表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自称女神と異世界生活  作者: 水野清一
第2章 最初の…
16/34

第16話 呪い


 宿屋…青い林檎亭にある食堂で一樹かずきは目の前の生物に怯えていた。

その生物は先程まで鬼の様な形相で筋肉をピクピクさせながら一樹を睨んでいた人物だ。

ただ屈強な男や異形の生物だったら怯えはしなかった。

だが目の前の生物は違うその生物はガチムチのオカマだった………。

それもなぜか裸エプロンの………。


「さっきは、ごめんなさいね♪」


 先程まで「ゴラァ!」とか言っていた人と同一人物とは思えない位優しい口調で言って来た。

一樹はそのギャップに押されぎみだったが直ぐに謝り返した。


「ッ!!?いや!こちらこそ!先程は失礼な事をしてしまい、申し訳ありません!」


「あら♪礼儀正しくて良い子じゃない♪」


 頬に手を当てておっとりお姉さん口調で彼?《かのじょ》はラナへと声を掛けた。


「どこで見つけて来たのよ?」


「ないしょ♪羨ましいでしょ?」


 ラナはこのオカマと先程から砕けた口調で喋っている。

二人はそれなりに仲が良い様だ……。

一体どんな仲なのか少し気になる。

そんな事を考えていたのだが一樹に取って聞き逃してはならない事を言って来た。


「本当に♪ねぇ、わたしにくれない?」


 しなを作りうっとりとした顔でそんなおぞましい事を言っていた。

一樹はその言葉に背筋をゾクリとさせて硬直してしまった。

本来なら直ぐにでも否定しなければならない事なのだが余りの事態に反応すら出来なくなってしまった。

しかし、そんなガチムチオカマの言葉に意外な人物が反応した。


「だ、ダメですよ!一樹さんは私と一緒に暮らすんですから!!?」


 アテナがいきなり爆弾発言をかましてくれた。

一体何を考えたのか分からないが今の反応では恋人か駆け落ちの相手だから渡したくない、と言ってる様に聞こえる。

だがそんな言葉をガチムチは気にした様子も無く返事した。


「あら♪、別に奥さんは一人しかダメな訳じゃないんだから。………そうねぇ、ラナもいるし私第三婦人で良いわよ♪」


 ガチムチが更なる爆弾を放って来た。

どうやらこの世界、あるいは国は一夫多妻制であるようだ。


(この世界はそう言うのが存在してるんだな………だがハーレムを作ったとしてもオカマ《・・・》を嫁にする気はない)


「……分かってはいましたが。そこまで嫌がられると、やっぱり悲しくなりますね………。まぁ、今の姿では仕方ないですね……」


「……エレナ」


 ラナは何か知っているのかガチムチ……エレナに同情し少し泣きそうな顔をしていた。

何か事情がありそうだ。


(エレナって……、随分と美少女そうな名前だな……源氏名か何かか?。一応訳ありっぽいし事情を聞いておくか……)


 一樹はこの世界に来てからまだ半日だ。

この世界の事は一部の事以外まだ何も知らない。

そもそも、一樹の元々の目的は両親の行方を探し出す事だ。

アテナの神殿遺跡は元々こちらの世界テラへと転移する為の場所だったと言っていた。

ならば何らかの理由で両親がこちらに来てしまった可能性がある。

もしかしたら見つかるかもしれない。

それでなくともここで生活するには情報は必要だ。

聞いて置いて損はない。


「……なぁ、何か事情があるのか?」


 エレナの事を知っていると思われるラナに事情を聞いてみようと声を掛けた。

ラナは少し考える様にイリスに目線を向けていてそれを受けた当の本人は……。


「……ラナ、お願いしても良いかしら?」


「ええ、私としても一樹様でしたらあなたの事も助けてくれると確信しています」


(やはりと言うか何と言うか難しい事情がありそうだな……って言うか!も!も!って言った!!?ラナお前も何か抱えてるのかよ!。しかし、本当どこからその信頼が来るのかな!!?)


 毎度の様に一樹は心でツッコミをしていた。

もうパッシブスキルなのかもしれない。


「……えっと、どこからお話したらいいのやら………まずは一樹様は呪い《カース》と言うスキルの事はごぞんじですか?」


「呪い《カース》?そんなスキルがあるのか?」


「はい、呪い《カース》の内容は様々ですがわたしの場合はこの見た目と中身、それと装備に関する呪いなんですよ」


「見た目と中身?装備に関する?俺は呪い《カース》スキルに詳しくないから良く分からないんだがどんな呪い何だ?」


 呪いと言う言葉の意味は分かる。

呪いとは、人または霊が、物理的手段によらず精神的あるいは霊的な手段で、悪意をもって他者等に対し災厄や不幸をもたらそうとする行為の事を言う。

元々の世界にも古くから呪いと言われる伝承や言葉はあった。

有名な物はエジプトのツタンカーメンの呪いだろう。

その呪いは、ツタンカーメンの墓を学者等の複数の人間が研究の為墓に入りツタンカーメンの眠りを邪魔した事でその後発掘にたずさわった数十人が事故死或あるいは病死したと言われる事件の事だ。

