竜巻を射殺してみよう
その1
「見つけたぞ竜巻!」
少年の目の前には、巨大な竜巻が生まれていた。牛や車や柵といった定番のものが飛ばされている。
竜巻と対峙する少年の手の中には、黒光りするちょっと大袈裟な拳銃のようなものが収められていた。少年は、それを手に持ちながら叫んだ。
「お前に、お前に大事なものを奪われて一年。ついに復讐の時はきた!」
憎しみの感情とともに、少年は拳銃を向けた。本物のようだが、よく出来たレプリカのようにも見えるそれは、少年には扱いづらそうな大きさと重量を持っているようだった。
「あの日……僕はDSPをやっていた。そのとき、お前がやってきた。お前は僕のDSPを巻き込んで飛ばしやがった! 飛ばされたそれがどこに落ちてきたかわかるか?」
ワナワナと手を震わせながら、少年は憎しみをさらに高めて、竜巻を思い切り睨みながら、吠えるように怒鳴る。
「僕の家にあった、買ったばかりのKiiの上だよ! コンチクショー!」
バンッバンッバンッ!
乾いた銃声が竜巻に向かって響いた。撃つ度に衝撃が少年の身体を走り、早速アバラが何本か持っていかれた。
くぅっと呻きながらも少年は立ち上がって、また竜巻に向かって拳銃を向けて、撃ち放った。
バンッバンッバンッ!
パシッパシッパシッ!
「な、何ぃ?」
少年は驚いて銃を撃つのを控えた。ついでに、自分の腕の骨がそろそろヤバイことにも気づいた。
身体を震わせながら、少年は一体自分の銃弾を誰が受け止めたのかを眺めた。そして、少年は目をパッと見開かせて驚いた。
銃弾は、全て牛のひづめによって止められていたのだ!
「お前何者だ!」
「牛だよ」
「みりゃわかる! っていうかなんで喋ってるんだ!」
「竜巻の中に十年もいると、牛は仙人みたいになれるってわけさ」
「いつか竜巻なんて消えるだろ? 寝惚けたこといってんじゃねえぞ! バーベキュー野郎!」
「おー、怖い怖い」
ピコピコ。
牛は何かで遊んでいた。牛がヒヅメを器用に扱って何かに触れているのは不気味そのものだった。
しかし、牛が持っているものをよく見てみると、それはDSPだった。
「あ、お前なんでそんなもん持ってるんだよ」
「それは、お前が落としたからだよ。面白そうだったから、俺が代わりのレプリカを車の部品で即興で作り出して、代わりに上に投げたんだ。
「じゃあ、僕のKiiを壊したのは……お前の作った偽者?」
「君のゲーム機壊した? そいつはお気の毒」
「テメエエエ!」
バンッバンッバンッ!
少年はぶち切れて銃を竜巻にむかって乱射した。自分が恨むべきは竜巻ではなく、この牛だったのだ!
だが、器用な足は、つぎつぎにその尋常とは思えない硬さのヒヅメで受け止めていく。現代に生きる化け物だコイツは。
「あっ」
と思いきや、自分の胸に飛んできた弾を受け止めようとした彼は、間違ってDSPを盾にしてしまった。牛が今までの余裕さが嘘みたいな絶叫をあげる。
「このガキ、よくも俺のゲーム機をぶち壊しやがったな! 弁償しろ!」
「この期に及んでよくもぬけぬけと!」
「面貸せや! タコ殴りにしてやるぞ!」
挑発にのった少年は、銃を道端に捨ててから、竜巻の中へと飛び込んでいった。少年は竜巻によって瞬く間に飛ばされていき、牛をとっ捕まえて取っ組み合いを始めた。
どちらも血を撒き散らしながらしばらく殴り合っていたが、仙術を張ることを忘れていた牛は、竜巻の風で一気に頂点まで飛ばされていった。少年も一緒だ。
二人は、信じられないような金切り声をあげながら、地上へと落下していって、叩きつけられた。牛は長い時を経て、ついに人の肉が混ざったミンチになったのである。
「っていう昔話があるんだ。だからDSPはまた今度な」
「お父さん。嘘はいいから私にDSPとKii買って」
「お願いだからさ……頼むからさ……スイーツで勘弁してよ!」
娘はニッコリと微笑んだ。
「浮気するお父さんが悪いのよ」
その2
「あれが竜巻か。よーし、撃てーーー!」
部下達が、竜巻に向かって銃を撃った。竜巻だって、流石にこれだけの銃弾を撃てば、どこかにあるだろう急所に当たって消えるだろう。
しかし、駄目だった。
「くそっ! こうなったら戦車砲を撃て!」
ドムッドムッ! と、今度は戦車砲が次々に放たれた。しかし戦車砲は竜巻の風で明後日の方向に飛んでいき、牧場や民家を次々と爆破していった。
隊長は怒りのあまり、戦車の装甲に腕を振り下ろした。あまりにも硬すぎて、手の骨が全部ボキホギッといってしまったが、それを皆に隠しながら再び部下に砲撃を命じた。
まるで花火のように引っ切り無しに放たれていく砲弾だったが、いくつかは竜巻の懐に入って、中で爆発していった。よし、もう少しだと隊長は嬉しそうに装甲板を叩いた。
今度こそ手の骨がバラバラになり、仕方なく看護平のジェニファーに包帯を巻いてもらった。
美人看護士の手当てにヘラヘラしていると、突然携帯の着信音が鳴り響いた。彼のお気に入りのD.Zの新曲着メロに合わせてリズムを取りながら、隊長は電話に応答した。
「助けて、あなた!」
「み、美香か、どうした」
「今竜巻の中にいるの! 家ごと吹き飛ばされたの! だから、だから撃たないで! キャアアアアッ!」
「何ぃ! くそぉ!」
隊長はすぐに撃ち方やめの指示を出したが、手遅れだった。受話器から妻の悲鳴と、鼓膜が破けるようなとてつもない爆発音が聞こえた。
電話から聞こえてくる音がノイズだけになり、隊長は力が抜けたように項垂れた。
「くそぉ……畜生……」
そして、もう砕けようのないほどに骨が砕けた手を何度も叩きつけてから、涙ながらに言った。
「これ……もう射殺じゃねえじゃねえかよお!」
ごはんライス先生の射殺シリーズ真似事のリベンジ作品。もう意味がわからない。誰かの作品に影響を受けて書くのはいいけど、意味がわからなくなるものは書いたらいけない。敬意が足りない。