第9話 神託
キマイラを倒した一樹は疲れてその場に座り込んでいた。
周りには、ギルドの登録試験の最中に現れたキマイラを討伐する為に集まったハンター達がいた。
そのキマイラを一樹が一人で倒した事で集まっていたハンター達の賞賛の声を送られていた。
しかし、その状況は唐突に終わりを迎えた。
『神代一樹はLv5→Lv6に上がった』
『神代一樹はLvが上がった事によりステータス閲覧を使用可能になった』
『神代一樹はLvが上がった事によりステータスにボーナスポイントを使用可能になった』
『神代一樹はLvが上がった事によりボーナスポイントでスキル取得が可能になった』
『神代一樹はLvが上がった事によりスキル変更を使用可能になった』
『神代一樹はLvが上がった事によりパーティー編成を使用可能になった』
『神代一樹はLvが上がった事によりボーナスポイントが5P→6Pに上がった』
『神代一樹はLv6→Lv7に上がった』
『神代一樹はLvが上がった事によりボーナスポイントが6P→7に上がった』
『神代一樹はLv7→Lv8に上がった』
『神代一樹はLvが上がった事によりボーナスポイントが7P→8Pに上がった』
『神代一樹はLv8→Lv9に上がった』
『神代一樹はLvが上がった事によりボーナスポイントが8P→9Pに上がった』
『神代一樹はミノタウロス・キマイラを倒した事で称号【魔物狩りLv1】を手にいれた』
『神代一樹は称号を変更できる様になった』
『神代一樹はキマイラを倒した事で称号【強者Lv1】を手にいれた』
突然頭の中に声が聞こえた。
(・・・は?え?レベル?ステータス?称号?)
「どうした?坊主?」
困惑していた所に声を掛けられた。
露店のおっさんだった。
(なぜここにおっさんが居るんだ?)
そんな疑問が頭を過った。
『神代一樹は称号【考える者Lv1】を手にいれた』
また称号を手にいれてしまった。
しかし、先程から頭に聞こえて来る声はまるでシステムメッセージの様な内容ばかりだった。
「さっきから頭に声が聞こえて来るんだが?…」
頭の中に声が聞こえて来る。
この現象がこちらの世界【テラ】の常識なのかどうか。
はたまた、自分だけに聞こえているものなのかどうか。
自分の考えとの擦り合わせの為に聞いてみた。
「声?もしかして神託を授かってるのか?」
「神託?」
「Lvが上がるか称号あるいは職業を得るかすると聞こえて来るんだが。兄ちゃんはそのどれかが聞こえたのか?」
この世界ではシステムメッセージの事を神託と読んでいる様だ。
(それにしても、Lvと称号は聞こえたが職業?)
一応確認しておこう。
そう考えて、話してみる事にした。
「ああ、一応Lvと称号が貰えた」
「兄ちゃん、そいつは良かったじゃねぇか!」
「それで、ギルマス彼のランクはどうしますか?」
「そうだなぁ…」
(ギルマス?ぎるます?ギルマス!?。え、ギルマスってあのギルマスか!!?)
職員の女性がおっさんの事をギルマス…、ギルドマスターと呼んだ。
ギルドマスターその呼び名はそのままの意味でギルド内でトップの者が名乗る名だ。
「キマイラを倒す程の実力の持ち主だしなぁ…、Fランクとはいかねぇよなぁ…。しゃあないCランクでの特例合格にしといてくれ」
「C!!」「いきなりかよ!!」「マジか!!」「すげぇ!!」周りに集まっていたハンター達が口々に驚きの声を上げた。
ハンターのランクは最高ランクはSでその下にA・B・Cと続き最低ランクはFとなる。
そして、登録試験に合格した場合Fランクに登録され実績を積みある程度の実力を持っていると判断された場合Eランクへの昇格試験を受けられる。
つまりCランクはFランクの登録試験を含め最低4回の試験を受け合格しなければならない。
更に、もしも昇格試験に失敗した場合は更に実績を積み重ねてから試験を受けなければならない。
つまりCランクはかなりの実力者と認められた者の証なのだ。
(色々気になる事が多いいが…Cランクか…)
キマイラを倒した事でのCランク…そのランクになるということは単純に考えてもキマイラと同等あるいはキマイラより強い魔物と戦う事が前提になるかもしれない。
そこまで考えてアテナを見た。
そして、尋ねてみることにした。
「一つ聞きたい…、Cランクになった場合下のランク…例えばFランクのクエストも受けられるのか?」
一樹はアテナの力を取り戻す手伝いを約束している。
その為下のランクのクエストを受けられない場合は無理にでも下のランクに登録して貰うか、アテナのランクを上げて貰うつもりなのだ。
それが出来ないのであればハンターに拘る理由が殆ど存在しない。
お金に関してはアテナ便りで当分お願いする事になるが、何とか出来る。
そうなれば当面の問題は住居だけになる。
「もし、下のランクを受けられない場合はCになるのは断りたい」
もしも下のランクに参加出来ずにアテナ一人を行かせて何か有った場合。
最悪元の世界に帰る手段を失う可能性も有る。
それを避ける為にも出来るだけ行動を共にしたい。
一樹はそう考えていた。
「試験に関しては個別じゃなきゃ困るが、クエストに関しては下のランクに参加しても構わねぇよ」
Fランクのクエストを受けられるのであればCランクを断る理由は無い。
「それによぉ、Cランクにはちょっとした得点が有るんだぜ」
「得点?」
「おう、Cから上はかなりの実力者だからよ。国が家を土地付きでくれる、何か有った時に支援したり、各種装備を優遇したり、他にも色々としてくれる。何より高い税金が免除されるぜ」
(色々とメリットは有るみたいだな…、取り敢えず住む家を国が用意してくれるのは有難い。ただ・・・)
一つだけ気掛かりが有った。
なぜ国がそこまで優遇してくれるのか?そこには恐らくデメリットが有るのではと考えた。
デメリットが有るのならそれは一体どの様な内容なのか?そこが解らなければ判断のしようがない。
そこも解るのであれば教えて貰おうと聞いてみた。
「国がそこまでしてくれるのはナゼだ?。もしかして何かを強制されるんじゃないのか?」
「ソイツはない。俺達が危険な魔物を替わりに討伐してんだ。国には文句は言わせねぇし、強制なんてさせねぇ。何せ俺達ハンターは自由民だからよ」
「わかった、有り難く受け取らせて貰うよ」
『神代一樹は職業【ハンターLv1】を手にいれた』
『神代一樹は職業を変更できる様になった』
そして、一樹は神託を聞いた。
こうして一樹は職業を手にいれた。