他にも日本では安倍晴明が使ったとされる呪術も呪いの一種だと言われている。

そして、呪いとは昔に大抵偽物だったとされている。

だがスキル化したこちらの世界の呪いが元々の世界の呪いと同じとは思えないのだ。


「わたしは見た目と中身と言いましたが正確には肉体・・と精神が変質する呪いになります」


「肉体と精神?それは今の姿からか?それとも元々の姿からと言う意味か?」


「元々の姿からです。わたしは元々は普通の女でした。わたしはダンジョンで働く冒険者で仲間と一緒に旅をしていました。ですがあるダンジョンの中で仲間を失いこの呪いを……肉体と精神が変質する呪いを掛けられてしまったのです……」


「掛けられた?誰にだ?」


「邪神です……」


「邪神?そんな奴が存在してるのか?それも、アンタに呪いを掛ける様な奴が?」


「います……、少なくとも一人は……」


 どうやらこの世界には邪神何て者が存在している様だ。

しかも元々は女性だったのに肉体がガチムチの男に変わってしまった様だ。

中身がほとんど女性のままなのでどう見てもガチムチのオカマにしか見えないが……。

と言うかエレナって本名だった。


「肉体の変質の方は分かった……けど中身はどう変質したんだ?」


 少なくとも先程から喋っていても中身は元々の女性のままの様に感じる。

まぁさっき入り口で「いい加減にしろや!ゴラァ!!!」と男っぽかったが……。


「興奮すると出ちゃうんですよ………」


「あぁ………だからか……」


 あの時一樹がこの宿屋……青い林檎亭のドアを開け閉めするだけで一向に中に入らなかった為興奮したのだ。

偶然にもそれが彼女の呪いを発動させるトリガーになった。

結果「ゴラァ!」になったのだ。


「中身についても分かった。それじゃ、最後の装備に関する呪いはどういった効果何だ?」


「それは、これです……」


 そう言って彼女が自らのエプロンを指して言った。


「この装備……花嫁のエプロンこれを着けるとそれ以外の装備が着けられなくなるんです……」


 どこの作者だそんなエロしかない装備を作ったのは!!?

もしエレナの呪いが解けて元に戻ったら……。

もし美少女ならグッジョブだ!。

まぁ、今はそんな事どうでもいい……。

ホントウダヨ、ホントウニドウデモイインダカラネ。


「……つまり、そのエプロンを着けてる限り衣服を含めた防具装備が着けられないと?」


「後、武器もです」


「外すことは?」


「出来ません……」


「その呪いは別々の物なのか?それとも一つの?」


「別々です。肉体と精神が一つで装備の呪いはエプロンに掛かった物です」


「そうか………それで、俺にどうしろと?言って置くが俺は呪いを解くスキルは持ってないぞ?」


「大丈夫です。一樹様ならエレナに掛けられた呪いを解く事が出来ます。私はそれを知っています」


「知ってる?どう言う事だ?」


「先程私は一樹様なら彼女も助けてくれると言ったのは覚えていらっしゃいますか?」


 確かにラナはエレナに「あなたの事も助けてくれる」と言っていた。

ここでふと疑問に思った………。


「……彼女も?ラナ……まさかとは思うがもしかして」


「はい、私も呪いを掛けられています。つなみに私はスキルの力であなたなら呪いを解く事が出来ると知りました」


 ラナも呪いに掛けられている様だ。

その呪いがどんなものなのかは分からないが一樹ならその呪いを解く事が出来ると確信している様だ。

しかもラナはスキルの力で知ったと言った。

どこまでの事が分かるのかは聞いてみないと判断出来ないが、もしかしたらギルドでの態度の急変や神を崇める様な態度はそこに起因しているのかもしれない………まぁ、【神(神人)】なんだけど。


