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ラブコメ

褐色キャラのススメ。〜異世界男子を褐色肌にしてみせます!

作者: しぃ太郎

よくあるゆるふわ設定です。


温かい目で読んでくださると嬉しいです。

「出でよ、日焼けビーム!紫外線ゼロバージョン!そして、あわよくばな感じの日焼けブーム!」

 

 私は手を前に突き出し、上半身裸の男性に魔力を注いだ。


 これ、本当はNGである。上半身だけでも、裸の男性を見て逃げ出さない女性はそのまま痴女扱いされてしまう。


 この世界の貴族令嬢には、一発アウトの行動が幾つも存在する。

 淑女は足首を見せては駄目。

足首がどうしたっていうのかしら。エッチなの?足首が?


 紳士と2人きりで部屋に居るのも駄目。

それを目撃されでもしたら、不埒な事をしていたと決めつけられ結婚相手すら見つからない。


 あまり商売に関わっては駄目。

それは女の仕事では無いから。


 子ども、特に男の子を2人以上産めないと駄目。

それを理由に離婚される可能性もある。


 恋愛結婚なんて駄目。結婚は家同士の契約だから。

ふぅ。

息をつく。


(オイオイオイ!人生厳しくない!?これ、なんて酷いパワハラ、セクハラ、モラハラ世界なの!?)


 私は、貴族令嬢に転生した。

ラッキー?とんでもない。とんだハラスメント世界だ。


 私のビームもとい魔力を浴びていた男性が身体を起こして手早く服を着た。

「今日も見事だった。感謝する、ライラ嬢」

 ここに来た時よりも、健康的な小麦色の肌になった尊き方に返事を返す。


「いえいえ、とっても素敵な仕上がりですわ。ムラもなく、とても魅力的だと思います」

(我ながら素晴らしい出来栄え。いっぱい研究した甲斐があるわ!)


「そして、何度もご説明させていただいているので不要かもしれませんが、この魔法の効果は2週間程です。その後は少しずつ色が抜けていくのでお忘れなく」

「ああ。また予約を取っておこう」

 

 私は仮面をつけ、ライラという偽名で活動している。要は貴族令嬢のタブーの1つ、商売をしているのである。

 うん、クズ家族に黙って作ったこの商会が、今やあまり名前を出してはいけない方々の御用達になったのだ!


 私のお店は定期的に訪れてくれる高位貴族の子息が主なターゲット層。それなりの方々が会員登録をして下さっているので、儲けは結構な額になる。


()()()()()()☆ライラ、またのお越しをお待ちしております〜」


 ざっと頭を下げる店員と私。

ずっと扉の前に控えていた侍従が扉を開けて、お客様をお送りする。

――この流れ、一流のお店になってきたわね!


「リラお嬢様。只今、下の応接室に『例のお方』がお越しです」

 この店を作る前からの侍従の彼。実家から引き抜いて雇っているのだ。勿論、私の魔法のお陰で健康的な小麦肌!


 うん、今日もいい褐色男子ぶりだわ。

彼ともう1人側近の2人だけには私の名前も身分もバレている。なんなら、前世の記憶がある事も知っている。


 リラ=サンマリン伯爵令嬢。

幼少期に、前世の記憶が蘇った私はこの自分の名前に笑った。

サンマリン。ちょっとサンマリンって!

微妙にアレではないの!


 そして、この転生した世界には色白な男性しか居ないことに絶望した。

人の肌の色をとやかく言いたくないが、これは差別とかの話では無いのだ。


 せっかく転生したのに、()()()()()()()()()()()


 前世では日焼けサロンに通う男性が少し苦手な、二次元を愛したオタク女。

 あまりにも自分と違うから、付き合うなんて考えたことも無かった。


 だが、二次元においては別だ。

褐色男子。野性味あふれる性格、おおらかで豪快な性格?それとも、何処かの国の複雑な事情を持つ王子様?

 想像と妄想が無限に広がる褐色キャラが、前世の私は好きだった。


 しかし、せっかく異世界みたいな場所に転生してみれば、周りは色白。貴族だから。貴族男性も自らの労働を恥としている。


所謂(いわゆる)青い血ってやつなのかしら)


なので肌が白ければ白いほど、労働とは関係無いというステータスになるらしい。


 ――なにそれ。男性は健康的な方が魅力的でしょう?

 勝手な、ただの私の好みで悪いけれど『健康的に日焼けした男性の方がいい』じゃない!

という私のワガママから始まったこのお店も、『例のお方』のお陰で上手くいっている。


「わかったわ、次のお客様には申し訳ないけれど、少しだけお待ちいただけるように話をして。おもてなしは宜しくね」

侍従の彼に色々と指示を出して、応接室へと足を速める。


 部屋の扉を開けて、私は仮面を外し彼に詫びた。

「ルシアン様!お待たせしました!申し訳ありません。私に何かご用でしょうか?」


 ルシアン様も、私の身分を知っている。そして私の最大の後援者だ。

褐色の肌に、艶のある金髪を緩く肩辺りで纏めている。そして深みのある碧眼。


 ドンピシャだ。思わずサムズアップする前世の私がいる。

前世の記憶が蘇り、褐色男子が居ない事に絶望していた私が幼少期の時に出会った、不遇なこの国の王子様。


 同盟国出身の王妃様の息子で、正統な王子様。でも、この国の貴族達と顔立ちと肌色が違った。そのせいで、王妃様もルシアン様も苦労されていたらしい。


 初めてお会いした時に、ビビビッと身体の中を何かが(ほとばし)った。


(理想的な褐色キャラ!え、この国の文化のせいで不憫な身の上なの?だから、こんなに草臥(くたび)れた服しか着ていないの?損害だわ!上手く言えないけど、世の中と私に対しての色々とした損害だわ!)


