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少年の言葉

作者: 古尾 光

ある小さな国の小さな村に、動物と話せる少年がいた。

少年はとても純朴で、動物にも村の人にも、愛されていた。この少年のおかげで、村の家畜は皆おとなしく、野犬も、家畜を襲うこと無く、大変平和だった。

ある日、少年の力に目を付けた大きな国の人間がやってきた。

小さな村の人たちは、必死に抵抗したが、敵うはずもなく、少年は無理矢理つれていかれてしまった。

大きな国についた少年は、鉄でできた施設に入れられ、外に出ることも許されなかった。無機質な施設の中、少年は故郷を思い、ひどく落ち込んでいた。

そんな少年の心を感じた動物たちは、少年のいる施設の前で、鳴き続けた。その動物達の悲痛な叫びに、少年の解放を望む人々もでてきた。

しかし、意固地になった大きな国の上層部は、無慈悲にも動物達の殺害を命じた。

次々と消えていく、動物達を感じながら、少年はひどい怒りを感じていた。

しかし、少年にはどうすることもできない。

無力感を感じながら、窓を眺めていると、一匹の虫が張り付いた。

虫の声は聞いたことがないが、少年はありったけの思いで、その虫に念じた。

(この酷い国の人たちを、こらしめてください)

そんな思いを、知ってか知らずか虫はどこかに飛んでいってしまう。

翌日、その国に黒い影が覆った。

蜂や蝶、バッタにムカデ、ありとあらゆる虫たちが、少年のいる施設に集まり始めた。

それだけではない、他の場所にも虫は大量に現れた。田舎では畑は食い荒らされ、町では仕事場に虫が現れ仕事もできない。

恐怖を感じ、少年を解放するべきだと言う人もいた。しかし、ほとんどの人は少年にした仕打ちを棚にあげ、被害をもたらした少年に処罰を望んだ。

そうして、少年は国を乱した罪により、死刑になってしまった。

国は処罰の日まで、また悪さをしないように、施設は大きな壁に覆われ、虫も一匹のこらず殺してしまった。

耳をすましても、なにも聞こえない。すがるものがなくなった少年は、神に祈る。

(私が何をしたのでしょう、私はただ静かに暮らしていただけです。この国の人達は、世界で一番自分達が偉いと思っています。あなたの力で、この国の人たちを懲らしめてください)

そんな思いも虚しく、少年は次の日殺されてしまった。

しかし、少年の願いはある形で実現する。

大きな国の人々が、次々と病気で死に始めたのだ。有効な対処法も見つからぬまま、病気は爆発的な勢いで広まり国の人口は激減し始めた。

人々は神に祈った。しかし、細菌に思いが通じる人間は、誰一人いなかった。

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