「先ず最初に言って置きます。私の呪いとエレナの呪いは根本的な所が違います」


「……どう違うんだ?」


「先ず、呪いを掛けた邪神が違います」


 邪神は複数いる様だ。

女神だってそれぞれの世界に必ず1人はいるとアテナは言っていた。

邪神が複数いてもおかしくない。


「次にエレナの呪いは一樹様なら簡単に解く事が出来ます」


 彼女……エレナに掛けられた呪いを解くのは一樹なら簡単らしい。

つまり、本来はエレナの呪いを解くにはかなり厳しい条件があると言う事だ。

これならばラナの呪いを解くのも難しくはないだろう……そんな風に考えていたのだがラナが言った一言で一樹はその考えが甘かったと認識させられた。


「ですが……私の呪いは、呪いを掛けた邪神を倒さなくては解く事が出来ません」


「なっ!それは!」


 邪神を倒す。

つまり邪神とはいえ神……ラナの呪いを解くには神殺しをしなければならないと言う事だ。


「ですがそれは余り問題ではありません」


 どう言う事だろう?呪いが解けない事が問題ないのか……。

まさかとは思うが……。


「……邪神を倒さなくても解く事が出きる?」


「もしかしたらと言う程度ですが……」


 もしかしたらでも邪神を倒す事をしなくてもラナに掛けられた呪いを解く事が出来るのなら可能性が低くても良い事だ。


「そうか……。それで?結局の所君の呪いとは?」


「私の呪いは2つ、1つは苦痛の呪い……」


「苦痛?痛みを体に与えるのか?」


「それも含みます。体だけではなく心にも苦痛を与えます。いつその痛みが襲って来るのかはランダムですが心への苦痛は毎日夢として見せられてます」


「毎日……ちなみに、どんな夢か聞いても?」


「はい、例えば私の過去に関わる事だったり私が知る人の死を見せられたりですね」


 少し想像してみた。

一樹には妹がいるその妹が何らかの事故或は事件に会い死んでしまったとしよう。

一樹にとって大切な妹だ。

その妹の死の瞬間を何度も見せられたらと考えると……。


「それは辛いな……」


「いえ、確かに辛い時もあります。ですが、それよりも辛いものを私は知っていますから」


 大切な者の死を何度も見せられるより辛いものを彼女は知ってると言う。

一体どれだけ辛い思いをしてきたのか……。


「一番辛いのは愛する人と同じ時を過ごす事が出来ない事です」


 その言葉を聞いて思い浮かべたのは夫か彼氏が彼女よりも先に死んでしまったのだろうと思った……だが次に言った彼女の一言で一樹はその勘違いを正された。


「信じられないかも知れませんが、私こう見えて300歳なんですよ……」


「「……え?」」


 一樹だけでなくアテナすらもそのラナの一言に驚いていた。

ラナはそのまま事情を説明し始めた。


「1つ目の呪いは【永遠の苦痛】と言う呪いで効果は精神的苦痛と肉体損傷の再生です。もう1つは【不死なる時】と言うもので効果は不老不死……。つまり死ねないんです……」


「死ねない!!?それじゃあ本当に300年も生きて来たんだ……」


「信じられませんよね……」


「いや、信じるよ……」


「私も信じます……」


 一樹とアテナはラナが嘘を言っている様には思えなかった。

だから彼女の事を信じる事に躊躇いはなかった。

大切にしてきた人達が歳をとり死んで行くなか自分だけが若いまま死ねないのだ。

300年……それだけの時間を生きるとはどれだけ辛いものかは想像するしかない……。

呪いに掛けられ苦しんで来たそんな彼女達を助けたいそう思った……だから。


「少なくとも俺達は信じる……だからこれだけは言わせてくれ。俺に出来るかどうかは分からないがもし俺が君達を助けられるのなら力になりたい……いや、ならせてくれ。そして、出来ればいままで辛かった分幸せになって欲しい……。なぁ、そうだろアテナ!」


「一樹さん……はい!もちろんです。私にも手伝わせて下さい!」


 彼女達の境遇を知り出来るかもしれないと言われたのだ。

二人の力になって上げたい。

そう一樹とアテナは思ったのだ。


「ありがとう……ござい、ます……」


「よろしく、お願い……グスッ、します……」


 二人とも一人でずっと苦しみ続けて来て辛かったのだろう一樹達がそう言った途端彼女達は涙を流し始めた……一人はガチムチの姿だが。


「ラナ……」


「エレナさん……」


 そんな彼女を一樹は自然と抱き締めアテナはエレナを抱き締めていた。

ラナはそのまま一樹の胸の中で300年の悲しみを吐き出すかの様に泣き続けた。

エレナもまた同様にアテナの胸で泣き続けた。

一樹は泣き続けるラナを抱き締めながら心から強くおもった。

彼女達の呪いをどうにかしたいと……。



如何でしたか?。

今回大分真面目路線で書いてみました。

時折お笑いを混ぜながら書くのが自分の理想系なのですが。

まだまだ難しいと実感しております。

さて次回ですが予定では来月15日を目指して書いています。

また少しの間お待たせする事になりますがお待ち頂けると嬉しいです。

面白いと思ったらブックマークの方もよろしくお願いします。

それではまた次回。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