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自称女神と異世界生活  作者: 水野清一
第1章 出逢い
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第5話 最初に…

「力を取り戻す云々は後で話すとして、取り敢えず聞きたい事がある」


 そう言ってはいるが頭では別の事を考えている。


(さすが、自称女神だな名前がアテナかよ(笑)。本名かどうかは置いておくとして)


 やはり信じていなかった。

明確な証拠があり確信が出来なければ警戒する、彼が考古学を目指し始めてからのスローガンなのだ。

警戒し過ぎなのではと思うが、考古学者になってからこれまで色々と騙されそうになって来たのだ。

警戒するのも当然なのである。


「取り敢えず、ここが何処なのか知ってるか?」


 彼は遺跡から直接この場所に居たのでこの場所が何処なのか知らないのだ。

情報整理の為にも一応確認してみたのだ。


「はい、えっと…ここはテラの中央大陸にあるアルカナ王国首都アルティーです」


「アルカナ王国?アルティー?聞いた事がないな」


「それは当然ですよ、一樹さんがいた世界はアークと言います。一樹さんからすればこの世界は異世界ですから」


「異世界…、やはりあの時の光が・・・」


 異世界転移、水晶に蓄えられていた力が壊れた時に放出されてしまい。その結果、彼は異世界へと飛ばされてしまったのだ。


「・・・君は、元の…いや、俺のいた世界に戻る方法を知っているか?」


「うーんと?、一応方法は二つ有りますね」


「二つかその一つはもしかしてお前が力を取り戻す事か?」


「お前じゃないです!。アテナです!」


 名前で呼ばなければダメらしい。


「えっと…」


「ア、テ、ナ!」


 どうあっても名前で呼ばせたいらしい。


「…ア、…アテナ」


「はい♪、一樹さん♪」


 声が弾んでいた。名前一つで凄い喜び様だ。しかも、周りから見たらまるで恋人の様なやり取りだった。


「・・・で?」


「はい?」


「はい?じゃない。質問の答えがまだだ」


「…あ、そうでした…えっと、二つの内一つは一樹さんの言った通りです」


「・・・んで、もう一つは?」


「他の女神にお願いする事ですね。ただ、余りオススメしたくはありませんね」


「?・・・何故だ?」


「…えっと、余りこう言った事は言いたくないのですが。普通、女神は例外を除いて人には干渉しません。中には人を良く思っていない女神もいます。その為、他の女神に頼るのは難しく。もし頼れてもどんな要求をされるか分かりません」


(つまり、アテナの場合は俺と今、協力関係にあるため。力を取り戻す協力の対価に元の世界に帰る手伝いをするが。他の女神達は、俺を元の世界に帰す事に意味も必要性もなく帰すにしても無茶な要求を何かしらされる可能性が高い訳だ)


「一応、聞いておきたい。協力的な女神はいるのか?」


「確かにいますが、彼女達との接触は非常に難しいです」


「…なぜ?」


「世界は複数存在しているのですが、それぞれ一つの世界に女神は一人だけしかいないのです」


「…つまりは、この世界には君以外の女神はいないと?」


「いいえ、私はアーク世界の女神です。この世界テラには別の女神がいます」


「その女神に協力は?」


「…残念ですけど彼女は協力的ではないんです。恐らく、約束を取り付けられても達成不可能な事を要求されて結局あちらには戻れないかと・・・」


 つまり、この世界テラの女神は人嫌いなのか、他に理由が有るのかは分からないがが協力的では無いようだ。

しかし、アテナは元々アークの女神なので戻るのに協力的なのだ。


「では、帰るには君の力を取り戻すしかないわけか…」


「そうなります…」


 アテナは、一樹に対し申し訳ない気持ちで一杯だった。力を失ったのは事故でしかなく、一樹はその事故に巻き込まれただけの被害者なのだ。


「・・・ごめんなさい、私の力の暴走に巻き込んでしまい」


 彼女はいきなり謝ってきた。


「…謝る必要はない、むしろ謝るのはこちらの方だ。そもそも俺が水晶に触れなければこんなことにはならなかったのだし」


「いいえ!、私があの時力を制御出来ていれば…」


 結局のところ二人ともがお互いに自分が悪いと思っていた。

アテナは、水晶が壊れた時力の制御ができず暴走し一樹を巻き込んで異世界に転移し力が足りないばかりに彼を帰せない事に。

一樹は水晶を壊してしまったのは自分が触ったからだと罪悪感を持ち、更には彼を帰せない事に対し申し訳なさそうにしている彼女を見て俺のせいなのにと。


「…とにかく、こうしていても元の世界に帰れる訳でもないし、君の力が戻る訳でもない。とにかくこれからの事を話そう」


「・・・はい」


「それで…、君の力はどれ位で元の状態に戻る?」


 帰るにしても彼女の力を元に戻さないと始まらない。


「…えっと、一朝一夕では無理かと・・・」


「それは、仕方ない。俺も一朝一夕で力を取り戻せるとは思ってない。さて、そうなると此処での生活拠点が必要だな。一応、聞くけどこっちではこれは使えないよな…」


「あっちの通貨は残念ながら使えません」


「持っては・・・いないよな当然」


「…はい」


(どうする?このままだと宿どころか飯すら…)


