表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢から紡ぐ未来への系譜  作者: 馬波良 匠狼
四夢 その代償
27/66

4.思わぬ提案

 まだ少し遠いが確実にこちらへと近づいてくる。忍ぶつもりは微塵もない様だ。

 そっと扉を開けて確認する。姿は見えないが真正面から来ているのは間違いなかった。目の前には落とし穴を掘ってあるため、もし気づかなければ足止めにはなるだろう。ムクは右手に力を集中させていつでも攻撃できる態勢を整える。

 足音の主が現れた。少し薄暗く、ぼやけた輪郭のみが女であると告げていた。そして、頭頂部より右寄りに結ばれた特徴的な髪飾りが、彼女の正体を知らせている。

 彼女――ヒバリは何の躊躇いもなく小屋に近づいている。罠が張ってあるとも待ち伏せされているとも思わず、ただひたすら真っ直ぐこちらへと歩みを進める。自信があるのか、はたまた単なる馬鹿なのか、ムクは彼女の意図を図りかねた。

「きゃっ!!」

 そして案の定、彼女はムク達の掘った穴に落ちてしまう。あまりにも切羽詰まった悲鳴を上げられてしまったため、一瞬攻撃しようか迷ったが、ムクは考えを振り払いドアを開け放ち、右手に溜めておいた炎を穴に投げ入れた。炎は致命傷にならない程度にしており、死ぬことはないだろうと予測はつけている。一時でも足止めできればいい位のものだったのだろう。

 しかしそれは甘い予想だった。

 内部を確認しようとした途端、とてつもない風圧がムクを襲い、身動きが取れなくなった。思わず両腕で顔を庇い隙間から景色を覗くと、穴の中から人影が飛び出し、ムクに目掛けて風を纏った拳を振りかざす。

 避け切れないと判断したムクは、庇っていた両腕を前に突き出し、炎の薄い膜を張ってこの攻撃をしのいだ。しかし、風の勢いに乗ったヒバリの攻撃の方が圧倒的に強く、抑えきれないと悟り、後ろに倒れるようにしてこの攻撃をいなす。

 すかさずヒバリは、倒れたムク目掛けて踵落としを繰り出した。間一髪のところで右へと転がり、この攻撃を避ける。

 ムクも負けじと、転がった先で素早く起き上がり、右手を横薙ぎに払って炎の弾を飛ばした。しかし弾は、ヒバリを避けて飛んでいく。その後、もう二、三発を放ったが全て当たらず避けていってしまった。ムクの顔に驚きと悔しさが滲み出る。

(飛ばし技がダメなら、物理で勝負!)

 拳を握り低い体制のまま、ヒバリの懐へパンチを放った。受け止めても下に手を置き支点とし、回し蹴りを食らわせる算段で攻撃する。

 ところがヒバリは直前で右方向に避け、脚を差し出した。勢い余ったムクは自身の身体を止められず、その脚に足元をすくわれ、前方に転がってしまう。

 五mほど転がったところで体を起こした。そして振り返ると――

 そこに彼女はいなかった。

 呆気に囚われていると、彼女が立っていた草むらに落ちている一枚の紙に気が付く。拾い上げると、そこにはこんな文が書かれてあった。


『今回来たのはあなたを捕まえるためじゃなく

 あなたに知ってもらいたい事実があり

 その話をするために来ました

 しかし、あなたが邪魔してくるのであれば、

 この紙を置いて行きます

 明日の昼十一時 海のみえる丘公園で待ってます

 現実世界でまたお会いしましょう


                       現野雲雀   』


(どういうことだ?)

 自分の実名を晒してまで――知っているからいいのだろうが――何故このような紙を寄越したのか、ムクには理解ができなかった。

 ただ分かることは、この公園の場所は現実世界で、自分の住んでいる街にある公園だということと、そこに現実のヒバリが来るということであった。

(胡散臭いな……)

 そう思うのは当然であろう。誰でもそうだが、こんなものを突然渡されて、信用できるはずがない。疑りの目を持って見るのが当然のことと言えよう。

 ムクはヒバリからもらった紙を折り畳み、そして未だ火の残る穴の中に放り込んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