 貴族令嬢は自由に生きられず、父親が決めた相手に嫁ぐ存在。彼は、同盟国出身で本来は対等な立場の筈の王妃様から生まれてきたのに、不遇な扱いをされている存在。


 どうしても、許せないこの文化。

彼が居るなら変えられるんじゃないだろうか?

そう思ったら、どうしてもどうしても今の環境をぶち壊したくなった。


――それがルシアン様との出会い。


 その後の私の行動は多少割愛するけれど、王妃様に気に入ってもらえ、子供ながらに資金を得た。


それを元手に、褐色男子の為、ルシアン様の為に褐色キャラを世の中に普及する活動に勤しんだのだ。


 やはり、1番は貴族女性の心を掴む所からだと判断した私は、前世の記憶をフルに活かし、かの有名なロミジュリ(色々とごめんなさい)を、肌の色のせいで反対されるロミオと、彼に恋をするジュリエットに変えて劇団に売り込みにいった。


 これが当たった。前世の名作だもの。ある意味当然だったかもしれないわ。


 でも、そのおかげで王様と王妃様の恋までこの物語に当てはめる方々が現れ、もとから顔立ちの整っていたルシアン様のイメージまで向上したのだ。


 最初はツンツンしてたルシアン様が、今では私に会うためにここまで来てくれるようになった。

これが努力した結果だわ、嬉しい。


「いやいや、そこまで畏まらないでよ!リラ嬢が欲しがっていたオイルの見本を何種類か持ってきただけだからさ」

 ヒラヒラと手を振りながら人懐っこい笑みを浮かべる。

あぁ、私の魔力と相性のいいサンオイル!

確かに彼に頼んでいたのだったわ。


「あぁ、ありがとうございます!助かりますわ。そしてルシアン様は、今日も素敵な褐色キャラですわ。少しチャラく見せているけど、実は影がある王子様なんて!」


 あんなにツンツンしてた(以下略)。


「チャラ?またいつものリラ嬢の言葉だね。僕を勝手に評してからの色々ダダ漏れな君の独り言、ちょっとだけ抑えて?流石に色々恥ずかしいっていうか…」


 あ、ダダ漏れって言われてしまったわ。

流石に不敬だった。気を引き締めないと。


「そういえば、劇団の興行収入を拝見して下さいました?過去最高ですわ。最近は褐色のメイン俳優が貴族女性に人気なのです!思った以上に、上手くいっていますわ」


 グッと拳を握る。


「あの演目のお陰で、上位貴族のご子息が私のサロンに通って下さる様になりましたわ。噂が噂を呼び、今では大人気なんですの。この後も沢山の予約が入っていますわ」

「リラ嬢には感謝しきれないよ。最近は陛下と王妃殿下の仲も良くてね…。あの演目もお忍びで行ってきたらしいんだ」

「まあ!それは嬉しいですわ!」


 ここで、彼には珍しく咳払いをした。

「それでなんだけど、君も最近は店が忙しくて魔力ばかり使っているみたいだし、休暇でも取ったらどうかな?出来れば一緒に美味しいものでも食べてさ、君と行ってみたい歌劇もあるし。どうかな?」


 ふふふ。ルシアン様とのデートを味わえるんですか?

なんてご褒美なんでしょう。


「是非是非、ご一緒したいです!あ、でも。先にお得意様のご子息の方々にも誘われていますから、その後に…」


――だん!

 応接室のテーブルにルシアン様の足が当たったみたい。大丈夫かしら?ちょっと痛そうにしているわ。


「…排除しても次から次と湧いてくる…。リラも危機感が無さすぎる…。もう外堀を埋めるとか生温いよね?」


「ルシアン様、今足が…」

心配して手を伸ばしたが、その手を掴まれてしまった。


 後ろで、侍従が呆れた様に首を振っていた。

例によって彼も褐色男子だ。少し甘やかし過ぎたかしら。生意気な態度ね。

「ねぇ、リラ?君が僕の見た目が好きなのは知っているよ。でも、それ以外にもあるよね?実は二面性のあるギャップってやつも好きなんだよね?」


 あーーー!誰だ、バラしたのは!後ろの彼ともう1人しか思いつかない!裏切られたわ!


 それにそれに、普段笑顔を絶やさないルシアン様の真っ直ぐな瞳。少し強引な雰囲気。

――これは無理。


 予約しているお客様、御免なさい。もうちょっと時間が押しそうです。

見た目も中身も実は大好きだった彼から口説かれて逃げられません。


 大好きな褐色キャラを布教した結果、言動は軽く見えて実は恋愛感情が激重な王子様を誕生させてしまいました。


え、全部私得だったわ。


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