表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢から紡ぐ未来への系譜  作者: 馬波良 匠狼
七夢 意地の衝突
49/66

5.募る想いのぶつける先

「ムク本気なの? 私だってこの6年間、何もしていない訳じゃなんだよ。それなりに戦いはこなしてきたし、あなたに勝つ自信だってあるんだよ?」

「そんなことはどうでもいいし、もしできなかったら君に止める手段はなくなるはずだ。何度だって返り討ちに合わせられると分かるからね。だから経験値は関係ないよ」

 その言葉にヒバリは思わず息が詰まる。しかしそれを起こさせないためにも、ヒバリは気を引き締めてまたムクを見る。

「じゃあ、私が勝ったらこっちの言うことを聞いて」

 ヒバリはここで一呼吸を置いた。

「もし約束できなかったら、決闘は無しで、今周囲にいる仲間たちにあなたを……、こ、殺してでもいいから捕まえてと指示を出す」

 ヒバリの言葉にムクは頷く。

「いいぜ。それなら、俺だって条件がある」

 一瞬の間を置き、それからゆっくりとはっきりと、ムクは発する。

「俺が勝ったら二度と俺の計画の邪魔をするな。良いな?」

 ムクの言葉にヒバリは顔をしかめて頷く。

(仕方ない。対等条件ならこれぐらいだろうからね……)

「分かった……。その代わり異論は認めないからね」

「それぐらいの覚悟を持って戦うんだ。当然だろ?」

「そうだね……。じゃあ、3秒間をおいてから、それからは手加減なしね」

「了解だ」

 それから互いに目を瞑り、3秒数える。

 1……、

 2……、

 3……、

 そして、互いの目線が交錯した瞬間。


「はぁっ!」

「ふんっ!」


 互いにLDMのこもった蹴りを繰り出した。

 途端、周囲に熱気を伴った暴風が吹き荒ぶ。その蹴りには互いに殺意があり、この決闘が本気であることが窺えた。

「流石に、一発じゃ仕留めさせてくれないよね!」

「そらそうだ! そう簡単にほいほいとやられてたまるかよ!」

 一旦二人は距離を取り、相手の様子を観察し、次にどうするかを考える。

 この1週間とは違う、互いが互いを思いやらない戦い。

 しかし、互いに思うところがあって傷つけあう戦い。

 だからこそ、負けることができない状況なのだ。

 一瞬の静寂が二人の間に流れる。

(先に仕掛けてみよう!)

「風の加護よ! 我が拳から唸る暴風を繰り出せ!」

 ヒバリの拳から風の渦が一直線にムクへ向かって飛んでいく。

「ヒバリの得意攻撃かな? 確かにそれはいいけど、芸がなさすぎだな!!」

 それをムクは直前まで引き付け、当たると思われた瞬間、左の方向へと飛ぶ。風は直線状の地面を少しえぐり消えただけとなった。

(もうっ! 動体視力良すぎ!)

 ヒバリは少しだけ嫉妬してしまうが、そんなことを考えている暇はない。

「今度はこっちから行くぞ!」

 強気の声が飛んできたからだ。

「えぇっと……、ひ、火の加護よ! 我の体を包み……た、給え!」

(えっ!?)

 ムクが詠唱をしたことにヒバリは驚く。そして詠唱は成功し、ムクの周りを赤い炎が包む。

「おぉっ!! 成功した!!!」

 そして飛び跳ねるようにしてこちらへと迫り、拳を繰り出してきた。

(ちょっと! いつの間に詠唱を……)

「余り驚いていると、ボコボコにするぞ!!」

「わ、分かってるよ!!」

 慌てて意識をムクの攻撃に戻したヒバリは、寸でのところでムクの攻撃をいなす。炎を纏ったその攻撃を、無詠唱の風の加護で体を包みながら打ち終わるまで躱し切った。

「まさか、詠唱を覚えているとは……、ムク、やるねぇ」

「はんっ。褒められたところで、今は嬉しくないな」

 今の言葉にヒバリは少し違和感を覚えた。

「”今は”ってことは、もしかして違ったら嬉しいの?」

 そう少し茶化してみると、ムクの顔が朱を帯びた。

「う、ううっ、うるさい!! そんなことないよ!!! 馬鹿っ……!」

 怒りなのか、恥ずかしさなのか、はたまた両方なのか。それらを誤魔化すように一直線に飛び込んでくるムク。

(ムクの本心が少し見えたかも!)

 ヒバリの心臓は戦いの高揚感と共に、ムクの心の内が分かったことで飛び跳ねる。

「あまり調子に乗るんじゃねえ! そんな余裕かましていると痛い目見るぞ! 火の加護よ! 我の望みに応え、この右腕から炎の一撃を撃て!」

(はっ、今は戦いの真っ最中だった!)

 喜び跳ねた心を静め、再びムクの動きへと心と共に目を向ける。

「風の加護よ! 我の右腕に目の前にある障害を薙ぎ払う風を起こせ!」

 詠唱を終え一瞬で迫ってきた炎の塊を右へ薙ぎ払う。

(危ない危ない……、集中しなきゃ……)

 しかし、ヒバリはなかなか集中力が続かずに苦労している。本気では戦っているのだが、いまいち攻撃が上手く決まらない。

 理由は簡単。

――話し合いで終わりたい……。できることなら、戦いたくない――

 その気持ちが根底にあるからだ。無意識だが、それがヒバリの攻撃に迷いを生じさせている。

「はん! この世界でも指折りの強さを誇るバードでも、俺相手だと腰が抜けて戦えないか? 所詮、治安統括局も俺の相手ではなさそうだな!!」

 突如として、ムクがヒバリを煽り始めた。

「何ですって!」

「そりゃそうも思うだろうよ!」

 ムクのその言葉には怒気が混じっていた。そして目が吊り上がる。

「ヒバリ! お前もっと集中しろ!! 本気でないお前に勝ったって、俺はちっとも嬉しくねぇんだからよ!!!」

 まるで願望のような声でムクはヒバリを叱責した。

「ムク……」

 そして、その言葉がヒバリの戦闘スイッチをしっかりとONへと押し上げた。

(そうだ! 私はムクに戻って欲しいんだ!! こんなところで負けるわけにはいかないよね!!!)

 そこにある瞳には、すでに迷いが消え去っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