いつもと変わらない日常
いきなり話変わったのかなって思っちゃう人もいるかと思いますが、主要なキャラクター紹介みたいなもんだと思ってください。
文字数のことは全然考えてないのですが、一回一回切りどころよくわかってないのでたぶんこれからも気にできないかもです。
今回の話もよろしくお願いします。
視線を落としながら、見つめあうことはなく、お互いに恥じらいながら言葉を待っている。言葉を出そうものならその全てがすぐに崩れ去ってしまいそうな淡い空間。
これは空から降ってくる女子と遭遇する前の僕の日常の一コマである。
僕は急に名前も知らないかわいい雰囲気を醸し出す女子に呼び出されて、今度こそ、もしかしたら、と意気揚々と向かった。
でもほんとは気づいてたんだ。これは僕に向いてるベクトルではないな。
「あ、あのね、笹塚君、いきなりこんなこと言うのは失礼だってわかってるんだけど、もう気持ちが抑えられなくて、」
あぁ、このセリフ前も聞いたことがあるなぁ、いつだったかな、なんて思いつつどんどん気持ちが冷えていく。
「お願いします!この手紙を遠坂君に渡してもらえませんか!」
はい、きましたー、これがいつも通りの僕の日常です!
確かに僕はこの学校で女子一番人気の柴咲 透の唯一といっていい親友である。僕自身でもそれを自負している。透は小さいころからクールビューティーを決め込んだような性格なので、友達が割と少ない。嫌われてるとかそんなことは一切ないんだけど、男子からも女子からも高嶺の花扱いされているのである。
そうなると必然的に相談できるのが僕になってくる。誰とでも他愛無い会話ならかわすし、なぜかおせっかい焼きとして学校から認識されているため仕方ない。毎回毎回呼び出されては、期待を裏切られ、それでも女子の頼みを断ることなんてできない僕は、「それくらい全然かまわないよ」と笑顔で受け取ってしまうのである。
おそらく最初に告白した人が僕に相談したからなのだろう。いつの間にか僕が透の相談窓口となっていた。実際こういう手紙も計10通目くらいだし、時には直接的に一緒に遊びに誘ってなんてことだって何回もある。結局透は告白されても全員ふってるみたいだけど。
まあ確かに透は僕の目から見ても他とは比べ物にならないくらいにかっこいいし、スポーツ万能で非の打ち所がない。クールでかっこいいの代名詞にもなりえるんじゃないかってくらいだけど。
でもわかるかな?こんなにもモテるやつが近くにいると僕にも彼女が欲しいなって欲が強くなっちゃうんだよね。僕だって男子なわけで、かわいい女子に告白されたり、一緒にどこかへデートしたりしてみたい!
まあ一度もかなったことはないんだけど・・・・・・。
「うん、わかった、とりあえず渡しておくね。」
そういうと彼女はありがとっ!と感謝を伝えながら走り去っていった。それを見届けた後で僕は大きくため息をつく。
「はぁ~あ、いいな透の奴、また告白されて、僕に告白してくれるような人いないかな、彼女欲しいなぁ」
ただ一人でたたずんでいるものと思い、思わず漏れてしまった心の声。
「え?旅人に彼女?無理でしょーww」
すっと校舎の陰から一人の女子が顔を出す。
「なんでこんなところにいるんだよ紅羽!・・・覗いてたのか!」
とてつもなく恥ずかしい現場を見られてしまった。百歩譲って透への告白シーンはいいとしても、最後のガチトーンの、彼女欲しいなぁ発言は恥ずかしすぎる。
赤くなる顔を隠すためか、自然と語尾が強くなり変な発音になってしまった。
この告白現場(笑)を覗くような残念な女子は僕の幼馴染の、千歳 紅羽。身長は低めだが、小顔で運動が得意そうな容姿は、一応美少女に認定されるのだろう。特に一部の支持層から。性格さえよければかわいいと思えるんだけどな・・・。
「まーた呼び出されてると思ったらやっぱり透になんだねww、まあしょうがないよねー、旅人に告白しようなんて人はいないんだから。」
ものすごい上機嫌で僕を罵ってくるな!さすが僕を罵ることが日課になっているだけある。ただこれを受け流すだけだと僕がどMの変態みたいになっちゃうから、反論はするよ。
「うるさいなー!もしかしたら僕に告白してくれる人だっているかもしれないだろ!いや、きっといる!」
そう信じないともうメンタルがもたない。
でも僕だってクラスのみんなと仲良くしてるし(主に透の窓口として)クラスのために率先して動くことだってある。本当にもしかしたらそんな僕に行為を打抱いてくれる人がいるかもしれない。
・・・・・・イヤ、男子の八方美人とかダレトクだよ泣。
「みんなにやさしい人はモテないよーっ!!」
さらっと紅羽に笑顔のまま僕の人格を全否定されたが、今更ながらこの性格はもう直すことができないまでに自分のものになってしまっている。・・・・・・ほんとに損な役回りである。
「ていうか女子のことがほんとにわからないな。なんで全く話したこともない初対面の僕に気軽に告白まがいのことができるのに、透に直接渡しに行かないんだろう?」
透だって直接渡される方がうれしいと思うんだけど。
「そ、そういう、た、旅人はどうなの?やっぱり直接されなきゃやなの?」
笑顔から急に一転してきょどり始めた紅羽だがどうしたのだろうか?まあほんとに何気なくした質問なのだろう。やっぱしここは男らしいところを見せるために、
「まあそうだね、手紙とか人づてよりも直接気持ちを伝えてくれる方がいいな。」
そんなことを言っておきながら、心の中では、「いや実際は手紙でも人からでも好意を伝えられたら舞い上がっちゃうだろ」と思ってる自分がいて、ちょろすぎる自分に悲しくなった。
「へぇー、そうなんだ。旅人のことだからどんな手段でもいいのかと思ってた。」
なんで紅羽は僕の心の中を見透かしているのだろう。ちょっと怖い。
「でもあきらめなよ!旅人に告白する人、で検索したら検索結果ゼロ件だったから!旅人にそんなことする人はこの学校、いや、世界にはいないはずだから。」
おわぁー、規模がでかいなー、検索結果ゼロ件って泣いちゃうよ僕。類似しているものすら存在しないのか
「ていうか彼女なんか作ったら承知しないから」
なんかめっちゃ小声で承知しないからとか聞こえたな。怖っ!!前半部分聞こえなかったから発動条件がわからないけど、何かしたら殺されるんじゃないかな僕。
怖すぎてもう一回聞き直せなかった。
「さあ、用事も終わったわけだし、たまには一緒に帰ろ!透の窓口さん!!」
一緒に帰ろ!!のセリフで僕を泣かせに来れるとかもはや天才の域だね。よし!早く帰って家で泣こう。
これが僕、笹塚旅人の日常の一幕である。