加護よ! その身を圧し、唸る刃となれ!!」
そう唱えると、ヒバリは指を閉じ刀の様に掌をとがらせ、ムクに向かって一薙ぎした。
「くっ……、はぁっ!? 何だあれは!!?」
少しかかって体勢を立て直したムクは、その攻撃を寸でのところで避けきる。
「ちょっ! お前卑怯じゃねえか!?」
「別に卑怯じゃないよ! カマイタチって聞いたことない? 風を使うんだから、こういった使い方ぐらいは覚えるよ!!」
若干怒気混じりでヒバリが反論し、両腕を使い連続してカマイタチを繰り出してく。
「ここら辺は経験の差か……! なら、力づくでねじ伏せるしかないようだな!!」
ムクは一直線にヒバリのところへ突っ込んでいく。距離は25mほどだったが、ほんの1秒ほどで懐へ飛び込み、炎を纏った拳を放つ。
ヒバリは腕をクロスさせて、その攻撃を軽減させる。
「さ、さてどうだろうね! ここでの力は男女共に互角だから、どうなるか分からないよ!!」
ヒバリはそうは言いつつも、内心は動揺していた。まさか脱兎の如き速さで突っ込んでくるとは思わず、とっさに取った行動だったからだ。
(強いのは分かっていたけど、フィジカルが良いから先手を取られる)
冷静に分析するが、中々攻撃の糸口が見つけられない。
(後手後手になりそうね……)
もどかしさをヒバリは感じた。
「まだまだ行くぜ!!」
考えているうちにムクがまた炎で拳を覆い、インファイトで攻めてくる。
「そう簡単にやられないよ!!! 風の加護よ! 我の前に隔たる壁を築け!!」
ヒバリは風の障壁を利用しつつ、両手でムクの拳をいなす。
(今の状況が最大のチャンスかも)
拳の応酬に何とか対応しつつ、ヒバリは一瞬のスキを見出そうと必死に視線を動かし、ムクへの反撃の隙を伺う。
互いの顔にはここまでLDMを使ってきた影響か、疲労の色が濃く出ている。
こうなると一瞬で片が付いてしまうのは両者ともに分かっていた。だからこそ、ヒバリもムクも気を抜けないでいる。
「ムクうううううううううううううううう!!」
「ヒバリいいいいいいいいいいいいいいい!!」
自分を鼓舞する声が、呼び合う声が、広場を超え呼応する。
「っ……!」
少し苦悶に喘いだ声がムクの口から洩れた瞬間、右腕の速度が落ちる。
それをヒバリは見逃さなかった。
「そこだっ!!!!!」
ヒバリは咄嗟にムクの右腕を掴む。そのまま自分の方に引き寄せ、ムクの体勢を崩した。
「うおっ!?」
ムクもすぐさま踏ん張ろうとしたが、あまりの素早い対応に着いていけなかった。
ヒバリは握っていた手を離す。更に、自身の体をムクの胸元に低く潜り込ませ、鳩尾より少し下に右手を置く。
「風の加護よ! 全ての暗雲を吹き飛ばす、強き旋風を……巻き起こせえええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!」
魂から振り絞った声と共に、風の塊……いや、風の柱をムクに叩き付けた。
「がはっ……!!」
ムクは為すすべなく、その攻撃を腹で受け止めるしかなかった。そして、広場の中央から藪の方へと、けたたましい音と共にふっ飛んだ。




