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異世界看護師と猫の医師  作者: 十二月三十日
第1章:異界の目覚めと森の咳
7/23

サマリ06:契約と進化

現役看護師が執筆する医療系の異世界転生ものです。


どーぞ、ごひいきに。

エルフの里での治療が順調に進み、陽翔たちはその日の午後、メディクと契約を結ぶため、再び長老の部屋を訪れていた。陽翔とアーツは、長老の前でメディクに向けて静かに告げる。


「メディク、まだ短い間柄ではあるが俺は君と契約を結びたいと思っている。君の仲間を思う気持ち、薬学への探求心。今俺たちが仲間としてほしい人材だ。無理強いはしないけど、どうかな?」


メディクは目を大きく見開き、少し驚いたように陽翔を見た。長老もその言葉に反応し、何かを察した様子で静かに見守っていた。


「契約、とは……?」


陽翔は落ち着いた声で説明を始める。


「君と契約を結ぶことで、君もグレイスの力を使えるようになる。君が持つ力を最大限に発揮できるようにするためだ」


「グレイス……」


メディクはその言葉を繰り返し、何かを考えている様子だった。しばらく沈黙が続いた後、彼女はゆっくりと口を開いた。


「私、あなたたちに……そんな力を授けてもらうことができるの?」


陽翔は静かに頷き、彼女に手を差し伸べる。


「君の力は、この世界に必要な力だ。だからこそ、君と契約を結びたい」


メディクはその手を見つめ、少し迷いながらも、ゆっくりと手を伸ばした。


「私は……、私の調合した薬が、沢山の命を救える力がほしい……です」


彼女の返答を聞いた陽翔は、アーツの時と同様にステータス画面で【契約】のコマンドをタップした。


メディクと契約することで、彼女の「グレイス」を覚醒させることができます。

契約には双方の同意が必要です。メディクに「契約」を申し出ますか?


【YES】


陽翔がメディクの手を取ると、ふと光が彼女の身体を包み、次の瞬間、メディクの目の前にステータス画面が現れた。契約には双方の同意が必要です。陽翔の申し出に同意しますか?


メディクは迷うことなく同意した。


【ステータス画面】

名前:メディク

種族:エルフ

職業:薬剤師

レベル:1

HP:100

MP:50


【グレイス】

・調剤の恵み:異世界の薬草や化学物質を使い、アーツの指示通りの薬剤を調合可能。その治療薬の効果はグレイスの力により強化されている


【魔法】

・火・水・土・風(エルフとして最初から所持している魔法)


【進化】

アークエルフへの進化が可能です・・・『進化する』


「これが……私の力……?」


メディクは驚きの声を上げながら、ステータス画面を見つめた。陽翔は静かに頷く。


「そうだ。君の力はこれから、ますます強くなっていくはずだ。ひとまずこのグレイスを使いこなして、エルフの森を救う手助けをしてほしい」


その言葉に、メディクは感動したように瞳を潤ませ、少し涙を浮かべながら言った。


「陽翔様……。」


その言葉に陽翔は驚いたが、メディクは続けた。


「私は、ずっと誰かを救いたいと思っていた。でも、どうしても自分の力では限界があって、何もできなかった。でも……あなたたちと出会って、私はもう一度、何かを成し遂げる力を得たんだと実感している。感謝してもしたりない……」


陽翔は少し照れくさそうに微笑みながら答えた。


「俺なんかがそんな大層なものじゃない。ただ、君の力を信じているだけだよ」


メディクは顔を赤くしながら、力強く頷いた。そして片膝を付き、頭を下げた。


「ありがとう、陽翔様。私は必ず、この力を使って陽翔様の役に立つ……。あ、ところで、ステータス画面の1番下に『進化』という項目があるのですが……」


「え?……し、進化?」

(アーツの時にはなかったぞ。どうゆうことだ?)


