第一話 嘘の二人
〇飲食店前
飲食店の前に立ってるサクラ。
ナレーション「彼女の名はサクラ。まだピチピチだがこう見えてアラサー。彼女はビッチでいつも男を狙っている。」
サクラの前に現れる中村。
中村 「マッチングのサクラさんでか?」
ナレーション「彼の名は中村。顔も性格もよく真面目だがモデソロのサラリマンだ」
サクラ(M)「あら、イケメン! よっし、この男 を狙うぞ
サクラ「はい、初めまして~」
中村 「初めまして。中村と申します。中に入りましょう」
○飲食店
店員 「注文は以上でよろしいですか?」
サクラ「中村さん、ビール飲まないのですか?」
中村 「すいません。僕、お酒には弱くて…」
サクラ(T)「あら、かわいいところもあるんじゃない~。ますます欲しくなったわ
サクラ「ビール二つください」
中村 「あの、僕お酒は……」
サクラ「二つも私が飲みますから」
中村 「そんなに飲むと明日大丈夫ですか?」
サクラ「平気です! 明日は予定とかないし!」
中村 「そうですか」
サクラ「中村さんはどんなお仕事を?」
中村 「jj会社の経済の仕事をしています」
サクラ「あら、あの会社知ってる。結構有名ですよね」
中村 「サクラさんはどんな仕事を?」
サクラ「歌舞伎町にあるキャバクラで働いてます。お恥ずかしいですが」
中村 「そんなことはありません。いやでも接客をするとか。無理でもポーカーフェイスをするその度胸。誇りと思ってくれていいと思います」
サクラ「僕はお金をくれるおじいちゃんが来るから楽しいのですが」
中村 「なるほど。サクラさんがお酒に強いのがわかった気がします」
x x x
テーブルに食べ物が置いてある。
店員がビール二つを渡す。
サクラ「さぁ、食べましょう」
中村 「いただきます」
サクラ、中村が食べる間。片方のビールに睡眠剤を入れる。
中村 「サクラさんは食べないんですか?」
サクラ「はい、いただきます」
睡眠剤が入ってないビールを飲むサクラ。
酔っ払うふりをするサクラ。
中村 「大丈夫ですか?」
店員 「ラストオーダーですがどうしますか?」
中村 「大丈夫です。サクラさん、そろそろ帰りますよ」
サクラ「いやだ…まだビール残ってる…もったいない…中村さん代わりに飲んでください…」
中村 「いや、僕は…」
サクラ「お酒なんてなれればへっちゃらですよ!」
中村 「へっちゃら……ですか?」
サクラ「はい! 飲んで!」
中村、ビールを飲む。
中村、ぶっ倒れる。
サクラ「うわ…本当にお酒弱いんだな…」
中村 「う…」
サクラ「もしもし?…よっし!」
〇ラブホ
中村、ベッドで起きる
中村 「うわ…よく寝たな…ん? なんで僕 裸で?」
サクラ、下着姿で中村に挨拶をする。
サクラ「おはようございます」
中村 「僕…何かしましたか…?」
サクラ「えぇ、昨日は楽しませてもらいましたよ」
ナレーション「男女二人がラブホで一晩ひとばんをすごせばもう一線を越えることと当然! 片方が超えていないと言っても世間的には既成事実! 返事がどうあれ既成事実が『責任取ってください』となる! もはや彼に逃げる道はない!」
中村 「僕…顔洗ってきます‥‥」
男、洗面所に入る
サクラ「いってらしゃい(これで万事解決!)」
サクラ、洗面所の扉を開ける。
サクラ「あの、これからなんですけど…」
中村、化粧水で化粧を落とす。
サクラ「…!?え…誰?」
中村 「あの…僕、頑張りますから! これから婚姻届とどけしに行きましょう!」
サクラ「いやゃ!!!」
ナレーション「誰しも表と裏があり、裏の姿を隠すため人は仮面をかぶる。本当の姿を見て後悔をするサクラだった」
