1.初発点
自作小説2作目です。よろしくお願いします。
因みに、初発点と書いて「しょはつてん」と読みます。意味は「事の発端、初め」という意味ですね(造語です)。
季節は冬。
と言ったものの、太陽が心地よい暖かさを地上に注ぎ、敷いてある少し黄色味を帯びた白の石畳がその温もりを反射して、足元からも熱を程よく送っている。
更に人混みのせいで春の陽気に感じる雑踏の中、一人の少年がその地に立っていた。
(うわぁ、なんだろうここ!!)
まだ小学1年生ぐらいだろう。身長は120cmあるかないか位で、体系は少し細めである。
何故こんな場所に少年が1人立っているのかいささか疑問ではある。この状況を親が放っておくはずもなく、手をしっかりと繋いでいるものだが、生憎彼には親がいない。
否、これは正確な表現ではない。
ここでは彼が親と呼べる存在はいないのだ。
しかし、そんなことは全く気にせず、彼は好奇心の向くまま歩き始めた。
名は名守夢久。日本に住んでいるごく普通の小学一年生である。
さっきまでは、という話にはなるが。
ここに来るのは初めてで少し戸惑ったものの、生来の自由な行動力と探求心の強い気質はすぐに興味へと変わり、そして好奇心へと変わった。
(こんなの見たことない! なんておおきい街なんだろう)
しかし、彼は別にこういう場所に来たことが無かった訳ではない。年に一、二回は都会の方へ赴くし、年少の頃ではあるが東京へも行っている。そうではなく、この世界でこれ程の規模を持つ街を見たことが無いのである。というのも、
(僕、寝ていたはずなんだけど……。どうしちゃったんだろう?)
寝ていたということは、ここは夢の中の世界である。彼の見る夢はかなりメルヘンチックなものが多いのだが、今回は何故か現実味を帯びていたので更に驚いたという訳だ。
夢久はその気持ちの赴くまま、探索をすることにした。
見れば見るほど現実に近く、かといって現実ばかりかというとそういう訳ではなく、
(変な人達が多いなぁ)
見渡してみると、日本の現風景と一緒なのだが、歩き回る人々はどう見ても人とは違う者が混じっている。普通の人達の中に、猫耳や狐耳等を生やした者、はたまた動物の顔をした者もいれば、なんだか悪魔のような人もいる。一体どういうことなんだ? と言いたくなる所ではあるが、夢久は臆せずキョロキョロと辺りを見て回る。
しばらく自由気ままに歩き回り、少し疲れたため休憩がてら近くのベンチに座った。初めて来た興奮が未だに冷めない。それほどの衝撃だった。
そんな風にぼーっとしていると、
「ねぇ、何しているの?」
突然声を掛けられた。ふと声の方向を見てみる。
そこには同じ歳ぐらいの女の子が、夢久を下から覗き込むような体勢で立っていた。かわいらしい水色のワンピースに、短髪の少し茶色がかった癖っ毛にはお洒落なのだろう、頭頂部より右寄りに水色の丸い二つの玉を付けた髪留めが結んであった。
「かわいい服を着ているね」
対して夢久の方は長袖の赤白ボーダーに、茶色に近い黄銅色の短パンをはいていた。何とも地味だと、自分では感じているらしい。
「そんなことないよ。私もあるものを着ているだけだから」
少女は微笑みながらそんなことを返した。その顔に思わず夢久はドキリとする。そのせいか、返答が多少しどろもどろになってしまった。
「あぁ、あっ、えっとぉ……。ぼ、僕はその、歩いて疲れちゃったから、休んでただけだよ」
「ふ~ん。私はお父さん達の仕事が終わるまで暇なんだ」
そう言いながらいそいそと夢久の隣に座ってきた。あまり女の子と遊ぶ機会がない初心な少年には、隣に座られるだけでも緊張してしまうのである。
「だから、仕事が終わるまで遊ばない? 一人だと飽きちゃって」
こういったお誘いは変に彼の緊張を高めてしまった。同時にムク自身も一人でいるのは飽きてきていたため、このお誘いは願ったり叶ったりだったりする。
「う、うんっ、良いよぉ」
返事をしたものの声が裏返ってしまい、恥ずかしさのあまり下を向いてしまう。そんな彼を見て少女はまたもにっこりと微笑み、
「じゃあ、あっちへ行こう。面白いものがあるから」
そう言って夢久の手を引き、指さす方向へと走っていった。
ちょいと変更してます!!