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弟子入りって響きが良いよね!

短めのものを2つ、投稿しました。

「……ハッタリさんハッタリさん。まだ、寝る場所決めないの? ぶっちゃけもう疲れたんだけど」


俺が特別体力がないわけじゃない。

もう森を出てから体感で5時間は歩いているんだ。

運動の類が大の苦手だった俺にはこれだけでもかなりきつい。

そんな俺に更に追い打ちをかけるべく、じっとりとした暑さが俺たちの体にまとわりついて離れない。

……今は夏なのかな。

年がら年中この気温だったら俺は北へ逃げ出す。


……まあ、とにもかくにも今俺は汗だくなんだ。

当然、ハッタリも。

無表情だけどね。


「……それもそうですね。もう日が沈み始めましたし、今日はこの辺りで野宿しましょうか」


ほー。

野宿するんだ。

楽しそうだな。










と、思っていた時期が自分にもありました。

野宿って火焚いて近くの木に寄っ掛かって寝るだけだった。

テントとか無いの?

……無いよな。

よく考えてみればすぐ分かる話だった。

ハッタリはテントなんて持ってる様には見えないし。

そもそもあっても男と女が2人で狭苦しいテントの中で寝るのもどうかと思う。

いや、別にそんなので動揺するようほど思春期でも無いけどさ。

倫理観的に、あんまし良くない気がする。


……はあ。

明日は筋肉痛と寝違えが酷そうだ。


「……って、何寝ようとしてるんですか! 何か質問があるのでは無かったのですか⁉」


そういえばそんなこともあったな。

完全に忘れてた。


「はっはっは。ーー完全に忘れてたぜ。それで、陰陽師っつーのは何なんだ?」


「何か納得行きませんが……。まあ、良いです。陰陽師というのは、妖怪退治を生業とする者達のことです。(みやこ)で帝に仕える人間が多いですが、私の様に各地を旅しながら妖怪退治をする者もいますね」


都に(みかど)って言ってるし、ここが和風ファンタジーの世界なら、平安時代の設定に近いのかもな。

つーか平安時代まんまだ。


「へー。そりゃ妖怪退治出来るわな。……都にいなくていいのか?」


「都の方が依頼が来るからお金を稼げますし出世の可能性もありますが、手柄の奪い合いになりやすいですから。それが嫌で旅をしています。それに、人のたくさんいる場所は苦手なんですよね」


「ふーん……。なあ、その陰陽師ってさ、俺もなれるのか? もしなれるんなら少し教えてもらいたいんだけど」


ハッタリからもそのうち離れないといけないんだろうし、自衛手段は身につけておきたい。

……やや、というかかなり不躾(ぶしつけ)なお願いだけど、今こいつに教えてもらわないとどうしようもない。

……今のところ、刀しか戦う手段ないしな。

それにしたって強いどころか、ちょっと武道をかじったぐらいのやつにも勝てないぐらいの強さしかないだろう。


「……まあ、暇なときに少しずつでしたら構いませんよ」


「え、いいのか? 結構ダメもとのお願いだったんだけど」


「まあ、普通は教えませんよ。ですが私は暇ですし。そのうち私も陰陽師として教える立場になるのですから、教えることには慣れていた方が良いでしょう」


ハッタリやさしー。


「それで、あなたはどういう陰陽師になりたいのですか?」


「どういう陰陽師って、どういうこと?」


まんまオウム返しだ。


「その手にもっている霊刀(れいとう)を主軸に妖魔退治をするのか、それともお札や陣を主体にするのか。そういうことです。本当は他にもたくさんあるのですが……あなたにできそうなのはこれくらいでしょう。」


え、これ霊刀だったのか。

……響きがいいな!

かっこええのう。

詐欺神、魔法に関しては嘘つく癖に刀はしっかりしてんのな。

簡単な武器しか渡さないんじゃなかったのかよ。


ところで、霊刀ってなんだ。

多分、魔剣とかそういう特別な武器のことだろうけど。


「お札や陣を主体で頼む。刀の扱いなんて全然知らないからな」


「宝の持ち腐れって訳ですか。これ見よがしに霊刀なんて貴重なものを持ってるのに扱いが分からないなんておかしな人です。……どうせこのことを聞いてもまた大した情報は出ないのでしょうが」


そりゃあね。

ただのもらいもんですから。

情報を出せないのも勘弁して欲しい。

異世界から来たなんて、バレたら面倒ごとが起きる予感しかない。

……案外、へーそうなんですねー、とかで終わるのかもしれないけど。


「……今は旅の最中ですから、教えるのに準備が必要なものは教えられません。せいぜい、教えられるのは基礎だけでしょう」


ま、だよねー。

ハッタリの俺に対する認識は『旅の途中で着いてきたおかしな同行者』ぐらいの認識だろう。

そんなのにこうやって色々教えてくれてるだけでも、十分なおせっかいだ。

これ以上を求めたらバチが当たる。

かもしれない。


「おー、構わんぜよー。寧ろ教えてくれるだけありがたいわ」


「……そうですか」


「それじゃ、師匠と先生、どっちがいい?」


「……そうですか」


「あ、やっぱりハッタリも師匠がいいと思うか? じゃあ師匠で決定だな。ハッタリししょー。ハッタリ師匠。……うん、いい響きだ」


「……そうですか」


「話聞いてる?」


「聞いてません」


即答された。

なんだかんだで聞いてるのな。

ツンデレってやつか。


「師匠」


「……なんですか」


わあ、すっげえ嫌そう。

何でだ。

あれか、ツンデレって思ったからか。

師匠って心読めるんじゃねえの?

まあ、そんなので崩れるほど俺のメンタルは豆腐じゃないから構わないけどねー。


……しかし、どうしよう。

師匠って呼んでみたかっただけって言ったら怒るよなあ。

てか、ついこの間も同じ様なことをやらかした気がする。

うん。

直すのは諦めよう。

もう前世から続いてる俺の習性だから、仕方ない。


「師匠はどこへ向かっているのでしょうか? 旅をしていると言われていましたが……」


「気持ちの悪い敬語はやめなさい。寒気がします。……今私が向かっているのは、都ですね。少し前に式神で召集がかかりましたから」


……どうして俺が敬語を使うとこういう反応になるんだ?

詐欺神にも言われたんだけど、それ。


にしても、都かあ。

どんなのなんだろう。

このまま師匠について行くのもいいかもな。

……いやいや、それは流石に図々しいだろ。

んー、でもなあ。

それくらいしか今のところ行動目標立てられないからなあ。

まあいいや。

後で考えよう。


「式神って何さ? それに、召集? 知らない単語がいっぱい出てきたんだけど?」


「式神は、陰陽師の基本技能です。魔法を使うあなたには、ゴーレムと言った方が分かりやすいでしょうね。召集というのは、都にいない陰陽師へ都に戻ってくるように伝えられる命令のことです。発令するのは神祇省(じんぎしょう)ですが、帝の勅命と同じ扱いをされるので逆らえば死罪となります」


なるほど、ゴーレムか。

ゴーレムがテンプレ通りの存在なら、多分知能の低い人形とかそんなところだろ。

にしても、神祇省ねえ。

響きからして、多分陰陽師と政治が関係してるとは思うけど、もう質問するの面倒くさいしなあ。

放置でいいや。

それよりも気になるのは召集のことだ。

なんで師匠を呼び戻すんだ?

都には陰陽師がたくさんいるらしいから、人手不足って訳じゃないだろうけど。


……なんだっていいや。

都に行けば分かることだろ。


今日はもう寝よう。

眠い。


「お休み、師匠」


「早くねなさい。明日も早いですから」




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