サクラ「あの…私たち昨日会ったばかりですし…いきなり婚姻届なんて…」
中村 「大丈夫です! サクラさんは僕が守ります!」
サクラ「いや、あの…そうじゃなくてですね」
ナレーション「逃げ道を考えるサクラ」
サクラ「すいません。私これから友達と約束が…」
中村 「あれ? 今日の予定はないと言いませんてしたか?」
サクラ「それは…思い出したんです! それじゃ」
○キャバクラ・待機室
化粧を治すサクラ。
店員 「サクラ。12番のお客さんが指名したよ」
サクラ「はい~」
○キャバクラ
サクラ、12番テーブルのお客さんに 挨拶をする。
サクラ「ご指名ありがとうございます。サクラと申し…」
化粧をした顔で12番のテーブルに座っている中村。
中村 「サクラさん。やっと会いました」
サクラ「なんでここに?」
中村 「あれからマッチングで連絡しましたが返事も来なくて歌舞伎町にあるキャバクラを探し回りました」
サクラ「え!? 何を考えている? 歌舞伎町にキャバクラがいくつあると思ってる!?」
中村 「83店もありますね。結構探しました。とりあえず座ってください」
中村の隣に座るサクラ。
中村 「かなり探しましたが、まさかここが最後の店にいやしゃったとは思わなかったです」
サクラ「そこまでしてなぜ私を探しましたか? 返事をしないのは無視しているからです」
中村 「やはりそうでしたか……」
サクラ「……そこまでして私に会いに来たのは本気だったてことですか?」
中村 「はい……あやまちを犯してサクラさんに大変迷惑めいわくをかけました。ごめんなさい」
サクラ「いや……それは私が……」
中村 「私が? どうしましたか?」
サクラ「いえ、なんでもありません。 ん? まさか謝しゃるために私のところに来たのですか? なぜそこまで……あなたも忘れればこんな苦労しなくて済んだのでしょう」
中村 「僕が犯した過ち。謝らなければ父に殺されます」
サクラ「殺される?!」
中村 「そう躾しつけされたので」
サクラ「真面目すぎ……」
中村 「やはり僕は真面目過ぎますか……」
サクラ「そうよ。ここまで真面目な人は初めて」
中村 「ここに来るお客は真面目な人はいませんでしたか?」
サクラ「キャバクラだからね。金で浮うかれている客しかいないから」
中村 「サクラさんは真面目な人はお嫌いですか?」
サクラ「さぁ、どうだろう。私は顔しか見ないから」
中村 「顔ですか……やはり僕はダメですか?」
サクラ「化粧した顔は気に入ったけどね。って言うかなんで化粧を? わざわざ化粧をしたのは自分の顔が気に入らないから?」
中村 「はい、この顔のせいで人がよってこなくて僕は仮面をかぶることにしました。以来、人とうまく過ごすこともできました」
サクラ「結構、研究したんですね。偉いです」
中村 「それともう一つ。サクラさん。僕と正式に付き合いませんか?」
サクラ「私、アンタと付き合う気なんてないのはわかるよね?」
中村 「はい、でも僕はサクラさんが結構気に入っています」
サクラ「え~。どこか気に入った?」
中村 「顔です」
サクラ「アンタも顔じゃん」
中村 「いけませんか?」
サクラ「いや、いいけどよ……」
腕時計を見る中村。
中村 「すいません。これからお仕事で帰ります」
席から立つ中村。
サクラ「お仕事、頑張って」
中村 「ありがとうございます。また来ます」
サクラ「また? どうして?」
中村 「サクラさんを諦めてないからです」
サクラ、ちょっと動揺する。
中村、去る。
ナレーション「人は自分を守るため。あるいは何かを得るために人は人に嘘をつく。だが、自分が望まないことが起こったとしても果かたしてそうだろうか……」