表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/50

-1-

「そんなこと言ったって、あわれじゃないか!」

 里山 武蔵たけぞうは朝の出がけから妻の沙希代と言い争っていた。

「そのうち、いなくなりますよ!」

「そうは言うがな。毎日、前を横切って通勤する俺の身にもなってみろ! ひもじそうにニャ~ニャ~寄って来る子猫を、無碍むげにできるかっ!」

「見なきゃいいじゃない、早足で通り過ぎるのよっ!」

「お前ってやつは…」

 里山は一瞬、なんて不人情なやつなんだ、離婚だっ! と言いかけ、思わず言葉を飲み込んだ。あとがこわかったからだ。

 里山が言った公園は、里山の家のすぐ横にある町公園で古くからあった。毎朝、通勤する里山は、その前を横切り、10分ばかり歩いて駅から電車に乗る毎日だった。たまに近所の人と出会い、挨拶を交わす程度で、毎朝の通勤は、なんとも平凡な日々だった。それが、数日前から一変したのである。

 ある朝、公園横を横切っていた里山は、いつもと違う気配を感じ、ふと公園を見た。なんと! 里山の足下あしもとに小猫が近づいて来るではないか。里山は動物が嫌いな方ではなかったから、追っ払わずしばらくその場で立ち止まった。すると、ニャ~ニャ~鳴いていた小猫は、この人からは餌をもらえないな…と思ったか思わなかったのかは分からないが、公園のどこかへ姿を消した。そんな日が、数日続いていたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