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第3話:月明かりの卒業、そして新しい春

ついに、最終話です。

ここまでトモヤとユウナの歩みを見守っていただき、本当にありがとうございます。


深夜の体育館、月明かりの下で。

七年前に届かなかった「卒業証書」を、トモヤは手渡します。

触れられない指先が、一瞬だけ重なった奇跡。

そして、ユウナが消えた半年後、トモヤの前に現れた「あの人」とは――。

涙のあとに、少しだけ前を向けるような温かい結末を。

どうぞ、最後まで見届けてください。

 深夜の小学校、誰もいない体育館。

 月明かりが、高い窓から青白く差し込み、埃の舞う空間を照らしている。季節外れの卒業式。

「……卒業生、ユウナ」

 トモヤの声が、ガランとした館内に響く。

 パイプ椅子に背筋を伸ばして座っているのは、150センチ程の小さな背中。

 トモヤの手には、画用紙にマジックで書いた不格好な「卒業証書」が握られていた。

「……はいッ!」

 ユウナが立ち上がり、トモヤの前へと歩み寄る。

 その体は、今や背景の跳び箱が透けて見えるほどに、淡く、儚くなっていた。

「……君は、本校の全課程を修了したことを、ここに証する。……よく、……よく頑張ったな。ユウナ。……卒業、おめでとう」

 証書を差し出すトモヤの手が、止まらないほどに震える。

 視界が涙で滲んで、ユウナの顔が二重にも三重にもぼやけていく。

「……ありがとう、お兄ちゃん。……私、お兄ちゃんに会えて……世界で一番幸せな卒業生になれたよ」

 ユウナが、そっとトモヤの頬に手を伸ばした。

 あの日、何度触れようとしてもすり抜けたその指先が、一瞬だけ――奇跡のように、熱い体温をトモヤに伝えた。

「泣かないで、お兄ちゃん。……私、もう怖くないよ。……楽しかったよ、大好きだよ……!」

 ユウナが最高の笑顔を見せた瞬間、彼女の姿は無数の光の粒となって弾けた。

 抱きしめようとしたトモヤの腕の中を、温かな光の風だけが通り抜けていく。

 静まり返った体育館。

 トモヤの手元には、あの日届かなかった卒業証書と、ユウナが持っていた小さなキーホルダーだけが残されていた。

「……う、……うあああああぁぁッ!!」

 トモヤは、誰もいない床に膝をつき、子供のように声を上げて泣き続けた。

 半年後。

 季節は巡り、街には桜の蕾が膨らみ始めていた。

 トモヤは新しいバイト先で、開店の準備をしていた。

 カランカラン、とドアベルが鳴る。

「……おはようございます! 今日からお世話になります、佐藤です!」

 入ってきたのは、少し大人びた、165センチほどの美少女だった。

 トモヤは、手に持っていたトレイを落としそうになる。

「……えっ? ……ユウナ……?」

 思わず零れた名前に、彼女は一瞬止まる。しかしキョトンとして小首を傾げた。

「……え? すみません、人違い……ですかね?」

 トモヤは、彼女のカバンに揺れる、見覚えのある「キーホルダー」を見つめた。

 それから、ゆっくりと――眉尻を下げて、穏やかに微笑んだ。

「……いや。……佐藤さん、よろしく。……待ってたよ」

「はい! よろしくお願いします!」

 春の光が差し込む店内で、新しい物語が、静かに幕を開けた。

(完)


完結です! 最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

「……佐藤さん、よろしく。……待ってたよ」

トモヤの眉尻を下げた微笑みが、読者の皆様の心にも届いていれば嬉しいです。

ユウナが導いてくれたえにしが、新しい春を連れてきてくれました。

皆様の大きな支えがあったからこそ、この物語を形にすることができました。

もし少しでも「感動した」「佐藤さんのその後が気になる!」と思っていただけたら、最後に【☆☆☆☆☆】や感想をいただけると、作者は嬉しくて体育館の屋根まで一本背負いしてしまいます!

次の物語、あるいは「トモヤと佐藤さん」の番外編で、またお会いしましょう!

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