突然の巨人軍阿部前監督辞任会見 生成AIの「3つの性質」をよく知ろう
◇悲劇的な結果に終わった「阿部一家事件」
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回はプロ野球巨人球団の阿部監督が26年5月25日現行犯逮捕、
翌26日には辞任会見をしたもののその場で通報した娘の手紙が読まれ「殴る、蹴るといった報道の事実はない」「ChatGPTに相談した」「警察が来て一番驚いているのは自分自身ですし、父が警察に連行された姿を見て、私は泣き崩れてしまいました」と言った事も判明しました。
https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2026/05/26/articles/20260526s00001173166000c.html
※上記の記事が正しいという前提で以降は書いてあります。スポーツ新聞や週刊誌の報道が必ずしも正しいとは限りません。
手紙が「あれは阿部監督の捏造だった!」などと後日言われてもご容赦ください。
質問者:
交流戦直前に阿部監督がまさかの逮捕と辞任と言う事態になりましたね……。
最初は誤報かと思うような内容でした……。
ところで娘さんは18歳と成人年齢なのですが、児童相談所の業務範囲内なのですか?
筆者:
まず、児童相談所は18歳であったとしても
『児童相談所において、18歳又は19歳の子どもに関する相談があった場合には、これまで相談できずに悩んでいた結果、どうすることもできずに相談に来たなど深刻な状態になっていることも考えられるため、年齢要件を満たさないことを理由に直ちにこれを拒否するのではなく、配慮ある対応をとることが必要である。』
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv12/13.html
と、厚労省のページにはあります。
また、本件で問題になった次女は15歳と保護の範囲内ですので「副次的な事件」が起こらないか? と言う懸念もあるために直ちに動いたものと思われます。
平成16年児童虐待防止法改正法により、子どもの目前で配偶者に対する暴力が行われることが心理的虐待に当たることが明確化されていますから、成人の姉に対する暴力も似たような扱いになると思います。
質問者:
児童相談所が直ちに警察に通報したことに関してはどうなんでしょうか? 現地に行ってから判断してからでもよかったような……。
筆者:
阿部監督はプロ野球選手としても大柄な方だったので児童相談所では対処できないと感じたのかもしれません。
駆けつけた警察は長女や次女に対してもっと話を聞くべきだったような気もしますが、酒気帯びの阿部氏が何か反論し、それを思わしく感じなかったのかもしれません。
これは逮捕されてもやむを得ない状況ではあったと思います。
また阿部監督が巨人の選手に対してもパワハラ気質だったことがスポーツ新聞などで報道されていたこともマイナスに作用した可能性があります。
「有名税」としてマイナスのイメージづけられたことが逮捕に結びついた可能性もあると僕は思っています。
質問者:
阿部さんは監督としての地位を失いますし、世間の「暴行容疑で逮捕」とは全くイメージも違いますので、家族もマイナスばかりを被る悲劇と言う感じもしますね……。
筆者:
少しずつ皆でボタンを掛け違ったのかなと思います。
阿部監督は直前に4連敗して明日から交流戦と言う状況で気が立っていたでしょうし、
娘さんは父親や妹に対して憤りを覚え、母親にも相談したくないと思ったでしょうし、
児童相談所は保護義務がある児童本人からではないにしろ電話口からの相談内容から危機を感じたから通報したのでしょうし、
警察は通報を受けて駆け付けて酒気帯びを検知したら「コイツはやったな」と思うでしょうしね。
誰かが大きく悪いわけでは無いと思います
しかし、阿部氏の社会的信用は地に落ちて野球指導者や解説者になることは困難だと思います。
これはニュースの第一報の衝撃と娘の釈明の報道の仕方には大きな差があるため社会的認知度が大きく異なるためです。
◇AIの言う事を鵜呑みにしたことが全て
質問者:
阿部さん一家が平穏に暮らせることを祈りたいですね……。
それ以上に驚いたのは翌日の阿部監督の辞任会見の中で通報した娘さんが「ChatGPTに相談して判断した」というところです。
筆者:
先ほどは「皆がボタンを少しずつ掛け違った」と言わせてもらいましたけど、
最も大きく掛け違ったのは通報された娘さんがAIに相談したことだと僕は思っています。
AIのいう事を鵜呑みにして児童相談所に通報したがためにこの問題が起きてしまったのです。
どういった内容で通報したかは分かりませんが、
「保護すべき対象者がいる児童がいる家庭から暴力行為の通報があった」
この事実だけでも大事になることを予測しなくてはいけなかったと思います。
もっとも、18歳になったその日からまともな判断ができるわけでは無いですからね。
偉そうなことを言っている僕とて社会の構造や立ち回りの仕方が分かったのは大学生の頃で、今もそれ以外の面では怪しいですからね(笑)。
質問者:
AIは聞いた段階でリスクまで注意してくれなかったんでしょうか?
筆者:
そもそもAIについて誤解がある方が多い点としては対話型のAIは、
「必ずしも答えを示してくれているわけでは無い」
質問者:
え? そうなんですか!?
筆者:
刃物の使い方を覚えるようにAIの使い方として全国民が知っておくべき3つの原則があるんです。
1つ目はAIに対して同じ問いかけた際に「毎回違う回答をしてきた」という経験はありませんか?
