第31話 緊急会議3
ここまでは良い………問題はここから俺達だけで戦わせる事に対しての話だ………。
結局の所現状アリエス達は大丈夫だとしても敵の規模によっては防衛ですら儘ならないかも知れないのだ。
果たしてその状態で少数行動が許して貰えるのか………。
どうにか説得しなければならない………。
「フィリア………お前が姿を消した事情を聞きたい所たが………そちらは後で聞く良いな?」
「はい、今はまだお話し出来ませんがいずれ………」
「それで良い………所で代行者殿………貴殿の主はフィリアの中に居られる神であらせられるのでしょうか?」
「いえ、違います………私達の主は現神であらせられるこちらのカズキ様………神名は現神ゼクス様です」
「「「「「「………………は?」」」」」」
「ですから、私達の主人はここにいるカズキ様です」
「「「「「「……………………………………は?」」」」」」
おい!アリエス!お前何さらっと俺の事話してんだよ!そりゃぁ後で話す予定だったけど!少しずつ話して理解させる予定がパァだよ!見てみろ!いきなりカミングアウトするもんだから皆訳が分からなくてポカ~ンとしてるじゃないか!これ暫く話にならないぞ!。
いや……呆けてる今畳み掛ければいけるか?良し!ダメもとで行ってみよう!。
「皆さん………俺が神だのと言うのは事実ですがそれに関しては説明は控えさせて頂きます。それよりも今はゴブリンキングの方です。………さて、ここまで話した所でお聞きしたい………まだ、俺達だけで討伐出来ないと思いですか?」
そう言って俺はこの場で呆けてる人達の顔を1人ずつ見た。
彼等は皆俺が神だと聞いた時から俺を見てそのまま固まって居る。
そんな彼等の顔を順番に見て一呼吸入れてこう言った。
「返事が無いと言う事は問題無いと判断しますが宜しいですか?」
そこまで言ってから一旦言葉を切って少し間を開けた。
こうする事で相手に自分で考えたと言い訳を与える事が出来る。
もし、何かあってもそれを逃げ道に出来る筈だ。
さて、そろそろ良いだろう。
「………宜しいようですね………では、俺達は討伐に行かせて貰います。皆様方には防衛と避難の方を担当して頂きたいのでこの後は外に出た騎士の人と話して防衛の方をお願いします。それではこれで………」
俺はそこまで捲し立ててその場を離れる為に扉へと向った。
その後をアリエス達が付いて来た。
アリエスを除く他の3人は俺が3人を戦場に出さないと言ったからむくれている。
それでも今の彼女達を戦場に出す積もりはない。
そんな事を考えている内に俺は扉の前に辿り着いた。
そして扉に手を掛けた所で後ろから声を掛けられた。
「待てっ………いや!待って頂きたい!貴方様が神だとまだ確信が有りません!出来ればその証拠をお見せ頂きたい!」
来た………いきなり神だと言われても信じられないのは当然だ。
そうなれば何か物理的な証拠をお見せて欲しいと言われると思っていた。
正直見せなくても良いと言ってくれれば楽だったんだが仕方ない。
物理的証拠となるとこの世界ではこれ以外無いだろう。
俺はリングに触れて自分のスクロールを作り出し声を掛けて来た男に渡した。
「これで良いか?」
「拝見させて頂きます………………っ!!?ほ、他の方々にもお見せしても宜しいですか?」
「あぁ………」
「有り難う御座います………それでは、陛下こちらを………」
「う、うむ………お、おぉぉ!!?な、何と………」
その一言を発した後いきなり立ち上がりこちらへと歩き始めた。
急にどうした!と困惑している内に目の前まで国王は来ていてそして………。
「数々の御無礼申し訳有りませんでした。この愚かな私めの頭で宜しければ幾らでも御下げします。ですので、どうか………どうか!このこの国の民達をお救い下さいます様心よりお願い申し上げます………」
と、言って膝間付いた………。
その行動に驚いているといつの間にか会議に参加していた他の人達までもが国王の後ろで膝間付いていた。
俺は無言で振り返り扉へ手を掛けてそのまま扉を開けて歩き出し………。
「最初からその積もりです………避難の方は任せました」
それだけ言って会議室を後にした。
………するしかなかった。
あの空気で何を言えば良いのか分からなかったんだ。
俺は元々王族とかそう言うのとは関わりの無い一般人だ。
どんな事を言って良いのかすら分からない普通の何処にでも居る男だ。
訳が分からない内に異世界に来たり、いきなり神にされたりと普通じゃない事を体験しては居るが……それでも価値観は一般人でしかない。
あれだけの事を行動に移したりしただけでもかなり神経を使っている。
しかも、会議の間中緊張していて、それを隠せていたのも奇跡に近い位だと思う。
今だって緊張の糸を切らしたら腰を抜かして仕舞いそうな位だ。
