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2.治安統括局へ

 さて、眠りについたムクは再びクリム界へと戻ってきた。

 今回は自分の野望を叶えるという目標を立ててきたので嫌そうな顔はせずに、どちらかというとこっちの世界に早く行きたくて仕方がなかった。

 今度はどこかの裏路地に降り立っていた。周りはビルに囲まれ、少しじめっとした空気を感じる。しかし両サイドからは光が見えているため、大通りに面した路地なのだろうと推測した。

(さぁ、どっちに行くか)

 どちらも見やり、人通りが少なさそうな右へ進むことにする。表通りに出ると昨日来たところと同じ景色が目の前に広がる。

(もしかして、この世界での行動範囲は限られてんのか?)

 まぁ、そんなものかと納得したムクは周囲を見渡し、昨日仲間にした連中がいないか探し始めた。すると、右手から見知った一団がやってくるのが分かった。早速、近づく。

「よう、覚えているか?」

 その相手は中村このみ――もとい菱川だった。後ろには菱川の下についていた連中も一緒にいる。近づいて来る段階から菱川はその姿を認めて少し怯えたが、観念したのかしっかりと向き、そして膝を折る。

「ムクさん、昨日は置いて逃げてしまい、本当に申し訳ありませんでした……」

 意外にも律義に謝ってきたため、ムクは少し困惑した。すると周囲の視線が痛いほどに刺さったため、

「良いんだよ。それよりも顔を上げて、早く立ちな。服が汚れるだろ?」

 違う理由を付けて立たせることにした。それに菱川は従い、立ち上がる。

「ま、怪我がなくてよかった。俺もあの時、周りへの注意を怠ったからな。お互い様だし、逃げてくれて助かったよ」

 そう言って菱川の肩を二回叩く。その動作と心遣いに菱川は恐怖心で従っていた気持ちから、畏敬の念を込めて従う気持ちへと変化した。

「お心遣い本当に感謝します」

 今度は膝を折ることはなかったが、深々とお辞儀をする。それもムクにとっては恥ずかしかったが、同時に人がこうやって従ってくれることと感謝の念を示してくれることに喜びを感じていた。今まで蔑まれてきた反動でもあろう。

「そういえば菱川、昨日女王の場所は知らないって言っていたよな?」

 しかし、ムクはそんな感傷に長くは浸らず、すぐに顔を引き締めて菱川に質問する。

「そうですね。俺には場所どころか名前も分からないのです。お役に立てず申し訳ありません」

 すかさず菱川は、詫びの言葉と共に自分の把握している情報を伝えた。

「いや、そこについてはまぁ良いんだ。それよりも……」

「?」

 菱川が真意を見抜けずにいると、少し周りを見渡しムクは口を開いた。

「誰か知ってそうな奴はいないか?」

 それを聞いて納得したようで、菱川は少し考え込む。そして、一つの答えを導き出した。

「それであれば、治安統括局の連中に聞くのが一番かもしれませんね」

「治安統括局?」

 菱川の予想通りムクは治安統括局を知らなかった。その為、まずは治安統括局のことを、それからガーディアンについても説明した。

(そう言えば、ヒバリも菱川達からそう呼ばれていたな)

 昨日の菱川達の反応をムクは忘れていない。怯えた目と敵わないと悟った表情。それは圧倒的な力を持っているからでもあろうが、その権力の強さも相まっているに違いないと考えていた。

「ということは、そこの奴らに聞けば何か分かるかもしれないのか」

「はい。まぁ、憶測になってしまいますが……」

 菱川はそう言葉を締め括った。その情報を聞き、ムクは考察を始めた。

(ただ、そこにはヒバリがいるから、見つかると間違いなく捕まるよなぁ……)

 見つけ次第恐らく拘束してくるであろう相手の姿を思い出し、ムクは溜息をついた。大変な相手に目をつけられたことが、その場所に赴く足を重くする。

「ムクさん、とりあえず俺がそこまで案内しましょうか? 見つからないようなルートを選びますので」

 その様子を見ていた菱川はそう提案した。ムクは柄にもなく顎を擦りながら逡巡する。

 それから顔を上げて菱川を見た。まだ少し恐怖があるのか、一瞬ビクつく。

「それなら、お願いしよう。まずは行ってみないと分からんしな」

 その言葉を聞き、菱川はほっと胸を撫で下ろした。

「では、参りましょうか。あっ、みんなは今日のところはもう解散ということで」

 うぃーすという言葉と共に、取り巻き達が解散する。そして残された二人は治安統括局へ向けて足を運ぶのであった。


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