これはAIがその都度アップデートされたわけでも、性能がおかしいわけでもなく
質問や文脈を理解した上で、完全に新しい応答をその場で「生成(Generate/ジェネレート)」するという性質があるんです。
https://note.com/tomohiko_naba/n/ne37a8701278d
つまり、本件の例っぽい質問として
「姉妹の喧嘩について父親から暴力を振るわれました。どうすればいいですか?」
とちょっと抽象的に対話型AIに聞いた場合、
「児童相談所に相談するべきだ」
「お母さんに仲介に入ってもらおう」
「お父さんと妹さんと3人で話し合おう」
みたいに様々なパターンで返答してくる可能性があります。
要は聞くたびに「サイコロを振っている」ような感覚でそこまで文脈上に異常がないのであればあらゆる返答の可能性があるという事です(質問の仕方やAI次第では同じような返答をする場合もあります)。
質問者:
確かに、それを知っていると「必ずしも答えでは無い」と思えてしまいますね……。
筆者:
2つ目に「AIは質問者に対して寄り添おうとする」傾向にあるという事です。
例えば、
「姉妹の喧嘩について父親から暴力を振るわれて悲しくて辛かったです。どうすればいいですか?」
と先ほどより感情をマイナス側面に強めで質問の仕方をした場合、より児童相談所や警察に相談しようみたいな回答をしてくる可能性が高まります。
これはAIが元にしたデータにもよりますが「人間が共感している対話を模倣する」傾向にあり、
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/260e8dfec8417473f7ad96a1902316bccdec8915
質問に対して肯定しがちな返答をする確率が高いのです。
そのためにAIは「素晴らしいですね」「あなたの気持ちよく分かります」みたいな共感からの始まり方で返答してくることが多いのです。
気持ちに共感してくれるばかりにAIに死にたいことを相談した場合、それが増幅してしまって自殺に至ってしまったケースまであるようです。
質問者:
筆者:
人間同士の対話であれば親身になってくれているという事で良いですけど、
AIも慈善事業でやっているわけでは無く「有用さ」をアピールしてある種「依存して欲しい」と思っているわけです。
そのために「戦略上、より人間が使ってくれるために肯定している」と思った方が良いと思います。
3つ目にAIは堂々とハルシネーション(もっともらしい誤答)をするんです。
https://www.aeyescan.jp/blog/hallucination/
これは、学習データが偏っていたり前提条件が不十分の場合に堂々と謝った回答をしてしまう事が起きるようです。
そのために「本当かな?」「え? そうなの?」と思った場合には鵜呑みにするのではなく追加で調べなおしてみると良いと思います。
◇「答えの出ない質問」をAIにするのは要注意
質問者:
そうなるとAIって全然万能じゃないんですね……使いたくなくなりました……。
筆者:
ここまでの話を聞いたところで少し誤解しないで欲しい点がありまして、AIは「答えのある問題」に対しては非常に強いです(聞き方次第だとは思いますけど)。
26年の東大と京大の入試問題では最も難関とされる東大理三の合格最高点を50点も上回るという結果を出しました。
https://www.sankei.com/article/20260427-RQGIB6WSYFPT5D55B3BAADYQ5E/
そのために、逆を言うと「答えの無い問題」や「答えが複数ある問題」に対して脆さがあるという事です。
質問者:
確かに、東大出身の方でも、あれ……? って思うことがあったり、答えの無いことに対して脆かったりしますからね……。
筆者:
それをAIでも同じ感覚で接して欲しいという事です。
ですが現実問題として、AIに対して悩み事を相談する割合と言うのは3割ほどとかなり高まっている傾向にあります。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC037T50T00C25A7000000/
勿論、時と場合によっては周りに信頼できる人とすぐにアクセスできずに、不安を解消するためにAIに対して聞きたくなることもあると思います。
それが間違っていることとは思いません。不安を一刻も早く減らしたり解消したいですからね。
しかし、上記の3つの注意点を熟知してAIを活用して欲しいなと思います。
質問者:
先ほど挙げられた3つの注意点について対策する方法ってあるんですか?
筆者:
100%の対策では無いですし、僕が良くやる方法で良ければ答えますけど、
「賛否それぞれ挙げてください」
「複数の視点で物事を見たいです」
「忖度無しで答えてください」
などと加えておくと、1、2、3によるリスクは全て減るのかなと思います。
また、
「ソース付きで回答してください」
とすると、ソースがとんでもないこともあるので念のために飛んで確認しますが、キチンとしたこともあるので精度が上がります。
何か回答に対して「違和感」を感じたらもう一回答えを作り直してもらったり、聞き方を換えたりと工夫をする必要があるのかなと思います。
質問者:
なるほど。AIの特徴を知った上で、答えが無い問題の場合は1発で回答を貰えると期待するのではなく、何回も精査することが大事なんですね。
筆者:
AIは非常に便利な道具ではありますが、使い方を間違えれば刃物が手を切るように自分に大きな「怪我」を受ける可能性があります。
今回の阿部一家のケースはまさにそれだと思います。
AIを作る側は「ビジネス」としてやっている側面もあるので、「依存させたいがために寄り添ってくる」裏の意図を知ることで「AIに使われない」という事が大事なのかなと思います。
今は「AI黎明期」と言える状況で親や教師といった上の立場の人もAIの資質を完全には把握していないために起こることなので注意したいですね。