だけど今それをしてしまうと出来る事も出来なくなって仕舞う………だからそうなるのは戦いが終わってからだ。
そう心に決意をしながらギルドの外に出た。
そこには先程会議室から出ていった騎士の人が立っていた………。
「ふん!随分早くに出てきたな!さては追い出されたな!ふはははは!分を弁えぬからそうなるのだ!」
と、嫌みたらしく声を掛けられた。
先程追い出されたのが余程気に食わなかったらしいな………。
それにしてもこの態度は無い!流石に酷すぎる!これでは国の品位を疑われるぞ!。
コイツを懲らしめたい気もあるがそれは国王がするべき事だ。
取り敢えずコイツを会議室に向かわせて国王に叱って貰おう。
「国王の顰蹙を買って追い出されたお前が言えた事では無いだろう………ちなみに国王達は俺の提案を受け入れて防衛と避難の準備をしてるぞ」
「何!バカな事を言っている!陛下がその様なバカな決断などする訳が無い!嘘も大概にしろ!さもなければ今ここでこの私が切ってくれるわ!」
「そう思いたいのならば好きにしろ。俺は嘘など一言も言って無いんだからな。それでも嘘だと思うなら国王に確かめに行けば良いだろう?まぁ、俺達はそんなのに付き合って居る暇は無い」
そう言い俺は宿へと彼女達を迎えに行く為に歩き出した。
こんなのに付き合ってたら何時まで経っても行動出来ない。
凄い目で睨んで来ているが無視して俺は横を通り過ぎた。
暫く歩いたがどうやら怒りに任せて襲ってくる事は無さそうだ。
取り敢えずは良かった………。
さて、そんな事より3人は俺の後ろを付いてきているがそろそろ別行動を取る為に門に着くまでに説得しないとな。
「フィリア、リーゼ、ラナ、3人はここに残って市民達の避難の手伝いをしてくれ」
「いえ!私達も一緒に行きます!」
フィリアは自分達も行くと言ってきたが………。
「連れては行かない」
「何故です!私達だって戦えます!」
「………戦えるのは分かってる」
「でしたら!」
「なら聞くが森での戦いの経験は?」
「私はエルフです。私達エルフは森で暮らしてますから森での戦いは出来ますよ」
「私は職員になる前は狩人でしたから経験はありす」
と、ラナとリーゼはこう答えた。
2人はどうやら森での経験が有る様だ。
しかしフィリアは………。
「……………私は………有りません……」
と答えた。
やはりフィリアはそう言った経験が無い様だ。
これではやはり危険だと言わざるを得ない。
少数で戦う以上経験の有無はかなり重要になる。
例えば、ハイキング等で山に出掛けた時、町の中では当たり前の様に疲れず歩いている距離でも山の中では普段通りにはいかず同じ様に歩こうとしても歩けずに疲れてしまうと言う経験はないだろうか?。
これは普段通りに行動してる積もりでも山の起伏や木の根等でいつもとは違う動きを要求されて普段とは違う行動を余儀無くさせられる事により起こってしまうモノで。
違う事をするのは大変なのだ。
ましてや戦闘ともなればその差は更に酷いものとなる。
そんな状態で戦闘を行うには経験が何よりも必要でそれが無いと最悪死ぬ事になる。
なら守りながら戦えばと誰でも思うだろう。
しかしそれは出来ない。
それをするには彼女を守る為に戦力を割かなければならない。
しかし、今回俺達の戦力は余りにも少なくそれを行う程の余裕は無い。
厳しい事を言うと経験の無い足手纒を連れて行く余裕は無いのだ。
「森での戦いを経験しているラナ達にサポートして貰えば平時なら戦えると思ってる………」
「でしたら………!」
「平時ならばと言ったろ?恐らくだがこれから行く森はゴブリンで溢れ返ってると予想してる………それこそ全周囲囲まれて1人で何百匹も相手にして戦わ無いといけなくなる可能性が高い………それに俺は1人で戦う事には慣れているが複数人での行動には慣れてないんだ………正直、皆を守りきれる自信が無い………」
俺は祖父から武術を学んでいたのだが複数人での行動の仕方や仲間等と共に戦う方法は教えて貰えなかった………。
神代流は古武術で祖父は教える人を選んでいたし厳しい修行に耐えられる人は少なかった。
その為鍛錬の時は殆ど祖父と2人で過ごしていた。
何で2人だけでとか理由を聞いた事は無かったが恐らくは神代流自体が一子相伝な上に複数人で戦う武術では無く単独で戦う事を目的とした武術でそれを目的としていたからだと思われる。
その為俺は1人の戦闘には慣れているがパーティー所謂チームプレイには慣れていないのだ。
不確定要素の多い今回の様な森……しかも相手の数がこちらを上回っているのが確定している場所に連れて行っても守りきれるとは思えない。
そうなれば彼女達は酷い目に合う可能性が高くなる。
そして彼女達がそんな目に合えば俺は自分を許せないだから………。
「悪いがフィリア達3人は防衛に残ってくれ」
俺はそうそう指示し宿屋へと着いたので3人の返事を待たずそのまま中へと入った。
 




