2.心に似た世界
気づくと見慣れた、そして見覚えのある交差点に立っていた。それは、六年ぶりに来たときに降り立った場所だからだ。
(今日は曇りか)
ここ一週間以上は晴れが続いていたため、というよりも晴れの日しか知らなかったため、ムクはクリム界で訪れた初めての曇り空に珍しさを覚えた。
(周りの連中は……現生人ばかりみたいだな)
ムクは自然と辺りを見回すようになっていた。以前に交差点で待ち伏せされて、それを必死に掻い潜って逃げたことがあるからだ。用心深くなるのも当然である。
そのおかげか違和感にも気づいた。
(なんで、見張っている連中がいないんだ?)
いつもであれば見張りがいて、ムクが来次第ヒバリに連絡がいくのだが、今日は珍しくいない。思わず首を傾げる。
(諦めてくれたんなら、それでいいんだけど)
ムクはそう思うことにして、菱川たちを探すことにした。
数分後、ムクは菱川を川沿いの草むらで見つけた。しかし、今日は取り巻きたちがおらず、菱川本人も体育座りをして、うわの空で過ごしていた。
「よう菱川。どうしたんだ?」
「あっ、ムクさん……」
菱川は振り返り、主の顔を視認する。ムクは菱川の隣まで歩みを進め止まり、流れる川を見つめた。
立ち止まって一息ついたところを確認してから菱川は、本日のクリム界の天気みたいな笑顔で話を進めた。
「いやぁ、何と言いますか、曇りの日や雨の日は何故か元気が出ないんですよねぇ」
「何だ? 風邪でも引いたか?」
「いいえ元気は元気なんですけど、何と言いますか、心に元気がないんですよねぇ」
同じような言葉を使うということは、よほど元気が出ないのだろう。ムクも首を傾げながら菱川を見ていた。そうして決断する。
「菱川、今日は休め。他の奴らで対応するからさ」
「いえ。それではムクさんの野望を叶えられないじゃないですか。俺が動かなければ……」
そう言うものの、菱川からは生気が感じられない。
「却下する。今日は休め。これは命令だからな」
心がどこか遠くにあるような雰囲気があると悟り、ムクは少し語尾を強めて菱川に伝えた。
「すみません……。じゃあ、そうさせてもらいます」
その顔に、菱川は悲しそうな顔をして答える。ムクは柄にもなく菱川の頭に手を置いて、踵を返しその場を後にした。
それから2時間後。
集まったメンバーの中に現生人は一人も入っていなかった。それどころか、夢残ですら5人しか集まっていない。
元々、夢残はそれくらいしかいないのだが……。
「なんでこんなにも活気がないんだ?」
周囲を見渡してそんなことを思わず口にする。歩いているどの現生人も顔に元気が見えないので不思議に感じたようだ。それについて、夢残の一人が答えを出す。
「どうしてこうなるのかは分かりませんが、天気によって現生人たちは気分が変化するみたいですよ」
「へぇ、現生人たちも大変なんだなぁ」
興味はなかったが答えてくれたため、ムクはそっけないが返答する。その流れでムクは今日の話を始める。
「さて、今日の活動だけど、まず、お前らの中にヒバ……じゃねぇ、バードの動向が分かるやつはいるか?」
その言葉に5人がそれぞれ顔を見合わせるが、その様子では誰も知らないようだ。というよりも、何故そんなことを言い出したのか分からないようである。
「了解。ありがとう」
ムクはそう言って、一旦全員の思考を打ち切った。そして、提案をする。
「なら、まずはバードを探してほしいんだ」




