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異世界看護師と猫の医師  作者: 十二月三十日
第2章:王都疫禍と揺らぐ信仰
15/23

サマリ14:インフルエンザの終息と継承

現役看護師が執筆する医療系の異世界転生ものです。


どーぞ、ごひいきに。

──王都サルファン、医聖庁本部。


晴天の下、医聖庁の中庭では、王都全域に対するインフルエンザ感染対策が本格的に開始されていた。陽翔の指導により、医聖庁の職員たちは事前に感染症の基礎知識を習得し、クリラボによる検査キットの取り扱い、メディクによる薬剤投与指導も完了していた。


陽翔は、一同の前ではっきりと宣言する。


「この病気は、空気を媒介として人から人へ広がります。咳やくしゃみで飛び散った飛沫が原因です。だからこそ、マスクの着用と手洗いが、感染拡大を防ぐ鍵となります」


陽翔たちはすでに、王都内に三箇所の診療所と薬局を設立。医聖庁直轄とし、定期的な配薬・診察・検査の体制を整えた。さらに、貧困層が暮らす下街は撤廃され、王都内に“貧困街”として新たな区域が整備されることになった。


そこには大衆浴場、大衆トイレ、下水処理装置が設置され、衛生的な生活が保障される。配給制度も開始され、最低限の食料と飲料水が提供されるようになった。


この環境整備の管理は医聖庁が主導し、実働部隊として冒険者ギルドを活用。清掃や配給、施設の点検などを依頼することで、経済循環も生み出していた。


さらに陽翔は、グレイス(医療の恵み)で調べた布マスクの製造方法を王都の職人に教え、大量生産を実現。マスクは市民全員に配布され、備蓄も診療所に確保された。


同様に、クリラボは≪診具創成≫を駆使して検査キットを量産、メディクもグレイス(調薬の恵み)で大量のタミフルとアセトアミノフェンを調合し備蓄するまでに至った。


──数日後。


王都内の感染者数は激減し、ついには新規感染者ゼロを記録した。王女の英断と陽翔たちの尽力により、王都サルファンは疫病の脅威を乗り越えた。


そしてその夜、王城ではささやかながらも盛大な宴が開かれた。


「諸君!私はここに、王都でのインフルエンザ終息を正式に公言する!」


王サルファン三世の宣言を聞くや否や、宴に参加していた陽翔達ほか、貴族達も一気に湧き上がった。


続けて、王女は酒杯を掲げて言う。


「貴殿たちの功績、王都のみならず歴史に刻まれることでしょう!」


陽翔は、アーツと目を合わせたのち、杯を掲げた。


──翌朝。王都・南門前。


いよいよ、帝都バルゴへの旅立ちの時が来た。


旅の準備を終えた陽翔たちに、王女セラフィーナが歩み寄る。彼女の傍には、回復したリアン王子、そして女王エリシアの姿もあった。


「陽翔殿、貴方方の功績は、王都の民すべてが知っています。……貴方方の旅路に、神の加護があらんことを」


「セラフィーナ殿下、我々はこの世界の医療の形を変えるために進みます。貴殿の後ろ盾があること、心から感謝します」


王子リアンが、まっすぐに陽翔を見つめる。


「病に倒れていた時、夢を見たんだ。あの時、君がいてくれて本当に良かった。ありがとう」


陽翔は微笑み返し、女王に深く一礼した。


そして、貧困街からは、多くの住人が集まってきた。その最前列に立つのは、シーナとその母親。


「陽翔さん……ありがとう。私たち、生き直します」


少女は、小さな両手で花束を差し出す。陽翔はそれを受け取り、優しく頭を撫でた。


「君たちの命がつながったなら、次はその命で誰かを守ってあげて。──医療ってのは、そうやって巡るものなんだ」


旅立つ陽翔たちの背に、王都の人々の温かな視線と感謝の声が降り注いだ。

最後まで読んでいただきありがとうございました。引き続きお楽しみください。

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