第32話 戦闘準備1
「お帰りなさいませ」
そう声を掛けて来たのは姉妹のミリアだった。
「ちょうど良かった。ミリア他の姉妹達全員を食堂に集めてくれ」
「分かりましたです!」
「アリエス、他の宿泊客達に聞かれても良いんだが一応話を聞かれない様に出来るか?」
「はい、ミリアが空間に干渉するスキルを持っています。そちらを使えば可能です。その際出来ればカズキ様から命令して上げて下さい」
「………なら全員が揃い次第ミリアにそのスキルを使って貰おう」
「はい」
ここまでは良し次は………。
「アリエス、俺の装備をどうにか出来ないか?このまま戦う事も出来なくは無いが………」
「装備でしたらメイが物質創造のスキルを使えます」
「物質創造?どんなスキル何だ?」
「物質創造はMPを代価にどんな物質でも作り出せるスキルです」
「便利そうでは有るけど代価ってどれ位だ?」
「そうですね………5Kgの鉄の塊を作り出す場合MPを50消費して作り出します。加工済みの鉄の剣を作り出す場合は消費がその素材の半分増えMPを75使います。素材により消費MPは変わり先程と同じ塊を作り出す場合ミスリルですとMP150、アダマンタイトですと450、オリハルコンに至っては1350と桁が上がっていきます。ちなみに武器や防具に能力を1つ付けて作る場合は作成時に使用する2倍のMPが必要になり2つ付ける場合はMPは3倍になります」
「詰まりはより良い物を作ろうとするとMPは1つの時は2倍2つの時は3倍3つ付ける場合は4倍必要になるって事か………」
「その通りです」
「それで現在のメイが使えるMPの量は?」
「現在は1000が限界です」
「……………付けられる能力は指定出来るのか?」
「出来ます……しかし、そちらでも同じ様に消費が増えます」
と言う事は強力な装備で固める積りだったが現状無理そうだ………。
彼女達は能力制限を受けてしまっているのでコレばかりは仕方ない………。
「………分かった。後は本人に確認する」
「はい」
そうお互いに言葉を交わして丁度途切れた所でミリアが他の姉妹達を連れて来た。
さて先ずは………。
「ミリア他の人に話を聞かれたく無いんだが音を遮断する事が出来ると聞いたんだが頼めるか?」
「お任せ下さいです!」
そう言って少し目を閉じると周りの音が一気に無くなった。
あまりの静けさに少し耳が痛い位だ。
「如何ですか?何か有りましたらお言いになって下さいです!」
「外の音を聞く事は出来るのか?」
「はい!外の音を今の様に通さないモノや逆に中の音だけを外に出すモノも出来ます!」
「それなら外の音を一部だけ中に入れておいてくれ………余りに無音だと耳が痛くなるみたいだから」
「はうっ!!?も、申し訳有りませんです!!?直ぐに修正しますです!!?」
ミリアは少し慌ててもう一度目を閉じると直ぐに変化が訪れた。
先程までの無音から変化して何の音かは判別出来ないが少しだけ音が戻って来た。
これって使い方によっては凄く有能なモノなのではないだろうか?。
取り敢えずミリアが修正してくれたのでその事にお礼をしてそのまま俺は彼女達に話し掛けた。
「さて、先ずはいきなり招集を掛けて済まない。急な事で申し訳が無いがここの近くの森にゴブリンキングが現れた事で現在この国には大変な事になっている。先程その対策会議が開かれて俺達はそれに参加して来た。これからその情報を伝える。先ず、今この国はゴブリンキングに対抗出来る戦力が他の依頼で出払っていて近くにいない為対抗出来ないらしい。それでも軍人や狩人等の人達は戦う事を選択している。国の方針としては一般市民を避難させての防衛を考えていた。しかし、一般市民にはまだこの情報が伝わっておらずこのままだと避難が間に合わず大量の犠牲者が出てしまう。俺はここに来たばかりで知り合いも少ない………けれども誰かが死んで行くのを見過ごしたくない。アリエスにこの事を聞いたのだが俺がこの戦闘で少しだけ無茶をしてレベルを上げればアデルフィーである皆の制限が解除されゴブリンキング達の討伐が出来ると聞いた。本当ならこんな事は言いたくは無いのだが………この後準備をしたら皆には俺と一緒にゴブリンキングの討伐をして貰いたい頼む!」
俺はそう彼女達に言って頭を下げた。
無茶を言っている自覚はある。
ハッキリ言って仕舞えば俺は彼女達に何の関係も無い人達の為に死ぬ覚悟で戦ってくれと言ってるんだ。
それも俺の自己満足の為に………。
偽善者と言われても仕方ない事をしようとしている。
それは自覚している。
それでも…………。
「カズキ様頭をお上げ下さい。私達は貴方様のやりたい事をお手伝いするのが使命であり当然の事なのですから。どうか私達の事をお好きにお使い下さい」
「「「「「「「「「どうぞお好きにお使い下さい!カズキ様!」」」」」」」」」
そう言って彼女達は立ち上がり一斉に片膝を地面に付いて左胸に右手を添えて俺に向かって頭を下げた。
頭を上げた瞬間にその光景を見せられ少し戸惑ったが同時に嬉しく思った。
彼女達はこんな俺の為に動いてくれるその事がとても嬉しかった。
これが終わったら何か彼女達にしてあげようそう俺は決意した。
「………ありがとう。それじゃあよろしく頼………」
「カズキさん!」
俺が皆によろしく頼むと言おうとしたのだがフィリアがそれに待ったを掛けた。
俺は彼女の顔を見て彼女が何を言いたいのか察した。
「…………フィリアまさかとは思うが一緒に戦いたいとか言う気じゃ無いだろうな?」
「その通りです」
「先程も言ったと思うがこの戦いは非常に危険で不慣れなフィリア達を連れての戦いは俺達を不利にすると………」
「分かってます………でも、何もせずに居る事は私達には出来ません!」
そうフィリアは俺の目を見ながら言って来た。
それに同意する様にリーゼとラナもフィリアの横に立ち同じ目で俺を見詰めて来た。
これはどうあっても付いて来る気の様だ。
恐らく俺が駄目だといくら言っても勝手に付いて来るだろう。
そしてそうなれば彼女達は俺の知らない所で無茶をやらかす筈だ。
これはもう諦めるしか無い様だ。
「……………はぁ、仕方ないフィリア、リーゼ、ラナ、アリエス達の側を絶対に離れず俺の指示に絶対に従うと約束出来るか?」
「「「はい!」」」
「分かった………アリエス彼女達の護衛を頼む」
「はい!お任せ下さい!」
こうなるかも知れないとは思ったがどうせなら安全な所に居て欲しかったのだが俺が思ってたよりも彼女達はお転婆な様だ。
そう考えながら俺はあちらの世界に居る従妹の事を思い出したのだった。