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第9話 悪女の正体(王太子視点)

     ◇◇◇  アンジェロ王太子の視点になります(回想) ◇◇◇



監獄に入れられていた俺の目の前に、ロザリア・バロッチが姿を表した。


「いい気味ね、ティナ・レオーニ。あなたには監獄がよく似合っているわ」


「た、助けてくれ。俺はお前の愛したアンジェロだ。アンジェロ・ミネッティなんだ。本当だ。信じてくれ」


ロザリアはより一層冷酷な目で、俺を見つめていた。


「悪あがきも甚だしいわね。とっても醜いわ。まあ、それがあなたの本性なんでしょうけど。人は窮地に陥ると人間性が出るって本当だったのね。とっても勉強になったわ」


「いや、本当に俺はアンジェロなんだ。俺は……」


「ピーピーうるさいわね。少しは静かになさい」


あああ、俺の話を全然聞いてくれない。これがあの優しかったロザリアなのか……


「なんだか全然分かっていないようだから、教えてあげるわ。あなたはハメられたのよ、この私に」


「はめられた? いったいどう言うことだ」


「あんたいったい今どうしてここに閉じ込められたかすら、分かっていないんじゃない?」


そうだ。なぜ俺はここに閉じ込められているんだ。確かにいつの間にか女の姿になったけど、俺をここに閉じ込める理由なんて全然ないはずだ。倒れていたら、ここに連れてこられて、王太子の俺に何をするって言ったら、お前はティナ・レオーニだろうと言って誰も聞いてくれなかった。それどころか、監獄の中で叫び続けていたら、ティナ・レオーニだと認めるまで、激しく鞭で打たれてしまった。


鏡がなかったから直接見ていないが、確かに自分の体つきや手足はティナに似ている。しょうがないから俺はティナとしてでもいいから、彼女の実家である侯爵家の連中が助けに来てくれないかと思って待っていた。


「どうして、俺はいつまで経ってもここを出れないんだ。ティナが何かしたのか?」


ロザリアは一旦不思議そうな顔をしたが、すぐにあざけるような顔つきに変わった。


「ふふふ、ついに頭までおかしくなってしまったようね、ティナ。それならもう自分が殺されようが何されようが、どうでもいいわね」


「殺される。なんでだ。なんで俺が殺されなきゃならないんだ」


「いいこと、あなたは屋上から飛び降りて、アンジェロ殿下にぶつかったのよ。それで今、捕まっているの、殺人未遂でね」


「俺はただ、友人と話をしていただけだから。何もしていないから」


ロザリアはいきなりムッとして言った。


「いい加減に認めたらどうなの。ティナってあなたのことよ。あなたはアンジェロ殿下から振られたショックで屋上から飛び降り、無理心中を図ったのよ」


そ、そうだったのか。そんなことがあったなんて。


「彼が無事でいてくれてよかったわ。まあ、殺人未遂であなたが処刑されるのは、ほんとうに好都合だったけど」


「俺は死刑になるのか。いやだ。助けてくれ。俺は何もやっていない。やっていないんだ」


「もちろん、あなたは何もやっていないわ。だって突き落としたのは私なんだもの。まさか、アンジェロ殿下まで巻き込むことになるとは思わなかったけどね」


「お前か、お前がやったんだな。全て」


「だってしょうがないじゃない。婚約破棄なんて簡単にうまくいかないのよ。色々と貴族社会の関係もあるからね。あの頭の悪いアンジェロ殿下は全然知らなかったみたいだけど。でも、あなたが屋上から飛び降りたことで、チャンスが生まれた。しかも、好都合なことに殿下への殺人未遂の罪まで被ってもらって。本当にありがとうね。おかげで我がバロッチ伯爵家も成り上がることができそうだわ。侯爵家が堕ちていくかわりにね。レオーニ侯爵家はあなたのおかげで、とんでもない不名誉を被せられたから。あとは私があのバカな王太子殿下と一緒になれれば、全てうまくいくのよ」


「バカ、バカだとう」


「あらだってそうじゃない。バカで子供っぽくて見栄っ張りで。しかも、簡単に人の言うことを真に受けちゃって。あれじゃあ、王になっても危なっかしいから、私がうまく操縦してあげなくっちゃね」


「許さない。絶対許さない」


「あら、あら。負け犬さんは大人しく、檻の中にいてちょうだい。そのうち殺処分されるけど」


「チクショー」


俺は鉄格子をつかんで激しく揺すった。


「本当に下品な人ね、あなたは。見るに耐えないわ。本当に侯爵令嬢とは思えないような態度。いつも猫をかぶっていたのね。言っておくけど、あなたが全て悪いのよ。王太子と婚約を成立させ、周りみんなから愛されて、しかも、あの、氷の貴公子まであなたに熱い視線を注いでいるっていうじゃない。信じられないわ。どれだけあなたは強欲なの。思い知るがいいわ。私の方が美しく、貴族としての嗜みも洗練され、服装だってなんだって全てのセンスが磨かれている。完全に人間としての格は私の方が上なのよ。たまたま、あなたが侯爵家に生まれただけ。ただそれだけなのに」


そして、彼女は去り際にハッキリとこう言った。


「ざまあみろ」

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