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詐欺神

「これが異世界……なのかね?」


最後の記憶では寝たような感覚だったが、不思議と寝起き特有の頭にもやがかかったような感じはしない。

変なの。

まあ、本当に寝たってわけじゃないんだろうことを考えれば、当然かもしれないけど。

神様の不思議パワーってことで納得しとく。


あー。

そういや神様が武器を転移先に置いてるとか言ってたな。


「武っ器武器♪ どこですかっ……お、見っけ」


自分が転移してきた場所のすぐ近くの草陰から明らかに人工物なものの一部が覗いてる。

下手くそな歌が出たけど、それはまあ、武器っていうフレーズにはテンションが上がるからしょうがない。


と、自分に言い訳しつつ武器の全容を確認すべくそれを掴む。

何が出てくるんだろう?


草とぶつかり合いながら出てきたそれは……刀だった。


……それっぽい反りがはいってるし、刀で合ってるよな?


黒い鞘とセットで見つかったそれは俺の中二病を復活させかけるが、何とかその気持ちを抑えて俺は刀を鞘から抜いた。

現れたのは、吸い込まれそうになる輝きを持った刀身だった。

昔、俺が持っていた模造刀とは比べ物にならないような美しさがある。

ような気がしないでもない。

うん。

ぶっちゃけ、素人の俺にわかることなんてまったくないっす。

ま、良さげな物であることにかわりはない。

かっこいいしね!


「ぬぬう……これは神様も良い仕事してくれるねー」


あの神様良い奴だな。

まったく、過剰なものは教えないとか言ってたけど全然そんなことないじゃないか。

この分だと魔法も期待できそうだ。


魔法の使い方は頭に叩き込まれてるし、早速使ってみる。

まあ、やり方の確認が先だけどね。


えーと?

あ、魔法の発動って考えるだけでいいんだね。

意外と簡単だな。

つーことで、やってみる。



…………。

………………。


発動する気配、なし。


って、ざっけんなぁぁぁ!

あんだけ期待させといてそれは無いだろ⁉


発動しない理由を調べようにも、あいつに教えられてるのは魔法を発動させるための方法だけだから、調べようがない。

どうしよう。

男のロマンが。

刀だけでも十分だけどさ、やっぱり使いたい。


くっそー、あの詐欺神め。

今度会うことがあったらボコボコにしてやる。

無理だろうけど、ボコボコにする。


と、若干諦めの入った決意を胸に決めて。

左手に持っている刀を見る。


魔法が使えないってことは、これを使わないといけないんだよな……。

はあ。

さっきはテンションが上がってて気づかなかったけど、刀って扱いがかなり難しいイメージあるんだよな。

実際、かなり難しいって聞くし。

慣れてないとすぐ折れるぐらいには。


まあ、何が言いたいかっていうと、習熟に時間のかかる上に、素人が扱うと壊れる可能性の高い武器で戦うことに不安しかないぜっ、てことなんだけどね。


と、俺の近くにある茂みが風で揺れるのとは全く違う、不自然な揺れ方をしているのに気付いた。

人がいるのかな、とか思ったけどそれだったら声をかけてくるだろう。

それをしないってことは。


えっと。

……一体、何がいるんだ?

さっぱり分からん。



なんなんだろ?

……あ、魔物か。

剣と魔法の世界だもんな、そりゃいるか。

じゃなくて。

魔物遭遇、ちょっと早すぎません?

心の準備と装備と魔法に不安要素しかないんだけど?


俺、割とピンチじゃん!



……よし。

逃げるか。


一瞬、刀をてきとーに構えそうになったけど、それはやめて逃げることにした。

俺みたいなへなちょこでも倒せるようなのがいるとは思えないしな。


つーわけで、逃げる。

さらばっ!




「ーー待ちなさい」


あ、首根っこ掴まれた。

そんでもって持ち上げられた。

掴まれてる感触からして、腕一本で俺を持ち上げているらしい。

すげーな。

ファンタジー補正って奴なのか、こいつが怪力なのか。

よく分からん。


というか、しゃべれるんなら話しかけろよ。

逃げて損したわ。

……逃げれてないけど。


それはともかく。

今、俺は身につけている服を掴まれて持ち上げられているわけでして。

宙吊りになっているんですよね。

首に服引っ掛けて。


つまりはまあーー俺の首、絞まってます。

しかも吊るし上げてる本人は気づいてないみたいだし。

俺は声を出せないし。


……これ、 死ぬかもしんない。


「いきなり逃げ出すなんて、失礼にも程があります。私が妖怪の類ではないことぐらい、こんな危険地帯にこれるような実力を持っているならすぐ分かったでしょう? 自分の感知能力を超えてこちらを騙してくるような強力な妖怪であることを想定したのかもしれませんが、それは悪手です。一人でこんな場所をうろついているところを見るに、仲間が死ぬかはぐれるかしたのでしょう?でしたら」


「こぱっ」


おかしな音を立てて、俺の意識は深く沈んでいった。























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