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夢から紡ぐ未来への系譜  作者: 馬波良 匠狼
二夢 邂逅と後悔
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6.予期せぬ事態

 一方のヒバリは焦っていた。

(今の攻撃でビビってくれたらいいのに、なんでそんな立ち上がるの?)

 自分の攻撃は確実に効いたはず。しかし、それに怯まず向かってくるその根性は昔のムクのままである。それが裏目に出てしまっているため、ポーカーフェイスを装ってはいるもののヒバリの内心は戸惑っていた。

「どうしたヒバリ。いやバードさん。俺はこんな攻撃如きでは怯むことはないぞ」

 すかさずムクはヒバリを挑発する。ヒバリは心で舌打ちをし、再び攻撃を開始する。

「風の加護よ! 再び我が呼応に応えよ!」

 今度は自らの腕に乱気流を作り、それをムクに向けて放つ。この攻撃は威力がないため、ムクは簡単に避ける。しかしこの攻撃の神髄はそこにはなかった。

「避けられたと思った?」

 微笑を作ったヒバリは腕を動かし、逃げたムクへと気流をぶつけにいく。スピードが遅い代わりに腕と一緒に動かすことができるため、初見の相手であれば仕留めることが可能な技だ。

「くそ! 何なんだよその力は! 卑怯だぞ!!」

 ムクは苛立っていた。自分の知らない力を使われ、そして、良いように攻撃されていることに。

 心に不満が募る。

 このままでは負けを認めることになると感じ、ムクは必死になって攻撃を繰り出す。すると――

 そのもがきが通じたのかムクの腕から炎が飛び出した。

「うぉっ! この炎はなんだ⁉」

 その勢いにより、気流は届くことなく空中で霧散した。ヒバリの顔に動揺が走った。

「嘘⁉ こんな時にLDMが発動するなんて……」

 LDMとは「Left Dreamer`s Magic」の略であり、夢残だけが使える魔術みたいなものだ。それぞれが水・火・土・雷・風のどれかの力を使うことができ、「加護」として夢残に力をもたらすのである。通常は詠唱を行ってから発動させるのだが、破棄して使うことも可能となっている。そして、ヒバリは風の加護を、ムクは火の加護を受けて使用している。

 捕捉すると、ムクが使っていた「真名が分かる力」もこのLDMの一部である。

 このタイミングで目覚めたことは、ヒバリにとって予想外の事態であった。しかしこちらが弱みを見せるわけにもいかないと思い、

「風の加護よ! 再び我が呼応に答えよ!」

 続けざまに技を出す。

「感覚が分かれば君の攻撃は効かないよ!」

 そんなことはお構いなしにムクは身に付けた能力で、ヒバリの技を無効化した。

「次はこっちの番だ。受けるがいい!」

 左手をかざし、ヒバリに向けて炎を発射する。恐らく摂氏千二百度はある程の炎だ。受けたらひとたまりもないが、ヒバリは冷静に見極め、詠唱する。

「風の加護よ! 我の前に風壁を築け!」

 その声と共に、ヒバリの目の前には気流によって築かれた防御壁が出現する。炎はその壁にぶつかると左右へと広がり、そのまま消えてしまった。

「やるなぁ。だが、それだけに集中しない方が良い」

 ヒバリが壁を解除すると目の前にムクが迫り、顔に向けて回し蹴りを放っていた。ヒバリは咄嗟に右腕でガードの態勢を作り、その攻撃を防ぐ。ただし、蹴られた右腕には青痣ができる程の強烈な攻撃。ヒバリは痛みに顔をしかめるものの、これくらいの攻撃は今までも受けてきたため、気にすることはなかった。ガードした右腕でムクの脚を引き剥がし、もう一度距離を取る。

(長期戦は覚悟しなきゃかも)

 ヒバリはそう決心し、また攻撃を繰り出した。


 そのまま互いが互いの技を相殺するようにして、たまに肉弾戦も交えながら激しいバトルを二十分程続ける。

(くそ、(このままだと終わりが見えない)な)

 二人とも同時にそんなことを感じた。

 お互いに技の応酬が続き両者とも疲れが見え始めた頃、

(なんだ? 視界が揺れる……)

 ムクが唐突な目眩に襲われる。次の瞬間――

 目の前からムクの姿が消えた!

 次の技を使う準備をしていたヒバリは、あまりに突然のことに唖然としてしまった。そして一拍おいて理解する。

(しまった! LDM切れ!)

 LDMはその日に使える量が限られており、切れてしまうと自動的にこの世界から現実世界へと戻されてしまう。LDMの残量はガーディアン等の職についていれば、支給される端末、通称「夢残機(むざんき)」から残量が分かるだが、そうではない場合は把握が難しい。

 また、ムクが使っていた「真名が分かる力」は特殊能力のため消費が激しく、更に加護は無詠唱で使用すると短縮できる代わりにLDMを大量消費してしまう。この二つの要因が合わさったことによってムクのLDMが無くなり、彼は現実の世界へと戻ったのだ。

(捕まえることに夢中で気にしていなかった……。何という失態!)

 思わず自分の顔面を殴ってしまう。

 ここまで追い詰めて、いよいよ捕らえられるという時に逃げられては元も子もないと考えてしまい、ヒバリは己の未熟さに悔しさを滲ませた。とは言ったものの、捕まえなければいけない人物はここにいない。気持ちを切り替えて今後のことについて考える。

(とりあえず、また明日以降探さなきゃいけないね。仕事が入っていなきゃいいけど……。あっ)

 突然に顔を上げ辺りを見渡す。その光景にヒバリはもう頭を抱えるしかなかった。

 既にムクの仲間は遠くへと避難(というよりも逃亡)していたため人的被害はないのだが、建造物の被害は相当数に上っている。地面は深くえぐれている箇所がいくつもあり、建物にも焼け跡や崩れているところが目立つほどにあった。

 人的被害や建築物の被害を出してしまった場合は、責任者が始末書を書かされる。

(これは明日、活動できない……よ……ね?)

 クリム界での始末書は、勿論クリム界で書かなければならない。そして端末の時間を見ると、起きる時間まで残り一時間となっていた。

 憂鬱な気分になりつつもヒバリは、治安統括局へと連絡を入れた。その後、状況の説明(ムクの名前は伏せて)と明日の行動制限と始末書の提出を言い渡され、滅入った気分のままその日のクリム界での活動を終えた。

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