陽翔はステータス画面のチュートリアルが点滅していることに気付いた。タップしてみると、『進化』という項目の説明が書かれていた。


【進化】異世界の住人が陽翔と契約を結ぶと、上位種族への存在進化が可能になる。全ステータスのUPと既有魔法の位階を上げる


(なるほどなるほど。どちらにしろ、進化することに損はないか……)

陽翔は進化についてメディクに説明した。


「……今よりも強くなって陽翔様の役に立てるなら」


メディクは、そう呟くとステータス画面の『進化』をタップした。

次の瞬間、メディクの体は光に包まれ、眩しさのあまりその場の全員が目を閉じた。光が収まり陽翔達が目を開けると、アークエルフへの進化を終えたメディクが立っていた。髪は輝きを増して微かに発光し、瞳は星を宿したような神秘的な輝きを放つ。耳はより長く繊細になり、肌は透き通るような質感を持ち、さらに、体躯は引き締まり威厳が増し、額や腕には神秘的な紋様が浮かび上がっていた。

メディクはゆっくりと手を見つめ、自分の変化を確かめるように指先を動かした。まるで魔力の流れがこれまでとは異なる感覚で身体を巡っているかのようだった。


【ステータス画面】

名前:メディク

種族:アークエルフ

職業:薬剤師

レベル:50

HP:10000

MP:5000


【グレイス】

・調剤の恵み:異世界の薬草や化学物質を使い、アーツの指示通りの薬剤を調合可能。その治療薬の効果はグレイスの力により強化されている


【魔法】

・精霊魔法



「……これが、アークエルフ……?」


彼女の声は驚きと戸惑いに満ちていた。


陽翔は改めてメディクの姿を見つめた。今までの彼女も美しかったが、今の彼女は神秘的な威厳すら感じさせる。エルフとしての優雅さに加え、どこか聖なる気配をまとっていた。


アーツもまた、目を細めながらメディクを観察し、静かに呟いた。


『進化による身体能力の向上はもちろんですが、魔力の流れも強化されていますね。メディク、君は以前よりも、さらに高度な魔法が扱えるようになったはずです』


「え?だれの声?」


「あっ、言い忘れてた。実は、僕と契約するとアーツとも意思疎通が可能になるんだ。だから、今聞こえた声は、アーツだよ」


メディクは目を丸くして驚いていたが、契約という未知の体験がそうゆうこともあるのだろうという説得になっていた。

そしてメディクは自分の手を握りしめると、ふっと目を閉じ、魔力の感覚を確かめるように意識を集中した。そして、そっと手をかざすと、指先に小さな炎が灯る。


「……わかる。炎の揺らぎが……前よりもはっきり感じられる。でもこれは精霊?」


彼女は驚いたように呟き、今度は手を翻し、風を巻き起こした。これまでとは比べものにならないほど、魔力の制御が精密になっていることを感じる。


「陽翔様……私、本当に強くなった」


メディクは感極まった表情で陽翔を見つめた。


「ありがとう。あなたと契約して、私は……自分の限界を超えられた気がする」


陽翔は苦笑しながら、少し照れくさそうに頷いた。


「まあ、進化するなんて俺も予想してなかったけどな。でも、これでより良い薬を作ることもできるだろ?」


「うん!」


メディクは力強く頷いた。


『では、メディクがグレイスを得たところで次に進むべきは、花粉症の根本治療薬の開発ですね』


「根本治療薬?」


アーツは頷きながら説明を始める。


十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)という漢方薬の処方指示を出します。十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)は即効性のある漢方ではなく体質改善を目的とするため、効果が現れるまでに 1週間~1か月程度 かかることが一般的です。そこで即効性も求めるうえで、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)と併用することをお勧めします』


十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)……」


メディクはその名前を口にし、少し考えた。


「私はその薬を調合したことがない。体質改善、具体的にどのような効能?」


アーツが冷静に答えた。


十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)の体質改善とは、体内の毒素を排出し、免疫力を高める効果を言います。花粉症を予防するためには、これを長期間飲み続ける必要があります。』


メディクはその言葉をしっかりと受け止め、再び頷いた。


「わかった。早速明日から調合を始める。ところでぇ……」


メディクはアーツを見つめじっと構える。


「もふもふさせろーーー!」


『うぁっ!ちょっ、メディクぅう。あぁ……』


「アーツお前、まんざらでもなそうだな」


陽翔は、そんなメディクの様子を見て頼もしく感じつつ、明日からの活気を補充した気分でいた。

最後まで読んでいただきありがとうございました。引き続きお楽しみください。

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