「金を稼ぐしかないが…」


「これ売れませんか?」


 そう言って彼女は身に着けていたいた腕輪を一樹へと見せた。


「…分からないが売るにしても何処で?」


「誰かに聞いてみましょう」


 躊躇いなく彼女は剣や鎧を売っている露店へと向かった。


「あの~、すみませ~ん。これ売れるところありますか?」


(止める暇すらなく・・・、それより、異世界何だから言葉が通じるわけが…)


「あぁ、それならあそこで買い取ってくれるぜ」


(普通に通じた!!?いったいなぜ?てっ言うか日本語!?!?)


 常識では考えられない事が起こった。言葉が通じたのだ。普通外国に行っていきなり現地の言葉が解るわけがい。しかし、今

彼の耳には確かに日本語できこえたのだった。


「ありがとうございます」


 彼女は何事も無かったかのようにお礼をして教えられた店へと向かった。


「アテナ…今、日本語で聞こえたのだが?」


 思わず彼女に聞いてしまうほど混乱していた。


「はい、えっと…、神殿は元々こちらへ来るための場所でして…こっちへの転移のさい言語理解の機能があるのです。暴走状態の転移とは言えそれが働いていたのです」


 説得力のある説明だった確かに彼女の言う通り遺跡からの転移のさいこちらの言葉で話が出来る様になった可能性は高い。そして先程からことあるごとに彼女は女神らしさをだしていた。


(・・・いやいや、まだアテナが女神だと決まったわけじゃない。ちょっと事情に詳しいだけの現地人の可能性だってある)


 彼はどこまでも疑り深い男だった…。そんなことを考えている内に店に着いて中に入った。店はどうやら宝石店のようだ。


「いらっしゃいませ。本日はどういったご用件で?」


 店に入った瞬間店員がこちらへと近づき接客を始めた。服は執事服のようなスーツである。


「すみません、買い取って貰いたい物があるのですけど」


「品物はどういった物でしょうか?」


「えっと…、これなんですけど…」


 彼女は着けていた腕輪を店員に見せた。その腕輪は金で作られている。様々な細工が施され綺麗な宝石が中央にはめられている。日本で買えば数百万は下らない物である。


「はい、腕輪ですね。少し拝見させて頂きます。・・・、非常に細かい細工が施されておりますね。しかも、中央の宝石はルビーですね。この大きさの石はなかなか見ません。そして腕輪の素材に金を使われておりますね。ありがとうございました」


 さすがプロである。見ただけでここまで分かってしまうのだ。こちらの世界の通貨価値が分からないので安く買われても仕方ないが、これならばそれなりの金額を期待出来そうだ。


「どうですか?」


「そうですねぇ、これだけ細かな細工、宝石はルビーを仕様し、本体はかなりの量の金を仕様されていますし、お売り頂けるのであれば金貨250…いえ300枚でいかがでしょうか?」


「300枚ですか…もう少しお願いできませんか?」


「そうですねぇ…、では320では?」


「350で…」


「330…」


「わかりました330枚でお願いします」


 この世界の通貨は金貨一枚日本円で10万になり以下は小金貨が10000円銀貨が1000円小銀貨が100円銅貨が50円小銅貨が10円となる、最初の金貨300枚日本円でナント3000万にもなりそれをアテナは少ないやり取りではあったが金貨を30枚も値上げした。


「畏まりました、それでは金貨330枚で買い取らせて頂きます。今お持ちしますので少々お待ち下さい」


 そう言って店員は店の奥に向かった。


「本当に売ってしまって良かったのか?」


「はい、今は生活の為にもお金が必要ですから」


 アテナは何の未練もなく笑顔でそう答えた。それにしても先程から彼女の女神力に助けられてばかりだ。このままではヒモ街道まっしぐらである。


「お待たせ致しました。こちら金貨330枚です。お確認下さい」


 彼女の前に10枚毎にまとめられた金貨が置かれた。


「はい、ありがとうございます」


 そして店員は用意していた布袋に金貨を入れた。


「どうぞ、お納め下さい」


 金貨の入った袋を差し出して来た。

それを彼女は受け取らなっかった。


「一樹さんが持って頂けませんか?」


「君の物を売ったんだ、これは君の金だ」


「お願いします」 


 彼女は少し頑固なところがあるみたいだ。


「分かった。それじゃ、これはおれが預かっておく」


そう言って金を受け取り二人は店をあとにした。

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