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1人の男性との出会い

作者: WAIai
掲載日:2026/08/12

カツ、カツ、カツ。

女性は急ぎ足で歩いていた。

時刻は夜。

周りは賑やかな場所から離れた普通の道。

店や家が少なく、頼りない。

ー嫌だ、嫌だ、嫌だ。

女性はヒールが壊れてもいいから、とにかく先へ進もうとした。

それというのも、駅を降りてから、ずっとついてくる足音があるからだった。

秋になったとはいえ、まだ薄着姿なので、襲われたらとどうしようかと、心配になってくる。

「はあ、はあ、はあ」

吐く息は荒く、一生懸命だった。

当然、後ろを歩く足音も速くなり、追いつかれそうだった。

まずいと思い、道を曲がると、急に小さな灯りが見えた。

「え」

声を出して見れば、煙草の火だったらしい。

側には外車があり、もたれるように煙草をふかしていた。

ー何だろう、この人。

顔は煙草の灯りで、陰影が渋く見え、年は30代くらいだろうか。

ふーとリラックスするように、煙草を吐き出す。

何者だろうと怪訝に思いつつ、横を通り過ぎようとする。

「ーおい」

急に話しかけられて、女性は最初、何なのか分からなかった。

そのまま行こうとすると、後ろの足音がたじろぐのが分かる。

ほっとしたのも束の間、男性と目が合う。

煙草の灯りで、陰影は和らぎ、整った顔だなと分かるようになってきた。

ー何で、こんな良い男が…?

不思議に思っていると、男性が急に動き出し、後ろへ向かっていく。

女性は「あ」と驚き、自分が来た方向へ走っていく男性を目で追う。

男性はちょうど曲がってきた足音の主を掴むと、首を回してしめる。

「痛ててて…!!」

追いかけてきたのは、中年の男らしく、男性が力を込めたのか、更に痛そうな声を上げる。

「く、くそ…!!」

男は来た道を走って逃げて行き、途中で転んだようだが、誰も気にする者はいなかった。

「あの…。ありがとうございました」

勇気を出して声をかけると、男性は煙草を道に捨て、足で踏みつける。ちゃんと火が消えると、小さな袋に回収する。

「1人でこんな時間に歩くな。いいな?」

「は、はい…!! すみません」

有無を言わせない迫力があり、かっこいいと素直に思ってしまった。

何故か分からないが、この人と離れたくないと思ってしまい、スマホを取り出す。

「あの…!! 連絡先を交換してもらえませんか?」

「は? 俺の連絡先を知ってどうするんだ?」

「あの、その、お礼とか…」

「いい。気にするな」

手を振って断られたが、女性はスマホをしまい、名刺を取り出す。

「良かったら、連絡をください」

「気が向いたらな」

男性はそう答えると、女性をじろじろと見てくる。

何か透けて見られていそうで、たじたじとなる。

「年、いくつだ?」

「22歳です。大学4年生で…」

「なるほど。大学生で名刺を持っているのか」

「就活用に、作ったものなんですけど」

「詳しくは聞かない。分かった、もらっておく」

「は、はい!!」

嬉しそうに言うと、男性が親指で愛車を示す。

「乗っていくか? うちまで怖いだろう?」

「え…でも」

「変なことなんかしないぜ。いいから、乗れ。送っていってやる」

「…じゃあ、お世話になります」

ここは甘えることにし、助手席を開けてもらう。

車内はエアコンをつけていたのか、ひんやりとしており、秋の風を感じさせるような室温だった。

女性は躊躇しながら、シートベルトをすると、男性が聞いてくる。

「うちの住所は…?」

「えっと…あそこの近くです。お願いします」

「分かった。安全運転で行くから安心しろ」

男性が名刺をドアポケットに入れ、エンジンをかける。

普通車よりも静かなモーター音。

いい車に乗っていると感じていると、ゆっくりと動き出す。

「俺と会えて、ラッキーだな。なかなかいないぞ、こんな上玉な男」

自分で言うだけあって、男性は明かりを受けると、まるで龍のような印象を受ける。

女性は大人しくしながら、車がうちに着くまで、男性の優しさに委ねることにした。

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